「人質外交」

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カナダ人を13人も捕まえた、中国の「人質外交」が止まらない理由

昨年12月のカナダ当局によるファーウェイCFO逮捕劇以来、中国でカナダ人が拘束される事案が複数件起こっています。あからさまとも言える中国のこの「不当逮捕」ですが、「中国は歴史的に人質外交の国」と言い切るのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、これまで繰り返されてきた中国による「人質外交」を詳述するとともに、他国民をスパイ容疑で逮捕する中国こそが古代からのスパイ国家であり、そんな中国にとって日本はスパイ天国であると記しています。

【中国】中国は歴史的に「人質外交」の国
● またカナダ人が逮捕された!

また中国でカナダ人が逮捕されました。今回はマカオで、カジノ会社と銀行から2.4億ユーロを騙し取ろうとした容疑で、61歳の男性が文書偽造で捕まったとのことです。

2018年12月1日に、ファーウェイの経営幹部・孟晩舟がカナダ警察当局に逮捕されて以来、中国でカナダ人が逮捕されたり、カナダ人容疑者に死刑判決まで出ていることは、ご承知のとおりです。今回逮捕されたカナダ人が、本当に詐欺を働いたかどうかはわかりませんが、「自由時報」は、ファーウェイ事件との関連性を匂わせる見出しで報じています。

昨年12月14日には、中国で麻薬密輸に関わったとして、一度有罪判決を受け、控訴していたカナダ人男性が、大連市の中級人民法院で死刑を言い渡されました。

彼が逮捕されたのは2014年12月ですが、2018年11月には禁錮15年の有罪判決が出ていました。これを不服としてカナダ人男性は控訴していたのですが、ファーウェイ幹部が逮捕された後の12月になって、中国の検察が「麻薬密輸の中心的人物だったことが発覚した」と新たな告発を行ったことで審理がやり直しとなり、死刑判決が出されたわけです。

● 中国、カナダ人男性に死刑判決 ファーウェイ問題で関係悪化

カナダのトルドー首相はこれに対して、「カナダ人が罪に問われた事件で、中国が恣意的に死刑を適用し始めたことを、我々は政府として強く懸念する。国際社会の友好国や同盟国にとっても懸念すべき事態だ」と指摘しています。

この死刑判決の前日には、休職中の外交官ら2人のカナダ人が「中国の安全を脅かした」という理由で拘束されています。今年の1月4日時点で、ファーウェイ幹部逮捕以降、中国で逮捕・拘束されたカナダ人は13人にのぼるとされています。

● カナダ人、中国で13人拘束 ファーウェイ事件以降

カナダ外務省のホームページでは、中国への渡航は「細心の注意が必要」と警告しています。

● Government of Canada China

繰り返される「人質外交」の実態

このように、中国が人質を取って交渉するやり方は、「人質外交」とも呼ばれており、これまでもよく繰り返されてきた手法です。

たとえば、台湾人もよく中国で逮捕されています。とくに蔡英文政権になってからは、台湾人逮捕が目立つようになっています。2017年3月には、台湾民進党の元職員で、中台交流を推進していたNGO活動家の李明哲氏が、広東省で中国当局に逮捕されました。その容疑も「中国の国家安全に危害を与えた」というものでした。

● 恣意的に台湾人を逮捕?中台交流推進の活動家を拘束する中国の非情「蔡英文政権への警告だ」

その後、彼は国家転覆罪で懲役5年の有罪の判決を受け、現在も中国の監獄に入れられたままです。

● 中国:面会できない収監中のNGO職員

台湾政府は中国に対して、明らかな人権侵害であり、蔡英文政権への政治的な脅迫だと、批判しています。

歴史的にも、中国政府は人質外交を繰り返してきました。たとえば、「西安事件」もそのひとつです。1936年12月12日、西安で蒋介石が張学良に拉致監禁され、抗日戦争で共産党との協力を迫られたというものです。解放された蒋介石はこれ以後、それまでの共産党攻撃を取りやめ、一転して共産党とともに抗日戦争へと向かうようになりました。

