「あらゆる商材を「日本品質」で運ぶ」

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企業の戦略に応じた航空貨物輸送
あらゆる商材を「日本品質」で運ぶ

ANAグループで航空貨物事業を担うANA Cargo(ANAカーゴ)の事業展開が、急速に充実度を増している。2019年度中には、国内の航空事業者としては初めて大型貨物専用機「B777-F」も投入する。その多様なネットワークや輸送手段により新たなサプライチェーンを構築できる可能性が高まっている。

大型貨物専用機の「B777-F」。2019年度中に2機導入予定

2019年度中に大型貨物専用機
「B777-F」を2機投入

ANAが貨物事業を、国内旅客、国際旅客に次ぐ「第3の収益の柱」として位置付けたのは2008年。当時から「独自の戦略で時代に即したビジネスモデルの構築」が、一貫して追求されてきた。

①貨物専用機と旅客機の組み合わせによるコンビネーションキャリアとしての供給量とネットワークの充実、

②様々な顧客ニーズに対応した「輸送商品」の提供、

③沖縄を軸としたイントラアジアネットワーク(沖縄ハブ)を活用したエクスプレス輸送サービスの強化、などだ。

以来10年、この間、持株会社化で航空貨物事業はANAカーゴが担うことになったが、当初からの戦略は維持され、今、〝開花期〟を迎えようとしている。①長距離大量輸送を可能とする「B777-F」の投入、②他社との戦略的な提携も含めたネットワークの充実、③航空貨物商材への対応力の飛躍的強化など、サプライチェーンの高度化に不可欠なサービスがラインアップされてきたからだ。

B777-Fの投入は、事業充実の象徴的なイベントでもある。2機を19年度中に導入するが、B777-Fは、100トンの積載量があり、航空機エンジンや自動車、半導体製造装置などの大型貨物、リチウムバッテリーや医薬品などの危険品・特殊品を大量輸送できる。

航空輸送が選択されるのは「スピード重視」(ハイテク製品・電子部材・生鮮・アパレルなど)、「湿度・衝撃に弱い」(海上輸送に向かない半導体製造装置等の精密機械)、「緊急出荷対応」(自動車部品など)の商材など

ANA国際線として47都市/85路線のネットワークをもつ

航続距離は約9000㎞で、日本から米国中西部までダイレクトで飛べる。ANAカーゴでは、アジア―日本―北米を結ぶ太平洋路線に導入する予定だ。

ANAは現在、259機の航空機を有し、国際線旅客機では45都市・65路線、国際線貨物機では15都市・46路線のネットワークを持つ。貨物専用機は、積載量が50トンの中型機12機だが、新型機の導入は、単なるキャパシティーの増加にとどまらず、輸送能力の質を変化させる。

杉口広・ANAカーゴ取締役は、「B777-Fの導入で、航空貨物として輸送できる荷の大きさ、輸送できる距離などの制限はほぼなくなり、また旅客機による貨物輸送(ベリー)のネットワークも加味すれば、どの仕向地にどんな荷物でも運べるようになります」と強調する。

今や航空輸送は、商品の市場への集中投入によるシェア確保や生産計画の進捗に応じた緊急出荷など、より戦略性が高まっている。医薬品や精密機器では湿度や温度、衝撃や振動などに細やかな管理が必要だが、専用の保冷コンテナの活用や、あらゆる商材に適したハンドリングなどを通じて対応できるようになった。

日本の航空会社初の医薬品輸送の国際品質認証を取得

日本の航空会社初の国際医薬品
輸送品質認証

清水 拓 グローバルセールス部
グローバルセールス企画課 課長

清水拓・ANAカーゴグローバルセールス企画課長は「例えばB777-Fの導入で大型の完成車や半導体製造装置を運べるようになりますが、運べるだけでなく、運ぶための繊細なノウハウをあらゆる商材に展開して、日本品質でお届けできることに意味があります」と言う。

その象徴が、日本の航空会社では初めて医薬品輸送の国際品質認証「IATA CEIVファーマ認証」を取得したことだろう。IATAが策定した医薬品輸送の適正取り扱い監査項目は約250にも上るが、ANAカーゴは成田空港で高い品質管理体制を構築した。まさに新たな「日本品質」が誕生した。

供用開始から10年を経た沖縄ハブの進化も続いている。アジアの主要市場に4時間で飛べる地の利と、24時間運用が可能なことから沖縄ハブは、流通拠点となる施設の拡充や、市場に合わせた柔軟なネットワーク構築を進めている。

またユナイテッド航空やルフトハンザ航空とのジョイントベンチャー、日本貨物航空との戦略的業務提携など、輸送ネットワークの厚みが増している。

ボーイング社の「国際航空貨物予測」によれば、アジア―北米間の航空貨物輸送は、今後20年間、年率4・6%の増加が予測されている。成長著しい中国内陸部での自動車部品や、アパレル商材の縫製地として新興著しいカンボジアなどで、充実したネットワークを求める動きが強まるだろう。「越境EC」が増加するのも確実だ。

政府は20年までに、羽田空港の離発着回数を年間約3・9万回増やす計画だ。また成田空港ではB滑走路の延伸とC滑走路の新設が計画され、年間の発着回数を20万回増やす。

「行政面での動きと、私どもの多様な輸送手段やネットワークの提供は、物流担当の皆さんにまったく新しいアイデアによるサプライチェーンの構築を可能にするものだと思います。国際航空貨物が特別な手段ではなく、当たり前の選択肢になる時代が始まっているのです」(杉口氏)

航空会社別の貨物搭載量では、ANAカーゴは現在、世界9位だが、早い段階で5位を目指す目標を掲げている。

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