「 Amazonに激怒のG20」

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Amazonに激怒のG20。法人税を払わぬ巨大企業を追い詰める包囲網

莫大な利益を上げ続けるAmazonが日本で税金を支払っていない事実は、先日掲載の「なぜAmazonは日本で法人税を払わずに済むのか? 元国税職員が解説」でもお伝えしましたが、「被害」を受けているのは我が国だけではないようです。

今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では著者で元国税調査官の大村さんが、日本と同じくAmazonが納税を行っていないG20が、同社に対して打ち出した厳しい姿勢を紹介しています。

アマゾンと先進諸国の攻防

このメルマガの2月1日号「なぜAmazonは日本で法人税を払わずに済むのか? 元国税職員が解説」において、アマゾンが日本で税金を払っていないことをご紹介しました。アマゾンは、日本には会社の施設を置いていないという理由で、日本国には法人税を払っていないのです。

アマゾン本社は、アマゾン・ジャパンなどに販売委託をしているという形になっているのですが、アマゾン・グループの仕組みとして、アマゾン・ジャパンなどの収益はアマゾン本社に吸い上げられるようになっており、結果的にアマゾンは日本でほとんど税金を払っていないのです。

アマゾンは、日本のネット販売事業で断トツの売り上げを誇っており、20%ものシェアを持っているのです。にも関わらず、日本では税金を払っていないのです。

このことについては、アメリカと日本との力関係も大いに影響しているということもご紹介しました。

アマゾンが日本で税金を払っていないことについては、日米の税務当局で話し合いが行われたのですが、日本側が全面的に譲歩する(つまり税金を払わなくていい)形で決着したのです。しかし、アマゾンは世界中でこういうふるまいをしているため、このままでは済まないだろうということも、メルマガの中で言及しておりました。

で、さっそく、G20でアマゾンに厳しい姿勢が打ち出されたようです。以下のニュース記事を読んでみてください。

ネット通販 国別に課税 G20「一時的措置」導入へ

国境を越えたネット通販企業の電子商取引をめぐり、20カ国・地域(G20)が、国ごとに企業が稼いだ売上高に課税できる一時的措置を導入する方向で調整していることが19日、分かった。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで同日開幕のG20財務相・中央銀行総裁会議で合意する見通し。進出国に支店などの恒久的施設(PE)がなくても課税できるルールを設け、通販業者の税逃れを防ぐ狙いだ。

G20財務相・中央銀行総裁会議は20日まで開催。経済協力開発機構(OECD)が16日に示した電子商取引に対する課税強化案の中間報告を軸に、具体的な合意内容をまとめる。2019年内にも企業が国ごとの売上高などの情報を公表するためのルールを策定。この情報を基に各国の税務当局が課税できるようにする方向だ。

国内外企業の無差別を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールを踏まえ、企業経営に大きな影響を与えないよう、一時的措置とし、中小企業や適正に納税している企業などに配慮する事項を盛り込む。20年までには、ネット通販を展開している国ごとに適切な法人税を課税できる長期対策もとりまとめる方針だ。

現在の租税ルールでは、企業は進出国に支店などのPEを持たなければ、原則、法人税は本社がある国に納める。また、法人税は利益に対して課すのが原則だが、電子商取引では、売上高から人件費などを差し引いた利益算出の難しさも課題となっている。そのため、20年までにはネット通販などを展開している国ごとの利益を適切に算出できるルールを作り、PEの定義も見直す。

ただ、大手通販企業を抱える米国は、余分な税負担が雇用や企業成長を妨げると反発。長期的なルール作りは難航も予想される。

トランプもAmazon非難の訳

大村大次郎さんの解説

この記事にでてくるアメリカの大手通販企業というのは、明らかにアマゾンのことです。そして、G20のこの発議というのは、明らかにアマゾン対策といえるものなのです。G20では、さすがに今のままアマゾンに荒稼ぎされて、無税で乗り切られてはたまらないということで、各国が協調して対応に乗り出したということです。

ただアマゾンは、アメリカの企業であり、アメリカでいくばくかの税金を払っているので、アメリカ政府が後ろ盾にいるわけです。アメリカ政府が、G20の発議を素直に受け入れるかどうかは、疑問の残るところです。

ところで、アマゾンに関しては、トランプ大統領もたびたび非難しています。3月29日にも、トランプ大統領が、「アマゾンは税金を払っていない」として、アマゾンへの課税を強化すると発表しました。

アマゾンは、一応、アメリカで税金を払っているのですが、収益のほとんどをタックスヘイブンに移すなどしているため、アメリカで支払っている税金はわずか200億円程度なのです。

