「ヤラセ疑惑」

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池上彰氏の「ヤラセ疑惑」が拡大、炎上しています。

事の発端は、フジテレビで放送された『池上彰スペシャル』。この番組は小中学生をスタジオに多数集め、子どもたちの抱える政治に対する率直な疑問に池上彰氏がわかりやすい回答を寄せるという番組なのですけれども、そこに登場した「一般人の小中学生」が政権批判をしました。

ところが、番組が"一般人"だとテロップ紹介した小中学生が実は芸能プロダクションに所属する子役、タレントだったと判明、炎上しました。

こちらのサイトによると、出演した子供達70人のうち、30人は子役なのだそうですけれども、出演者の半分近くが子役となると、彼ら全員を「一般人の小中学生」と紹介するのは無理がありますし、そうテロップをうつのなら、それなりの慎重さが求められます。

なぜなら、視聴している側からすれば、子役の発言には「台本」があるのではないかというバイアスがかかるからです。先のサイトでも、「一般人が政権批判をするのは自由だが、台本に沿って演技することを本業とする子役が発言していたとなると見方が変わる」と苦言を呈しています。

こうした批判に対してフジテレビ側は「出演している小中学生は、自ら抱いた疑問について質問し、自分の言葉で意見を述べています。台本に基づいて演じたということは一切ございません」と説明しています。ネット等では、素人では番組が成立しないという意見もあるものの、台本がないなんて信じられないと賛否両論のようです。

こうした子役出演の裏側について、元子役で女優の春名風花氏は「子役たちは裏で『決して言ってはならないこと』と『決して怒らせてはいけない人』について指導を受けています。なのでもし政権批判っぽいコメントがあったのなら、それはこの国でまだ『言ってはならないこと』『怒らせてはいけない人』ではなかったってこと。それって良いことなんじゃないかなあ」とツイートしています。

食品輸入などの世界で許可、不許可を示す際に、ポジティブリスト、ネガティブリストという制度があります。

ポジティブリストとは、原則禁止している中で、許可する物をリスト化したもの、ネガティブリストはその反対で
原則禁止していない中で禁止している物をリスト化したものです。

品目の自由度という意味では、禁止するもの以外は何でもOKとなる「ネガティブリスト」の方が大きくなるのが普通です。

これを報道に当てはめると、より自由であるのは、これだけは話してはいけない、と決めておく「ネガティブリスト」方式になります。春名風花氏が述べている「喋ってはいけないことを予め列挙して指導する」というのはいわゆる「ネガティブリスト」方式ですね。

これが、独裁国家となると、ポジティブリストよろしく決まったことしか報道できなくなってしまう訳です。

一方、「台本」というのは、予め話す内容が決められているという意味で「ポジティブリスト」に近いものであるとも言えます。

ドラマや映画には、原作なり台本なりがありますけれども、それらの殆どは、主張したいテーマという「ポジティブリスト」に基づいて作られています。けれども、それらは偏向だなんだとは批判されない。作る側も見る側も、原作あるいは台本・脚本という「ポジティブリスト」があると知っているからです。

たまに原作がある作品をアニメ化、実写化したはいいが、あまりにも脚色や改編を行い過ぎて、いわゆる「原作レイプ」状態になって、原作ファンから不評を買うことがままありますけれども、これなどは「ポジティブリスト」に違反したからという見方もできますね。

では、ドラマや映画と違ってニュースなどの報道番組はどうか。

これは、表現の自由を確保する為にも「ネガティブリスト」方式が望ましいことはいうまでもありません。けれども、今問題となっているのは、報道番組における「ネガティブリスト」に何がリストアップされているかが公開されていないことにあると思います。

無論、番組スポンサーくらいは「ネガティブリスト」に名を連ねているであろうと容易に予想されるのですけれども、それ以外は分からない。それが余計に視聴者の不信感を買っている。

最近は、メディアも自身に都合が悪いであろうことを報じないことを持って「表現しない自由」だとか「忖度」だとか批判を浴びていますけれども、それは自身で決めている「ネガティブリスト」を公開しないからだとも言えますね。

また、一方で報道番組において「ポジティブリスト」を作っていないのか、という点にも注意しなければなりません。
何某かのバイアスの掛かったポジティブリストに基づいた番組が作られたとすると、それはどんどん自由から遠ざかり、「プロパガンダ番組」となっていきます。そうなるともう報道とは呼べなくなります。

まぁ、最初から「ポジティブリスト」を明示し「プロパガンダ報道」だと明らかにした上で放送するなら、見る方もフィクションだなと分かりますからまだいいのですけれども、それを隠して「ネガティブリスト」に基づいて作ったように見せようとすると、どこかで無理が出てきます。

それを取り繕う手段が「偏向」であり、「捏造」です。

"一般人のインタビュー"から「ポジティブリスト」に則ったものだけを抽出して放送すれば「偏向」ですし、「ポジティブリスト」に沿った"意見"なるものを加工したり作成すれば「捏造」になります。

前者は"編集権"の名の下に自由にできますし、後者については、「ポジティブリスト」に基づいた発言をしてくれる人を予め「仕込んで」おけば、それでOKです。最近もトランプ大統領の発言に全然違うテロップを付けて炎上した番組があったかと思いますけれども、あれなども「捏造」の一種だといえますね。

今回の池上氏番組のヤラセ騒動も、番組に政権批判という「ポジティブリスト」が用意されていたのではないかと視聴者が疑問に思い、炎上している訳です。

そうした疑惑に応えるためには、局は番組に対して設けている「ネガティブリスト」あるいは「ポジティブリスト」を積極的に公開する必要があると思いますね。

日比野庵

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