「欧州の再生可能エネルギー先進事情」

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日本人が知っておきたい、欧州の再生可能エネルギー先進事情

2030年に再生可能エネルギーの電源構成比率22~24%を目指す日本。参考にしたいのが、再エネ先進地域・欧州の事情だ。現地ではどんな取り組みが行われているのか

今年7月、政府は「第5次エネルギー基本計画」において、2030年に再生可能エネルギーの電源構成比率22~24%を目指すとを発表した。とはいえ、総合エネルギー統計によると、現在では発電力量に占める割合が、再生可能エネルギーのうち、水力発電は7.6%、太陽光やバイオマス発電などでは6.9%しかない(2016年度)。

一方、欧州における再生可能エネルギー・シフトの取り組みは、我々が想像する以上に進んでいる。ドイツでは水力を除く再エネだけで27.7%(2015年度)を達成するなど非常に積極的であり、EU全体では2030年までに再エネ比率を32%にするという目標まで掲げている。

さらなる再エネシフトを目指す日本にとって、彼らの取組みは参考になるだろう。大きな成果を挙げている「再エネ先進地域」の現状を追った。

昔は日本のほうが進んでいた?
再エネ先進地域・欧州の取組み

太陽光などで発電された電気の固定価格買取制度(FIT制度)の話題も増え、日本でも身近な存在になってきた再生可能エネルギー(以下、再エネ)。再エネ先進国の状況は、今どうなっているのだろうか。

現在、再エネの最先端は欧州である。EUでは、最終エネルギー消費に占める再エネ比率を2030年に32%、2050年には100%にするという目標を持っている。「資源の削減はもちろんだが、再エネにまつわる産業をEUがリードしたいという思いがある」と三菱総合研究所・環境エネルギー事業本部スマートエネルギーグループの寺澤千尋研究員は話す。

日本が他国から遅れをとってきたかというと、そういうわけではない。「そもそも再生可能エネルギーの先端を走っていたのは日本だったのです」と寺澤研究員は言う。

1980年代から90年代にかけて、太陽光発電は日本が最も積極的であり、総電力量1位で技術力もトップと、世界を牽引する存在だった。そこに、ドイツが政策として再エネの普及に大きく舵を取り、日本が追い越されたのだった。

それぞれの国でどの再エネの比率が高いかは、どの資源が多いかというより、発電所の設置場所として適した場所の多寡で決まり、さらに推進する制度設計が決め手となる。事例を見ていこう。

ドイツとスペインはなぜ太陽光発電で明暗が分かれたか

まずは、太陽光発電である。太陽光発電に向いているのは、日照時間が長く、平地が多い地域だ。再エネ優等生のドイツは、まさに太陽光発電にうってつけの地形である。現在では36%(推定)が再生可能エネルギーとなったドイツだが、2000年に再生可能エネルギー法(再エネ法/EEG)が施行された当時は約6%しかなかった。

EEGは再エネ電力を固定価格で買い取り、系統事業者がその電力を優先して供給することを保証する法律で、メインとなる制度は「固定価格買取制度」(FIT、Feed-in Tariff)と呼ばれるものだ。

日本でも馴染みの深い言葉になったFITとは、簡単に言うと、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間、同価格で買い取ることを国が義務付ける制度だ。国が推進するにしても、発電設備や維持コストが高く発電効率も悪い再エネは、当初なかなか普及しなかった。

だが、「発電エネルギーをそこそこの価格で買い取ってもらえるならビジネスとしても悪くない」と判断する事業者が増えていったのだ。

ドイツでは、2004年に買い取り価格を見直したことで、再エネの機運が一気に高まり、メガソーラーだけでなく、家庭用も急増。翌年には、一歩抜きん出ていたはずの日本の太陽光発電の電力量を抜いてしまった。

この買取制度はドイツでは多大な功績を残したが、制度設計だけを他国でそのまま同じように当てはめてもうまくいかない。それはスペインで実証済みだ。

EUのなかで、スペインは積極的に再生エネルギーを取り入れてきた国。1994年にFIT制度により、風力発電を中心として再エネが急増。さらに99年からFIP(Feed-in Premium)制度を選択できるようになり、2016年の総発電電力量に占める再エネ割合は38.6%にのぼり、そのうち1割を太陽光が占めるほど存在感を増した。

しかし、電力の買い取り制度に無理が生じ、電力会社の累積赤字が拡大。なんと2013年には、FIT制度そのものを廃止してしまい、太陽光発電の成長は一気に鈍化。その成長率は完全にストップした。これに似たような状況にあるのが現在の日本だが、同じ轍は踏まないと信じたいものである。

