「神社界分裂で飛び交う“不敬”怪文書」

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天皇の甥を「暴走列車」呼ばわり、神社界分裂で飛び交う“不敬”怪文書

全国8万社の神社を傘下に置く宗教法人、神社本庁。その職員宿舎の売買を巡る疑惑に端を発した“聖俗”2トップの確執が神社界を二分する中、複数の怪文書が飛び交う泥仕合に発展している。中には、靖国神社前宮司による天皇家批判を想起させるような怪文書が飛び交っている。

神社本庁怪文書

「“なんちゃって”元ビジネスマン」「暴走列車の『パワハラ』」「理解力のない一言居士」「脳で考えることはせず、『脊椎反射』しか行っていない」(原文ママ)……。

今月に入り、全国の神社関係者の間で、そんな神道の基本理念である「浄明正直」とほど遠い文言が散りばめられた複数の怪文書が飛び交っている。

冒頭の文言は全て、神社界唯一の専門紙『神社新報』をもじった『神社“真”報』と題された匿名文書からの抜粋だが、週刊ダイヤモンド編集部が入手しただけで、この他にも数種類の怪文書が確認されている。しかも、その批判の矛先は、なんと、今上天皇の義理の甥で、神社界を“象徴”する「統理」の役職に就く、鷹司尚武氏というから驚くほかない。

なぜなら、統理とは「権力」ではなく「権威」という面において神社界のシンボルとなる別格の存在だからだ。旧皇族や旧華族がその任を務めることが多く、神社本庁が「本宗」と仰ぐ伊勢神宮の大宮司を経て就くのが近年の慣例。もちろん神社関係者ならば、統理への批判など「畏れ多くて想像もつかない」(複数の神社関係者)のが常識のはずである。

背景にある神社界
「聖」と「俗」の対立
 
今年5月に統理に就任した鷹司統理は、公家の家格の頂点である「五摂家」の一つ、鷹司家の現当主であり、昭和天皇の第3皇女の養子で、天皇の義理の甥だ。この華麗なる家柄に加え、慶應義塾大学大学院修了後、日本電気(NEC)に入社、最後はNEC通信システム社長を務め、神社界の“外”でも功績を残した人物である。

怪文書の背景にあるのは、神社界の「聖」の部分を担うその鷹司統理と、「俗」の部分を担う事務方のトップ、田中恆清・神社本庁総長の間で起きている、田中総長の進退を巡る神社界2トップの対立だ(参考記事)。

9月の役員会で、職員宿舎の売買の疑惑(参考記事)を巡り、上層部と業者の癒着を疑いその解明を求める文書を作成して解雇処分となった神社本庁の元幹部職員と、神社本庁の間で今も続いている処分無効を求める訴訟に対し、一部の理事から「和解の道を探るべし」という提案が上がり、鷹司統理も、平成の御代替わりを前に収束を図るためにも議論を深めた方がいい、という見解を示した。

これに立腹した田中総長が「悔しいが今日限りで辞めさせていただく」と突如の辞任表明。ところが、10月、田中総長は一転して続投宣言する。これに驚いた鷹司統理が「人の上に立つ者や組織の長は、自らの言葉に責任を持つべきで、軽々しく変えてはならない」と異例の苦言を呈したことで、聖俗2トップの対立が先鋭化した。

泥仕合が続く

問題なのは、現在出回っている怪文書の一部が、出所不明の取るに足らないものと切って捨てるわけにはいかないという点だ。

「例えば『神社“真”報』始め、一部の怪文書には、神社本庁の幹部職員クラスしか知り得ない内容が書かれている。少なくても、内部事情に精通する関係者がバックにいないと書ける代物ではない」と複数の神社本庁関係者は言う。

当然、匿名で関係各所に送りつけられるこれらの怪文書を、神社本庁内部の者が書いた、あるいは書かせたのかは分からない。一方で、別の神社本庁関係者はため息交じりにこう明かした。

「幹部職員は今、統理派と総長派に分裂しています。統理派は鷹司氏に直接情報を上げ、逆に総長派は統理をないがしろにし、田中氏に忠誠を誓っています。大勢を占める田中派幹部職員たちは陰で鷹司統理のことを呼び捨てにし、『あいつは神社界のことが何も分かっていない。民間とは違うのだ』と息巻いています」

加えて、神社関係者が首を傾げるのは、前述の懲戒解雇された元幹部職員と比べた際の組織的な対応の差だ。さらに別の神社本庁関係者は言う。

「一連の鷹司統理批判の怪文書に対し、担当幹部は内部調査や告発などは行わないことを早々に決めました。片や、懲戒解雇された元職員が作った文書が出回った際には、名誉棄損だとして、田中総長の指示で顧問弁護士も同席して疑わしい職員を事情聴取するなど、徹底的な犯人探しを行いました。しかも今回は、統理という神社界の象徴が悪しざまに批判されているにもかかわらず、何もしないというのでは行動に一貫性がないと言われても仕方ない」

平成の終焉が近づく中、神社界が泥仕合を演じている。

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