「韓国の文在寅政権に吹き荒れる逆風」

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特使団の成果は、金委員長の発言の紹介のみ

韓国の文在寅政権に吹き荒れる逆風 北朝鮮問題に加え、経済状況悪化も

米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の二度目の首脳会談が年内に開催される可能性が高まる中、3度目の南北首脳会談を18日ー20日に控えた文在寅(ムン・ジェイン)政府が韓国内世論の逆風に苦戦している。

韓国では、北朝鮮の非核化に対する金正恩政権の具体的な措置が見えない中、迅速な南北関係改善と年内終戦宣言に執着する文政権に対する批判的な世論が広がっている。

雇用悪化などの不安な経済状況も、莫大な費用が国庫から支払われる南北経済協力に対する反対の世論を形成している。

9月5日、文在寅政府は、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府安保室長、徐薫(ソ・フン)国家情報院長を含む5人の対北朝鮮特使団を北朝鮮に派遣し、非核化問題と第3次南北首脳会談に対する立場を伝えた。特使団は午前中に金正恩氏に会い、文大統領の親書を渡すなど、1時間30分にわたる面談を行った。午後は北朝鮮実務者たちと長時間の会談を行い、夕食会を開いた後、5日の夜遅く韓国へ戻ってきた。

金正恩氏との面会に成功し、予定になかった夕食会の日程が追加されると、大統領府からは「雰囲気は悪くない」という期待の声が流れ、特使団が北朝鮮から受け取ってくる「プレゼント」に対するマスコミの期待も高まった。しかし、翌日に公開された「プレゼント」はこの期待にはるかに及ばなかった。

鄭義溶室長が発表した特使団の訪朝結果の発表文を見ると、まず、第3次南北首脳会談の日程と主要議題が確定された。平壌で開催される第3次南北首脳会談は9月18日から20日までの2泊3日の日程で、板門店宣言の履行事項の点検及び、今後の推進方向に対する協議が主な議題として決定された。

他にも南北間の軍事的緊張関係の解消に向けた軍縮会談を続けることや、南北連絡事務所を首脳会談より前に開所することに合意した。

反面、全世界の耳目が集中した北朝鮮の非核化については金正恩委員長の「誠意」を改めて確認するだけにとどまった。特使団が最高の成果だと持ち上げた「金正恩委員長が直接明かした非核化のタイムテーブル」すら良い評価は得られなかった。

米国のジョン・ボルトン安保担当補佐官によると、今年4月の板門店会談で金氏が文大統領に約束した非核化スケジュールは「1年」だった。それが今回は「トランプ大統領の任期内」(2021年1月)へと、むしろ長引いてしまった。

また、訪朝結果を報告する記者会見の内容が、「国際社会から非核化に対する意志を疑われることが惜しい」「(東倉里のミサイル発射台の閉鎖や豊渓里の核実験場の爆破は)非常に実質的で意味ある措置なのに国際社会の評価が低すぎる。善意を善意として受け止めてほしい」「終戦宣言と韓米同盟の弱体化、在韓米軍の撤収はまったく関係ない」など、金正恩委員長の発言をそのまま紹介することで終わり、まるで「金正恩の特使団になってしまった」という非難を浴びた。

予定になかった「夕食会」が結局は北朝鮮側の出席者なしに5人の特使団だけの食事だったという事実も、マスコミから「一人飯外交」という揶揄を受けた。

いずれにせよ、「対北朝鮮特使団イベント」が韓国国民とマスコミからあまり反響を得られないまま幕を下ろしたことで、文政府の平壌首脳会談の準備にも支障が出てきた。

平壌首脳会談準備委員長である任鍾皙(イム・ジョンソク)秘書室長は10日、国会議長と政党代表などの9人の国会議員に対して「平壌同行」を要請したが、応じた議員はたった3人に過ぎなかった。