全世界での年間売り上げが10兆円を超えているにしては、あまりに納税額が少なすぎます。アメリカとしても、アマゾンにもっと税金を払ってほしいわけです。

ただ、アメリカは、世界中の国々がこぞってアマゾンから税金を取り立てることは、よしとしていないわけで、G20の試みには賛同しない可能性が高いのです。アマゾンは、こういうアメリカと他の先進国の微妙な関係をうまく衝いて、税金を安く済ませているともいえるわけです。

アマゾンのCEOのジェフ・べゾフは、1,120億ドル(日本円で約12兆円)を持つ世界一の資産家となっております。そして、ワシントン・ポストも買収しており、アメリカの世論への影響力も持っています。

アマゾンは、確かに非常に便利です。またビジネス的に優れている面も多々あると思われます。しかし運送業者や参加業者に強い圧力をかけたりするなど、決して手放しで「良心的な企業」ではありません。

このままアマゾンが、税金も払わず膨張し続けることは、決して世界経済にとって好ましいこととは思えません。どうにかして、アメリカもG20諸国も歩調を合わせて、アマゾンをまっとうな状態にしてほしいものです。

大和ハウス課税漏れの「なぜ」

本当に儲かっている会社とは? ~大和ハウスの場合~
最近、興味深い課税漏れニュースがありました。大和ハウスの課税漏れです。これは企業の財務状態を語る上で、面白いサンプルだと思うので、今回、ご紹介しますね。まずは記事を読んでみてください。

<大和ハウス工業>2億7,600万円の申告漏れ

東証1部上場の大和ハウス工業(大阪市北区)は30日、大阪国税局の税務調査を受け、2017年3月期までの2年間に計約2億7,600万円の申告漏れを指摘されたと発表した。うち約3,100万円は所得隠しと判断され、追徴税額は重加算税(約300万円)を含め、約8,300万円。既に修正申告を済ませた。

同社によると、大型開発プロジェクトで、未完成の工事にかかった外注費など経費の一部を既に完成した工事に決算期をまたいで付け替えるなどしていた。別の造成工事についても、原価の計上ミスがあったという。同社は「見解の相違があったが、改善すべき点もあると判断した。再発防止に努めたい」としている。

課税漏れで判る大和ハウスの景気

大村大次郎さんの解説
この課税漏れ事案というのは、簡単に言うと、期末の経費計上の間違いがあったということです。建設業者や住宅メーカーなどが経費計上をする際、まだ完成していない工事の経費を計上することはできません。完成して、売上に計上された工事だけが、経費も計上されるのです。未完成の工事というのは、まだ売上には上がっておらず、つまりは収入にもなっていません。なのに、経費だけを計上すると、売上と経費の関係に矛盾が生じてしまいます。

未完成工事かかった経費というのは、在庫と同じ扱いになるのです。仕入れしてはいるけれど、まだ売れていない商品(在庫)というのは、その店の資産です。これと同じように、未完成工事にかかった経費というのも、その事業者の資産ということになるのです。大和ハウスの場合、その未完成工事かかった経費を、資産として計上せず、そのまま経費として売上から差し引いてしまったのです。そこを国税当局から指摘されたわけです。

この事案の何が興味深いか、というと、上場企業が、こういう操作をすることはあまりないからなのです。

大和ハウスというのは、上場企業です。上場企業というのは、通常、株主を喜ばせるため、株価を上げるために、1円でも多くの利益を出そうとします。

ですが、大和ハウスの場合は、その逆のことを行っているわけです。この課税漏れ事案を見る限りは、あえて利益を少なく計上しているのです。大和ハウスは最近非常に業績がよく、この利益を表に出すよりも、少しでも後に残そうという意識があったのかもしれません。これを見た限りでは、大和ハウスは、相当、景気がいいということが言えるでしょう。

大和ハウスの株式の配当金を見ても、

2014年3月期→50円
2015年3月期→60円
2016年3月期→80円
2017年3月期→92円
と急上昇しています。そして、2018年3月期には98円の配当を予定しているようです。

これだけ利益が上がっているからこそ、少しでも利益を先送りにしようという発想が出てくるんでしょうね。

そして無理やり利益を出さなくてもいいということは、安定株主がついているということでもあります。安定株主がいない企業は、株を売られないように、常に業績をよく見せておかなければなりません。

大和ハウスはそれをしなくてよかったわけです。いろんな意味において、大和ハウスは、「今、儲かっている」ということが言えるでしょう。もちろん課税漏れは褒められたことではありませんが。

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