「幼さ」

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代表選で見えた国民民主党の「幼さ」 “深慮遠謀”なき野党共闘戦略

結党後初めてとなる代表選を経て、国民民主党の新執行部が発足した。代表選で党の方向性に関する活発な論戦が交わされたのは歓迎すべきことだが、候補者の訴えの「軽さ」は否めなかった。

「来年の参院選を考えると、年内に一定の支持率向上の成果を見せなければならない。代表としてやれることは全部やる」

国民民主党の玉木雄一郎代表(49)は9月11日、党役員人事案を提案した両院議員総会でこう決意を語った。

執行部の新体制は、代表選で玉木氏と一騎打ちを繰り広げた津村啓介元内閣府政務官(46)を副代表に起用するなどして「ノーサイド体制」(玉木氏)を演出した。野党共闘のあり方などで意見が対立した代表選のしこりを残せば、党運営が不安定化しかねないからだ。

突き放す立憲民主

とはいえ、両氏共通の主張も少なくはなかった。その一つが、来年夏の参院選に向け、改選1人区での候補者調整のために野党共同の選挙対策本部を設けるという構想だ。

ただ、野党第一党・立憲民主党の枝野幸男代表(54)はこの構想に難色を示し、「中央で変な枠組みを作ることが1人区での幅広い連携の障害になる。くみするつもりはない」と強い表現で突き放した。

結局、枝野氏が歩み寄ることはなく、玉木氏は9月4日の代表選出後の記者会見で「言葉が『共同選対』となるとカチッとしたイメージにとられたかもしれない。呼び方は別にして、とにかく調整のメカニズムを呼びかけていきたい」と主張をトーンダウンさせた。

改選1人区では野党が候補者を一本化するべきだという点に関しては、枝野氏と玉木、津村両氏の考えは一致している。にもかかわらず、足並みの乱れがあるように映ったのはなぜか。

立憲民主党が、参院選での野党共闘をめぐり共産党とどう向き合うかという難題を突きつけられているからだ。

過去2回の国政選挙での野党の候補者一本化は、政党同士の公式な協議を経ない「阿吽(あうん)の呼吸」によるものだった。しかし、共産党は次の参院選で正式な「相互推薦」へと深化させることを提案している。

枝野氏は「野党共闘」や「選挙協力」という言葉は使わずに、候補者調整は「幅広い市民との連携」の成果だと主張している。市民の声に応えた候補者一本化という体裁をとることによって、憲法や自衛隊に関する共産党との見解の隔たりを棚上げにしてきたのが実相だ。だが、「相互推薦」に踏み込めば、こうした論法は通用しにくくなる。

枝野氏と最近会談したという野党関係者は次のように解説する。

「立憲民主党の悩みは、共産党から相互推薦を迫られていることだ。国民民主党などの候補者の推薦を決めれば、必ず共産党は『私たちも相互推薦を求めている』と訴えてくる。枝野氏は相互推薦に乗りたくない半面、共産党の気分は害したくないと考えている」

共産の顔立てて

共産党は昨年12月の第3回中央委員会総会(3中総)で他党との相互推薦を目指す方針を決めた。中央委総会は党大会に次ぐ意思決定機関であり、その確認事項は極めて重い。

枝野氏は、共産党の顔が立つような落としどころを水面下で探ろうと考えているはずだ。しかし、仮に「共同選対」なる組織が発足すれば、公式な会議体で相互推薦問題が取り沙汰されることになり、最悪の場合は共闘の決裂にもつながりかねない。

こうした事情を踏まえれば、枝野氏が共同選対構想に理解を示す可能性がみじんもないことは明々白々だ。

本稿では、「共産党を含む枠組みでの選挙協力」の是非には触れない。問題にしたいのは、水面下でガラス細工を作り上げるように進めていくべき話を、代表選の論戦で公然と口にしてしまう「幼さ」である。

野党共闘のあり方に加え、低迷する党勢の浮揚など、国民民主党には数々の難題が待ち受ける。老獪(ろうかい)さに欠ける党運営ではとても難局は乗り切れまい。

玉木氏は秋の臨時国会までに他の野党に統一会派結成を呼びかける考えを示しているが、くれぐれもガラス細工を壊してしまうことのなきよう…。 

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