「中国成長減速、」

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「工事?全部止まったよ」 中国成長減速、湖南省ルポ
毛沢東の古里、財政難が深刻 景気対策の足かせに

中国の2018年の実質成長率は前年比6.6%と28年ぶり低水準だった。地方政府のインフラ投資の伸びが失速したのが一つの原因だ。どうしてこんなことが起きたのか。建国の父、故毛沢東主席の古里である湖南省湘潭市を昨年末に訪れた。

省都、長沙市の空港から車で1時間。1500年の歴史を生かして観光業を育てようと市が昨年に窯湾地区で開いた「歴史文化街区」を訪れた。

道路工事があちこちで止まっていた(湖南省湘潭市)

古い街並みを再現してあるが、入り口付近の寺院の建設が終わっておらず囲いがしてあった。中をのぞくとクレーンも動いていない。作業員は「工事は12月初めから止まっているよ」と話した。

街区で商業施設の誘致を担う甘さんは「工事は1期が終わったが、2期と3期は計画を練り直している。民家の立ち退きも遅れている」と語った。2期工事の現場を訪れると多くの民家が依然取り壊されずに残っていた。半分ほどはまだ人が住んでいるようだ。

立ち退き工事は止まっており、現場事務所も閉鎖されていた。住民の一人は「店も閉まって隣人もいないので生活が不便。早く補償金をもらって移りたい」とこぼした。

財政難で民家の立ち退き工事が止まった(湖南省湘潭市)

窯湾地区だけではない。街を回ると囲いがしてあるが、音がしない工事現場ばかり。道路工事の現場では、舗装車が放置され「貸します」とフロントガラスに電話番号が書いてあった。湘江沿いの遊歩道の整備では看板が打ち捨てられていた。タクシー運転手の谷さんは「工事はあちこちで止まっているよ」と話す。

市中心部の「湘潭城郷建設発展集団」を訪れて理由がわかった。1階入り口に「18年10月から立ち入り調査する」との張り紙。日本の会計検査院にあたる国家審計署の調査を受けたのだ。

同集団は市が設立した「融資平台」と呼ばれる会社。資金調達に厳しい制約がある市本体に代わり、債券発行などで資金を集めてインフラ建設に回す市の別動隊だ。歴史文化街区や道路など市のインフラ事業の多くは同集団が発注元になる。

審計署は昨年12月の調査結果で「同集団が市の道路を売り14億6千万元(約235億円)を不正に調達した」とし、市に13億元の「隠れ借金」があると認定した。地方政府が融資平台の借金返済を助けるために資産を譲ることを禁じた、17年の政府通知に違反した。

隠れ借金の使い道は「既存債務の返済」だった。違法な借金をしなければ昔の借金を返せないほど湘潭の財政は厳しい。

川沿いの遊歩道整備もストップ(湖南省湘潭市)

国盛証券によると、湘潭の融資平台が発行した債券の元利払いは19年に166億元。一方で税収、土地売却代金など収入から人件費など必要経費を引いた「借金返済能力」は18年に96億元。元利払いは返済能力の1.7倍で全国に約300ある市で最悪の水準という。

5年に1度開かれる17年の全国金融工作会議は隠れ借金は「退職後も死ぬまで責任を追及する」と決めた。地方債務の急増は金融危機を招きかねないと危惧したからだ。「終身問責」は地方政府を萎縮させ、インフラ投資が17年の19%増から18年の4%増に失速する原因となった。

それでも湘潭が「隠れ借金」をしたのは目の前の資金繰りすら思うに任せないからだが、代償は大きかった。1月15日の湘潭市の政府活動報告で談文勝市長は「10年間の債務返済計画を策定した。市の投資事業は92%減らす」と明かした。域内総生産(GDP)、固定資産投資など多くの数値目標も18年は達成できなかった。

最新の監視カメラの取りつけ工事は進んでいた(湖南省湘潭市)

中国は景気減速に対応するため、地方のインフラ投資も積み増す方針で、中央政府は事業認可を加速している。一方で財政省の許宏才部長助理は1月に「地方の隠れ借金は厳しく抑える」と語った。国が投資案件を認可しても地方がカネを手当できないのではないか。湘潭の現状からはこんな疑問が浮かんでくる。

「毛主席の古里がこんなありさまでは国もメンツがない。国が助けるのでは」。谷さんは楽観論を口にしたが、街の工事で粛々と進むのは道路上の最新型監視カメラの取り付けくらいだった。

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