「南鳥島のレアアース」

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南鳥島のレアアース、世界経済を変える? 現状「ただの泥」の可能性

デジタル機器の製造に欠かせない材料のひとつに、レアアースがあることはよく知られている。このレアアースが、日本の南鳥島周辺の排他的経済水域の海底で大量に発見された。こうした将来的にレアアース市場の様相を大きく変える可能性のある今回の発見に関して、海外メディアの見解は分かれている。

◆620年分の埋蔵量
 
南鳥島周辺の海底を調査したのは、東京大や海洋研究開発機構からなる研究グループで、研究成果はイギリスの科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。今回の発見で特筆すべきは、その埋蔵量である。モーターの製造に使われるテルビウムが世界需要の420年分、液晶ディスプレイの発光体の材料であるユウロピウムにいたっては620年分あるという。

調査に参加した加藤泰浩・東京大教授(地球資源学)は「十分な資源量が海底にあることが分かった。効率的に採取できる可能性も高まり、資源開発の実現に一歩近づいた」と語っている(毎日新聞)。

◆中国の支配からの脱却
 
南鳥島海底のレアアース発見に関して、CNNは4月17日、「日本の小さな島の泥が世界経済を変えうる」と題した記事を掲載した。

同記事では、天然資源の研究を行っているアメリカ地質調査所のレポートを引用している。

それによると、レアアース自体は比較的豊富に地球に存在しているものも、それらは「採掘可能な埋蔵鉱石として集中して存在していない傾向にあり」、それゆえ今回のような規模の発見は非常に重要だとしている。

さらに、「世界のレアアースは数えることができるほどの少ない採掘源から供給されている」とも述べている。事実、2015年のレアアース生産量の95%は中国が占めていることを同記事は指摘する。

以上のようなレアアース市場の現状をふまえたうえで、日本は今回発見されたレアアースをもってすれば、新たな供給源をもたらすことでレアアース市場の完全なコントロールを達成する、と同記事は記す。

また日本の採掘に関する研究も、発見した海底のレアアースを「近い将来、採掘可能」であると示している、と伝えている。

それはまだ泥

一方でテック系ニュースサイト『The Verge』は4月17日、南鳥島海底のレアアース採掘に立ちはだかる課題を指摘する記事を掲載した。

同記事は、現在中国がレアアース市場を支配している原因は、レアアースの採掘が「費用がかかり困難で、さらに危険である」ために西洋諸国は多かれ少なかれ中国にレアアース採掘を押し付けることことを良しとしている、というレアアース取引の経験のあるフリージャーナリストのティム・ウォーストール氏の解説を紹介している。

そして、2010年、中国は尖閣諸島における中国漁船衝突事件への制裁措置として日本に対してレアアースの輸出制限を実施したものも、レアアースを消費する日立や三菱といった企業はレアアースをあまり使わない製品を開発して制裁を切り抜けた事例を引き合いにしながら、中国のレアアース支配から抜け出す迂回路は多数あることを報じた。

こうしたレアアース市場の分析を前提として同氏が南鳥島海底のレアアース発見を考察するには、確かに海底にレアアースが大量にあるのだろうが、それを採掘し市場で流通可能なかたちにまで加工するには大きな障害が立ちはだかっている、とのこと。

さらに同氏は、日本が置かれている状況について「どこかを採掘すると、泥と鉱石というふたつのものが出てきます。

みなさんの家の裏庭を掘ると泥が出てくると言えるのは、裏庭からレアアースを抽出して売りに出すにはコストがかかるからです。

しかし、裏庭からレアアースを抽出するコストが安くなった途端、裏庭の泥はレアアースとなるのです。ところで、今回日本は何を発見したのでしょうか。現時点では、まだただの泥です」と語った。

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