「中国の中流層の嘆き」

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「我々はニラにように摘み取られる」 中国の中流層の嘆き

中流層の一部は「自分たちはニラだ」と自虐的に話す

北京(CNN) 上海で金融のプロとして働くスパイク・ワンさん(29)は、「チャイニーズドリーム」の実現に四苦八苦している。

ワンさんは、中国経済が右肩上がりの時代に育った数百万人の中流層の1人だ。しかし、今や家賃の高騰や株価の下落で日々の生活が苦しくなりつつある。

ここ1年は特に厳しかったという。

多くの中流層の投資家と同様、ワンさんは保有する中国株の株価がわずか2年で40%下落した後、保有株の大半を売却した。

また37%もの家賃の上昇に耐えられず、北京市内の古いアパートを引き払い、上海のより安いアパートに引っ越した。しかし、ワンさんは今も中国の生活費は高すぎると感じている。

「食品価格の値上がりをはっきりと感じる。特に2018年の後半はその傾向が顕著だ」とワンさんは言う。

中国では国民の間で経済危機の問題が一般化しており、ネット上ではワンさんのような中流層の人々を指す「ジウツァイ(ニラ)」という言葉が流行している。

「自分は株式市場でも、賃貸市場でも、消費者としても摘み取られる典型的なニラだ」(ワンさん)

中国の中流層の消費者は、ネット上で経済や金融問題に関する不安を表現するために、自分たちをニラに例える。

「ニラ」という言葉には、自分たちは大企業や中国政府に摘み取られる無名の野菜にすぎず、特に米中貿易戦争が激化し、中国経済が減速する中でいいカモにされている、という自虐的な意味が込められている。

忘れ去られた人々
中国の中流層は、国民に空前の豊かさをもたらした非常な好景気が続いたここ数十年間に急拡大した。

習近平(シーチンピン)国家主席は、国民の生活水準が急上昇する中、「チャイニーズドリーム」を実現するためのビジョンを明らかにした。「チャイニーズドリーム」は、繁栄し、気楽で豊かな生活を約束するプロパガンダ的な言葉だ。

しかし、米国の圧力という脅威にさらされ、経済は減速し、格差が拡大する中、中国全土で不安が広がっている。

北京の一部の地域では、家賃がここ1年間に少なくとも40%上昇した。国営メディアは、住民へのインタビューで給料の半分以上が家賃で消えるという言葉を伝えた。

中国の生活水準を示す最も優れた指標のひとつである消費者物価指数(CPI)は5月以来、毎月上昇している。

昨今の米中貿易戦争によって、中国の脆弱(ぜいじゃく)な中間層の将来への不安はさらに高まっている。金融大手JPモルガンのエコノミストらは、米中貿易戦争により中国では少なくとも70万人の職が失われると試算した。

さらに、数百万人の中流層の投資家が苦労して稼いだ金を投じた中国の株式市場は、18年1月から25%以上も下落している。

「ニラ」という言葉は、もともと中国の株式市場で1億人という巨大な投資家層を表す言葉として生まれた。環境が成長にとって好ましい時は、熱心なにわか投資家層が、まるでニラのように成長・拡大するが、株価が下落すると、大口投資家は生き残るが、一般の投資家はすべてを失う。

しかし、「摘み取られたニラたち」が市場からの撤退を余儀なくされても、すぐに経験の浅い新たなニラ投資家たちが市場に押し寄せ、退場した投資家たちの穴を埋める。

まな板の上のコイ
米中貿易戦争の終息の見通しが立たず、差し迫った不況への不安が広がる中、中国では多くの人々が貯金に走り、その結果「消費の格下げ」と呼ばれる現象が起きている。

ごく普通の中流消費者であるワンさんも、ひそかに自分のライフスタイルを変えつつあるという。外食する前によく考え、なるべく食料品をまとめ買いし、自宅で自炊するようにしている、とワンさんは語る。

また北京の新興のインターネット会社に勤務するシンさんも、今はまだ生活費の高騰に耐えられるが、恐らくいくつかの大きな買い物は見送ると話す。育児の費用も高すぎるので、子どもをもう1人作るのをあきらめるという。

シンさんは、「ニラというより、まな板の上のコイのような気分だ」と述べ、さらに「われわれは税金、政策決定、現実をそのまま受け入れるしかない」と付け加えた。

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