西安事件の全容はいまだ謎に包まれていて、蒋介石の息子である蒋経国がソ連に人質として取られていたため、蒋介石は国共合作を行わざるをえなかったという説もありますが、いずれにせよ、なぜ蒋介石が突然、共産党と協力関係に回ったのかは明らかになっていません。

中華民国の著名な文学者である胡適は、「西安事件がなければ共産党は間もなく滅亡していたはずだ」と語っています。

こうした成功体験があるからか、中国共産党はいまだに「人質外交」を続けているのです。

中国に行くこと自体が危険

2015年には、香港で習近平批判の書籍を販売していた銅鑼湾書店の関係者が拉致され、中国へ連れ去られて当局に拘束された事件はまだ記憶に新しいところです。しかも書店の大株主であるスウェーデン国籍の桂民海氏などは、タイに滞在しているところを中国当局に拉致されて大陸につれて行かれ、取り調べを受けました。

彼らはいずれも数ヶ月~数年後に解放されましたが、中国では違法な書籍を売った罪を認める書類にサインをさせられたといいます。また、桂民海氏などは、2018年にも浙江省寧波から北京のスウェーデン大使館に向かう列車の中で、中国当局に拘束されています。

日本にしても、2010年、尖閣諸島海域で海上保安庁の巡視船に体当りした中国漁船の船長を逮捕した後、その報復として、「中国で軍事施設をビデオ撮影していた」ということで、フジタの社員4人が逮捕されたことがありました。

日中関係が悪化したここ数年も、日本人が相次いでスパイ容疑で逮捕・拘束されるようになっています。2015年以来、8人の日本人がスパイ容疑で逮捕されています。もちろん日本政府はこのスパイ容疑を否定しています。

● 中国で逮捕される日本の“スパイ”が急増、その理由と対策

中国はいまなお、外交的に都合が悪くなると、国内で外国人を逮捕してカードに使うという野蛮な国家なのです。司法もマスコミも共産党の支配下にあるわけですから、人権などまったく無視です。中国に行くということは、それだけで非常に危険なことなのです。

このように、他国民をスパイ容疑で次々と捕まえている中国ですが、中国自体がスパイ国家であり、だから世界各国が警戒しているわけです。ファーウェイも、情報を中国に勝手に送るソフトが機器に組み込まれていると言われてきました。

そもそもファーウェイ創業者は人民解放軍出身であり、諜報活動を国家から命じられていることは、当然のこととみなされています。独裁国家であり、党の命令が憲法よりも上位にある国だからこそ、こうした疑いがどうしても拭えません。

「親中派こそが危険」という事実

中国政府が世界各国の大学に設立している「孔子学院」も、中国の諜報センターであることが北米の公安機関の調査で明らかになり、「学問の自由を脅かす存在」として、次々と閉鎖させられています。

● 孔子学院に強まる閉鎖圧力 米国内で初の規制立法も

中国は古代からスパイ国家であり、孫子の兵法には「用間」篇があり、スパイの大切さを教えています。また、明王朝時代には、近衛軍の錦衣衛から東廠、西廠、内行省など、スパイ機構をつくり、官・民のすべての生活を監視していました。明が中国史上でもっとも暗黒時代だったといわれるのは、人々をスパイの監視によってがんじがらめにしていたからです。そこまでしないと、民を統制できないのでしょう。それは「易姓革命」の国としての定めでしょうか。

ことに習近平は、権力集中についてはまだ途上であり、デジタル技術で監視していないと、体制を守りきれないという不安があるのだと思います。

ところで、中国で逮捕されたカナダ人は、たいてい親中派の人々です。いざというときに、一番危ないのは親中派なのです。いつどういう理由で逮捕されるかわからない。自分は親中派だから大丈夫だと思っている人が、中国で逮捕されるのです。

そして、中国のスパイにとってスパイ天国なのは日本です。日本は中国からのスパイが約1万人はいると推測されています。日本では安保問題への関心が比較的薄く、ことに孔子学院の活動についての関心がほとんどありません。だから日本では北米ほど「学問の自由を守る」ために摘発するようなことがなく、各大学が反日活動の砦となってしまうわけです。

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