太陽光よりも風力発電が向いていたイギリスの試行錯誤

次は風力だ。風力発電は、風が乱れずに一定に吹き、風力発電機を設置しやすい場所がある地域が向いている。そういう場所なら、グレードが低い発電機でも壊れにくいからだ。発電機は、人家から遠くて広い平地がある場所や、遠浅の海が設置しやすい。

この風力発電に強いのがイギリスだ。日照時間が短いため太陽光発電には向かないが、広い遠浅の北海を持つイギリスにはマッチしたのである。

イギリスでは2002年から電力小売り事業者に、販売電力量のうち一定比率の再エネ電力導入を義務付けるRO(Renewables Obligation)制度を導入、さらに2010年にはFIT制度を導入していたが、国民の負担が増大。2015年にはCfD(Contract for Difference/差額決済契約)を導入し、市場競争原理を取り入れることで国のコストを抑えられるようになった。

ちなみに、海外の再エネの主力は風力発電である。その風力発電が世界で最も伸びているのは、実は中国だ。「欧州が年率10%の伸びなのに対し、中国は2015年時点で太陽光発電が年率50%、風力発電でも年率30%で伸びている」と三菱総合研究所・環境エネルギー事業本部の井上裕史主席研究員は言う。

政府の後押しで発電量が増えているにもかかわらず、送電設備が供給に見合うほど整っておらず、「棄電」(ロス電力)が問題になっているほどである。

もちろん、日本にも風の良い地域はある。たとえば北海道は風力発電に適しているものの、最も電力使用量が多い東京に供給できないため、発電しても電力が余ってしまう。東北なら距離的にも期待できるのだが、沿岸部の海底深度が深いことがネックだ。

北欧地域が電力の大部分を
水力発電で賄える理由
 
さて、日本でも身近な再エネと言えば、水力だ。とはいえ、IEA(国際エネルギー機関)の2017年のデータによると、発電供給量の割合では10%に満たず、欧州で水力発電が特に盛んな北欧地域には遠く及ばない。アイスランドで7割強、スウェーデンで約5割、ノルウェーに至っては約9割が水力発電である。

オーストリアやスイスも水力発電の割合が高い。要は、起伏の激しい土地で、かつ発電に使える河川の多さが影響するのだ。自然に恵まれた環境にある国では、水力発電がやりやすいというわけである。

また、渇水になったときも、北欧4ヵ国は「ノルドプール」という国際連携電力取引市場があるため、他国から電気を輸入できる。北欧が供給の不安定な再生可能エネルギーに突っ走れる背景には、そうした事情もある。

浮体式洋上風力発電で勝負、日本は再エネ先進国になれるか

今後5年で最も成長率が高い
再エネ「バイオマス」とは

そして、もう1つ注目したい再エネがバイオマスである。バイオマス原料はいくつかある。1つは家畜の糞尿で、もう1つは木を切り倒したときに出るチップやペレットと呼ばれる木の切りくず、間伐材などの木材を利用する。特に後者は、林業が盛んなフィンランドなど北欧諸国の再エネで積極的に利用されている。

IEAは今年10月、バイオマスエネルギーが今後5年で最も成長率が高い再エネだと分析している。ただ、日本ではどうかというと状況は厳しい。バイオマス発電のためには、間伐材を山から切り出して運ぶための太い林道の存在がマストだが、日本では狭い山道しかなく、運ぶことが難しい。また、海外の安い材木に押され、林業そのものが縮小しているという事情もある。

浮体式洋上風力発電で勝負
日本は再エネ先進国になれるか

ここまで読んでいただければおわかりの通り、再エネで日本の環境に向いているものはほとんどない。とはいえ、再エネシフトを目指す日本は手をこまねいているわけにはいかない。日本は不向きな環境でも再エネ発電する技術の開発に必死だ。たとえば、山岳地帯での太陽光発電や海底が深い地区での浮体式洋上風力発電の開発を急いでいる。

特に、浮体式洋上風力発電施設は、2017年にはスコットランド沖に世界最大の発電所が稼働を開始するなど、世界的にも開発が進んでいる分野だ。日本もそこに活路を見出すべく手を打ちつつある。

今年日本でも、日立造船や丸紅などが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で、浮体式洋上風力発電システムの実証機を設置した。今までは洋上発電設備を建てるインフラがそもそもなく、建設のために欧州から借りたり、小型の船を使ったりしていたが、今年9月に大林組が大型着床式洋上風力発電設備を欧州同様に設置できる専用船の建造を決め、2020年10月完成予定と発表した。これにより、発電設備設置のコストが一気に下がる可能性も見えてきた。

日本が再び「再エネ先進国」と呼ばれる日も来るのかもしれない。

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