「ビットコイン暴落に揺さぶられる中国の若者 」

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標高3000メートル近い青海省のデリンハ。チベットに向かう青蔵鉄道が通るへき地だ。この地で働いていた魯清(24)は最近、郷里の江西省に戻った。

青海省で魯氏が手掛けていた「採掘施設」では一時7000台の採掘用コンピューターが稼働していた

荒涼とした高原の風景に飽きたわけでも、街に出るのに飛行機に乗らなければならない生活に嫌気がさしたわけでもない。なりわいにしていた、仮想通貨の採掘(マイニング)が立ちゆかなくなったためだ。

仮想通貨は、ビットコインの価値がピークの2割に下がるなど総崩れだ。表立った取引は禁じられている中国でも影響は静かに広がる。揺さぶられているのは一獲千金をもくろんだ若者たちの人生だ。

採掘は、仮想通貨の取引に必要な計算処理に協力し、見返りに仮想通貨を受け取る。魯は地元の国有企業から安価に電力を調達。工業団地の一角に「採掘場」をしつらえた。

2018年央には7千台の採掘用コンピューターが稼働、空冷ファンの回転音が屋外まで響いていた。魯は採掘場の運営会社に出資すると同時に、自己資金でコンピューターを設置。他人のコンピューターを預かり、「採掘代理」といえる事業も手掛けた。

すでに市況崩壊の足音は迫っていたが、魯は強気だった。風力や太陽光で豊富な発電能力を持つ青海省の電力は安く、まだ採算を確保できていた。「1万2千台まで増やしたい。いずれはソロスのような投資家になる」と語っていた。

しかし、中国で一時2万ドル(約220万円)前後まで上昇したビットコインが4000ドルを割り込むと、持ちこたえられなくなった。採掘に必要な電気代を賄えず、顧客は去っていった。魯は手持ちの採掘用コンピューターを売りに出さざるを得なかった。

魯のような採掘業者が手放したコンピューターは深圳の電気街、華強北に流れる。機種により価格は異なるが、400元(6400円)に満たないものもある。3万元近かった時期もあり、もう一つのバブル崩壊といえるありさまだ。

中古品の価格は仮想通貨の市況に連動している。電気代などのコストをかけ、仮想通貨というリターンを上げる。利回り商品のような考え方だ。採算がとれないとみた投資家が一斉に手放した結果、値崩れが起きたのも金融商品に似ている。中古品を扱う業者が入る雑居ビルは、今では空きブースが目立つ。

採掘用コンピューターの最大手、ビットメインも誤算にさらされている1社だ。同社は18年に香港上場を計画したが、認可は今も下りていない。仮想通貨の暴落が影響したのは明白だ。30代前半の創業者、ジーハン・ウーはビットコインの分裂(フォーク)を強行するなど強気で鳴らしてきたが、初めての挫折が近づいているのかもしれない。

ビットメインには「半導体の開発能力を見込んだ中国政府系の資金が接近している」(上海のベンチャーキャピタル)との観測がある。仮想通貨の暴落に翻弄される中国の若者を救うのは、半導体にも広がる米国との摩擦の打開策を模索する中国政府というシナリオも浮かぶ。

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