右派野党の『自由韓国党』と『正しい未来党』の議員はもちろん、与党の『共に民主党』出身の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長さえ、事前協議がなかった一方的な提案について「不愉快だ」と、その場で断った。何より大統領の行事に立法府代表団が同行すること自体がありえない無礼であり、傲慢な発想だと指摘した。

平壌首脳会談の最大の議題と予想される南北経済協力に向けた構想も困難に直面している。文在寅政権は50人規模の「経済使節団」を構成して平壌に同行させるという考えだが、これが容易ではない。有力紙の『朝鮮日報』によれば、多くの大手企業は、今回の南北首脳会談の特別随行員のリストに入らないことを望んでいる。

「国際社会の制裁緩和措置が行われていない状態で大統領の訪朝に同行すると、具体的に対北朝鮮投資や取引をしなくても、米国政府のウォッチリストに名前が上がるリスクがあり、いろいろ悪影響を受けかねない」という大手企業の関係者の懸念を伝えた。

時間的な問題についても指摘した。大企業CEOの日程を考慮しないまま、1週間前に迫った平壌行きの同行を求めるのは「政府のパワハラ」という大企業の役員のインタビューを紹介した。

同紙によると、韓国財界では主要経済団体のトップや公企業CEOを中心に特別随行員が構成されることを望んでいるが、南北経済協力を強く望んでいる北朝鮮は実質的な意思決定権を持っている大企業のCEOが参加することを希望する可能性が高い。経済使節団の構成をめぐり、北朝鮮と意見の相違が表出する可能性があると思われる。

板門店宣言の国会批准問題は当面の最大の難関だ。11日、文在寅大統領は板門店宣言に対する国会批准同意案を国会に提出した。国会では国会議長と各党の院内代表(日本の幹事長)が、「板門店宣言の批准は平壌首脳会談以降に進める」という日程で合意した。にもかかわらず、文大統領は、平壌訪問前に批准を処理するように国会に求めている。

しかも、国会批准に向けて政府が提出した疑わしい「費用推計書」が反発をさらに強めた。一般的に政府が国会に提出する批准同意案には、当該条約の今後5~10年間の予算などを具体的に記入する。

しかし、板門店宣言の批准同意案には2018~2019年の予想費用の6438億ウォン(約644億円)だけが記入された。専門家たちによると、南北経済協力事業にはおよそ数十兆ウォンの予算が必要だ。

国会批准が可決されれば、2020年からは数十兆ウォンの南北経済協力の予算を国会の同意なしに政府が任意に編成することができる根拠になる。このため、『自由韓国党』などの右派野党では「南北経済協力事業の白紙小切手」という言葉を使って激しく反発している。

平壌首脳会談をめぐって国会ともめている文在寅大統領は、「平壌首脳会談は重大な民族史的な大義」と言及し、「党利党略を止めろ」と攻撃した。各市民団体も、国会の同意を要求する声明書を発表し、各地でデモを続けている。

しかし、肝心な韓国民の世論は文政権にあまり同調的ではない。連日のように、「IMF以降の最悪の経済危機」という報道が相次いでいる中、北朝鮮問題ばかりにのめり込んでいる文在寅政府に対して背を向けてしまった支持者が多いからだ。

今年の7月にわずか5000人の雇用増加にとどまった雇用統計は、8月には「3000人増加」へとさらに悪化した。青年失業率もいよいよ10%を超えてしまった。不動産価格は、文在寅政権の1年半の間、9年間の右派政権時代をはるかに上回る上昇の勢いで、歴代最高値を記録している。最低賃金の急激な引き上げによる物価上昇はスタグフレーションの前兆さえ見せ始めている。

平壌首脳会談を前面に出すことで、40%台まで急落した支持率の持ち直しを狙っている文在寅政権の戦略は成功するだろうか。文在寅政権は今回の平壌首脳会談を4月の板門店会談に劣らないビックイベントに仕立てることができるだろうか。

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