『日本の準備預金制度について』

画像の説明

『日本の準備預金制度について』

私のコラムは誤解されがちな経済思想/保守思想/軍事思想を解説する記事になります。

記念すべき初回のコラムは、準備預金制度の解説となります。

準備預金制度は、一般的に、銀行が預金者の引出しに応じるため中央銀行(日本では日銀)にお金を預けておく制度と理解されています。

が、しかし、日本の準備預金制度の詳細は、ほとんど解説されることがないため、あまり知られていません。

日本銀行や市中銀行に関する書籍でも、数行触れられていればラッキーという有様です。

そこで今回は、あまり知られていない日本の準備預金制度の解説をします。

日本における準備預金制度は、1957年に「準備預金制度に関する法律」という法律で施行されました。

以下のサイトに法律原文が記載されていますが、書かれていることが難しく、一般人にはイマイチわかりません。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332AC0000000135&openerCode=1

日本銀行も解りにくいと思ったのか、この法律の解説記事を出しています。
http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa195706i.pdf

今回の解説は、この日銀の解説記事の要点を掻い摘む形で、日本の準備預金制度を紹介していきます。

①法律の目的
準備預金制度は各国で施行されていますが、その目的は大きく2つあります。
『預金者保護』と『通貨調節手段』です。

『預金者保護』というのは、預金者の引出しに応じるための支払準備金を中央銀行に強制的に預け入れさせる、というものです。

もう一方の『通貨調節手段』は、後述する「準備率」を上下させることで、銀行の信用創造機能を通して、市場での資金需給を調整する、というものです。

準備預金制度は歴史的には『預金者保護』として生まれましたが、

諸外国では『通貨調節手段』として準備預金制度を設けている国が多く、『預金者保護』と『通貨調節手段』の両方を目的としている国も存在するようです。

日本ではどうかというと、準備預金制度を『通貨調節手段』を目的として整備しました。

『預金者保護』が目的ではないのです。
実際、法律の目的が記されている第1条にも「通貨調節手段としての準備預金制度」と記載されています。

そのため、制度の名前も、『預金者保護』を意味する「支払準備制度」という名前を避け、「準備預金制度」という名前になっています。

ただし、現在は、日本含め世界各国で『通貨調節手段』の意味合いは薄くなっています。

短期金融市場を通して通貨調節をするようになっていったためです。

②日銀当座預金

中央銀行の当座預金口座とは、市中銀行などの金融機関や政府が日本銀行に開設が義務付けられている口座のことです。

当座預金なので基本的には無利子になります。

銀行が日銀当座預金口座から引き出すと、同額の現金、つまり日本銀行券が銀行に供給されます。

この日本銀行券の供給は、発券とも言われています。

これは日本銀行券は、日銀の外に出ることで初めて、紙幣に記載されている額の価値を持つからです。日銀の中にいる間は、日本銀行券は価値を持ちません。複雑な偽造防止処理を施されたただの紙切れです。

ちなみに、日銀当座預金と日本銀行券を合わせて「ベースマネー」と呼ばれています。

さて、この日銀当座預金には3つの役割があるとされています。
(1)金融機関が他の金融機関・日本銀行・国と取引を行う際の「決済手段」
(2)金融機関が個人や企業などの顧客に支払う現金通貨の「支払準備」
(3)準備預金制度の対象となっている金融機関の「準備預金」

準備預金制度は、(3)の市中銀行などの特定の金融機関が日銀当座預金へ一定金額預ければならない制度、ということになります。

この一定金額、つまり日銀に預け入れる最低金額のことを、「法定準備預金額」「所要準備額」と呼び、実際に預け入れている金額を「準備預金」と呼びます。

③準備率

市中銀行等の金融機関が預金額の「一定比率」以上の金額を日銀当座預金に預け入れるというのが準備預金制度ですが、この比率が「準備率」「法定準備率」「預金準備率」です。

この法律において、準備率の最高限度は10%であり、これを越えることはできないとされています。

その一方で、準備率の最低限度は定められていません。先述したように、準備率の最低限度は『預金者保護』の意味を持つものと考えられるものだからです。

現在の準備率は1991年に設定されたもので、0.05%~1.3%となります。
(金融機関の種類や預金等の種類によって数値が変わります。

定期預金など安定的な預金に対しては数値が低く設定されています。)

具体的な数値は日銀のHPに記載されています。
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/reservereq/junbi.htm/

④準備預金の二つの期問

さて、準備預金の金額はどのように計算されているのでしょう。
実は、準備預金を計算するには二つの計算期問があります。

1つ目の計算期間は、準備預金額を計算する期間です。

ある月(仮に1月とします)の毎日の終業時における預金残高に、その時の準備率をかけた額の合計をその月の日数で割ります。つまり、毎日の預金残高×準備率の平均です。

2つ目の計算期間は、預け金額の計算期間、つまり、1つ目の計算で得られた金額を維持しなければならない期間です。

この期間は当月(1月)の16日から1ヶ月間(2月15日)とされています。

ただし、毎日この準備金を厳格に維持する必要はなく、16日からの1か月間の平均額として充たされていれば良い、とされています。

⑤預け金の額が不足した場合の措置

市中銀行が預け金額を維持できなくても、即座に法律違反になるわけではありません。
ちゃんと救済措置が用意されています。

この場合、市中銀行は、不足額に対し一定比率をかけた金額を期日(3月15日)までに日銀に納めればよいのです。日銀はこの金額を期日(4月15日)までに納めます。

まとめ
3行でまとめます。

・日本の準備預金制度は『預金者保護』ではなく『通貨調節手段』。

・銀行は預金額に準備率(現在は1%前後)をかけた金額を、後日の指定された期日の間(その月の半月後から1ヶ月間)、日銀当座預金に預けなければならない。

・たとえ準備金が維持できなくても、救済措置が用意されている。

これで日本の準備預金制度の解説は以上になります。

読者様にとって、少しでもためになる知識になれば幸いです。

コメント


認証コード2818

コメントは管理者の承認後に表示されます。