「サウジアラムコ上場中止」

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サウジアラムコ上場中止に見る権力政治、今後はトランプ政権の出方次第か

時価総額2兆円規模のIPOと騒がれていたサウジ国有石油会社の上場が中止になりました。その背景にあった2つ壁と、変化した原油価格シナリオについて解説します。

サウジアラムコ上場に立ちはだかった「2つの壁」

ロイター通信が23日に報じたところによると、サウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコが来年新規に株式上場(IPO)を目指していましたが、複数の関係者によると、これが中止になり、ファイナンシャル・アドバイザー・チームが解散されたとのことです。サウジ当局はまだ認めていませんが、関係筋によれば、かなりの確率で中止決定と見られると言います。

伏線はありました。もともとは今年の上場を予定していたのですが、準備が間に合わず、来年に先送りされていました。今回の中止ともつながりますが、2つの壁が立ちはだかったようです。

ムハンマド皇太子、企業価値「2兆円」へのこだわり

1つは、サウジアラビアの当事者、ムハンマド皇太子が、上場によって2兆ドルの資金を手に入れたいと計算していました。

つまり、皇太子は2兆ドルの企業評価にこだわっていたのですが、ファイナンシャル・アドバイザーの評価はせいぜい1.5兆ドルで、25%の溝が埋まらなかったといいます。

言い換えると、グローバル・コーディネーターを務めるモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、HSBCには、2兆ドルの市場評価に持ち込む力がなかったとも言えます。

態度を変えたトランプ

そして、サウジアラムコの上場には協力すると、ムハンマド皇太子に伝えていたトランプ大統領が、態度を変えて非協力的になった可能性もあります。

トランプ氏は、米国の石油資源を優先したい思いがあるほか、ここでコーディネート役を担うこれら国際金融資本との折り合いが悪くなっていたからで、彼らがこの上場で巨大な手数料収入を手にすることを良しとしなかった面があります。

金融政策においても国際金融資本の影響力を排除し、政権の意向を反映させたいとの思いが強いと言います。

また、時価総額が巨額になるため、サウジ国内での上場ではとても賄えず、海外でもニューヨーク、ロンドン、香港などでの上場を検討していた模様です。

しかし、かつて「9.11」の主犯格がサウジ出身者とされ、ニューヨークでの上場には、今後も様々な形での政治リスクが付きまとう可能性があり、サウジは消極的でした。

ここでもトランプ大統領の出方如何というリスクがあります。

変化した原油価格シナリオ。反トランプ勢力が動き出した?

サウジアラムコのIPOが中止となると、原油価格の動きが変わってくる可能性があります。

IPOを前提に描かれた価格シナリオは、IPOまでは原油価格を徐々に吊り上げ、上場企業の市場評価を高めようとすると見られていました。実際、IPOの話が出て以来、原油価格は着実に上昇してきています。

しかし、一旦上場が成功してしまえば、サウジもロシアも増産して原油輸出収入を増やしたいだけに、上場後には原油増産で原油価格が急落する、というシナリオが描かれていました。

しかし、IPOが中止となれば、無理に価格を吊り上げる必要もなくなります。原油の先物価格を見ると、期近なものの方が高くなっていて、それだけ短期的に意図して吊り上げられていた可能性が見えます。

それだけに、そうした意図が後退する中では、原油価格にまた低下圧力がかかる可能性があり、逆に将来の急落リスクも後退します。今後は不自然な在庫減という統計での価格押し上げは期待できず、需給面からは下げやすくなると見られます。

ここまでは、トランプ陣営を背後で支える勢力が、従来のユダヤ系国際金融資本と対立する構図の中で、トランプ陣営が国際金融資本を抑え込む形で動いているように見える事象と見ることも可能です。

ところが、これと逆行する事件も起きています。

ロシアゲートでトランプ大統領が窮地に

このトランプ陣営に逆襲をかけるような事態が発生しました。
トランプ陣営の元選挙対策本部長を務めたマルフォード氏に21日、有罪判決が下り、さらに、トランプ氏の元顧問弁護士であったコーエン氏が、トランプ氏の指示で女性に口止め料を渡すなど、不正行為を知っていて手を下したことを認めました。

しかも、トランプ大統領には悪いことに、コーエン氏は当局と司法取引をしたようで、トランプ氏に関するすべての情報をモラー特別検察官の捜査チームに提供する意向と言います。

これはトランプ大統領にはかなりの痛手で、弾劾訴追につながるリスクが出てきました。これはまさにトランプ政権と対立し、反発する勢力が、トランプ大統領の追い落としに出たとも言えます。

蒸し返されたロシアゲート。トランプ政権の裏で攻防が起きている…
動き出した反トランプ勢力

この反トランプ勢力は、ロシアゲート問題によって、トランプ大統領を排斥するべく、動き出したと考えられます。

国際金融資本のリーダー的な役割を果たしてきたデイビッド・ロックフェラー氏が亡くなって以降、この勢力を統括するリーダー不在の状況となって、ネオコン勢力とCFR(外交問題評議会)との使い分けもうまくいかなくなった可能性があり、そのすきを縫って新たにトランプ陣営が旧勢力を排除して自らの権勢を拡大しようとしているように見えました。

しかし、ロシアゲートの問題が再び蒸し返されたように、旧勢力がトランプ陣営に逆襲をかけている可能性もあり、この勢力争いが必ずしもトランプ陣営の勝利とも言い切れない状況になっています。

トランプ政権を背後で支える勢力の力関係にも目が離せません。

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