「憲法は何度改正してもよい」

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20日投開票の自民党総裁選では、憲法改正が大きな争点となっている。特に焦点の9条をめぐっては、安倍晋三首相(党総裁)は現行条文はそのまま残し、新たに自衛隊を明記することを主張し、石破茂元幹事長は戦力の不保持を定めた2項の削除を求めるなど、両者の隔たりは一見大きい。
 
憲法学者を中心に、自衛隊違憲論が今も幅を利かす根拠でもある9条2項は、次のように定める。
 
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」
 
この条文について産経新聞は昭和56年元日の「年頭の主張」で、こう率直に記している。
 
「日本語を正しく理解し、素直に解釈しようと努力すればする程、違憲論者にならざるをえないのではないだろうか」
 
その意味では、石破氏の考えは理解できるし、石破氏に同調する声が少なくないのも当然だろう。とはいえ、そもそも安倍首相と石破氏の意見は、どちらか一つを選ぶともう一つは捨てなければならない二者択一の問題ではないと思う。

ドイツは60回改正
 
まずは、実現性が高い自衛隊明記の憲法改正を行った後、それでも矛盾が生じたり、時代の要請で機運が高まったりすれば、改めて2項削除の改憲を実施すればいいだけではないか。

世界を見回せば、憲法改正は珍しいことでも特別なことでも何でもない。日本同様、敗戦国だったドイツは戦後、憲法に当たる基本法を約60回改正している。
 
憲法改正は1度きりだと勘違いしてはいけない。日本国憲法は施行から70年以上がたっても全く改正されていない「世界最古の憲法」と呼ばれる。時代に合わない部分や足らざるところは今後、どんどん変えていくべきである。
 
前文の主語、述語が分かりにくい極端な悪文や、抽象的で意味不明な「人間相互の関係を支配する理想」「政治道徳の法則」などの言葉もぜひ、まともな日本語に書き改めたい。

「全てか無か」でなく

また、識者の中には、憲法に自衛隊を書き込むよりも、防衛費を大幅に増額すべきだという意見もある。だが、これも二つに一つの問題ではない。両方やればいいだけではないか。
 
10日の自民党総裁選立候補者の共同記者会見で、石破氏は9条に関して安倍首相にこう問うていた。
 
「総裁が幹事長当時に言っていたことと、私どもは全く一緒だった。それがなぜ変わったのか」
 
おそらく当時は安倍首相も2項削除論だったと言いたかったのだろう。一方、首相は記者会見後、周囲にこう語っていた。

「何で考えが変わったかって、それは公明党がのまないからに決まっている。2項削除は残念ながら、どんなに努力しても、自民党内にも反対者がいる現状では難しい」
 
平和の党を標榜(ひょうぼう)してきた公明党は、9条の条文に手を入れることに拒否感を持つ。それならば、憲法に足らざるを書き足す「加憲」を掲げる同党が受け入れ可能な案にしなければ、改憲発議に必要な3分の2議席を確保できない。
 
安倍首相はこれまでも、「全てか無か」の政治手法は採らず、一歩ずつ着実に進む姿勢を貫いてきた。  「この問題は今回の総裁選で決着をつけたい」
 
安倍首相はこうも述べ、総裁選に大勝することで自身の案の正当性を高め、党を一つにまとめたい決意を示した。総裁選が、改憲論議が前進する大きな契機となることを期待したい。

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