「10兆円以上の北朝鮮支援を約束」

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中国、10兆円以上の北朝鮮支援を約束

習近平氏、中朝首脳会談で「米朝関係を改善してもかまわない」とお墨付き

非核化をめぐる米朝交渉の潮目が変わった。明らかに、北朝鮮は「遅延作戦」を取っている。その背景にあるのは習近平国家主席の発言だ。

平壌とワシントン、それぞれの中枢事情を知る複数の関係者が、習近平国家主席が「完全非核化は10年前後のちでいい」と、北朝鮮の金正恩委員長に述べたと明らかにした。

また、中国は今後10年間にわたって総額10兆円もの支援をすると北朝鮮に約束した。

北朝鮮の非核化について、習国家主席は「中朝首脳は何度も非核化で合意
した。非核化は必ず実行してほしい」と求め、「10年前後の時間をかけてもいい」と伝えた。

その理由として、非核化を短期間で実行しようとすれば、北朝鮮の軍部が反発し金委員長の指導力が不安定になることを指摘した。それゆえ、経済開発が成功し国内が安定した後でいいとしたわけだ。この中国の意向が、米朝の核交渉遅延につながっているようだ。
 
習国家主席は9月9日の北朝鮮建国記念日に訪朝し、4回目の首脳会談を行うという。中朝首脳が、米朝の「完全非核化交渉」を遅らせ、日朝首脳会談の見通しを不透明にしている。
 
習国家主席は、9月9日に行われる北朝鮮の建国70周年記念式典に出席し、中朝の関係回復を世界に示すという。習国家主席が訪朝するのは初めてで、緊密な中朝関係を国際社会に誇示すると同時に、北朝鮮国内の反体制勢力を抑えるため、金委員長への全面支持を印象付ける。
 
マイク・ポンペオ米国務長官と河野太郎外相は8月4日、シンガポールで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムで、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相との会談を求めたが、短時間の立ち話で終わった。

北朝鮮はこれを「会談」と認めなかった。金委員長が、李外相が日米外相と会談するのを認めなかったからだ。北朝鮮では、金委員長の許可なしに、政府高官同士が会談することはできない。
 
北朝鮮の労働新聞(電子版)は8月6日、完全な非核化を実現するまで制裁を緩和しないという米政府と同議会の姿勢を激しく批判する論評を報じた。ただし、ドナルド・トランプ米大統領を批判するのは避けた。

これは、米朝首脳会談の否定、さらには金委員長批判につながるからだ。北朝鮮は、指導者無謬説を前提にしているので、その業績は誰も否定できない。

「日本からの経済協力を急ぐ必要はない」

北朝鮮が非核化への姿勢を変化させ、米政府を非難し始めたことについて、関係者は「中朝首脳会談が北朝鮮を変えた。ホワイトハウスは、首脳会談の内容を入手している」と明らかにした。

中朝首脳会談で、習国家主席が「10年間で1000億ドル(約11兆円)の支援」を約束。必要なら、支援期間を20年間まで延ばすという。

毎年1兆円以上に上るこの支援は、単なる資金援助にとどまらず、鉱山
発や企業による投資などを含むとみられる。中国は世界各地で展開する地下資源確保戦略を、北朝鮮でも展開する。
 
だが、国連制裁決議が存続する限り、中国が全面的かつ大規模な支援を行うのは不可能だ。

順調に支援が実行されるとは思えない。このため、石油の海上「瀬取り」など制裁の「抜け穴」を狙った支援が実行されている。中朝首脳会談後に活発化した「瀬取り」への追加制裁に中国が反対しているのはこのためだ。瀬取りの活発化は明らかに、中国政府の意向を反映した「石油支援」なのだ。

北朝鮮は、この巨額支援があれば、日本から経済協力資金を引き出す交渉を急ぐ必要はない、と考えるだろう。

すでに韓国との南北関係の動きも停滞している。習国家主席の約束が、日朝と南北関係に影響を及ぼしているわけだ。金委員長は、昨年の春頃までは拉致問題や日朝関係改善に取り組む姿勢を見せていたが、その思いは消失したようだ。

「トランプ再選はない」で一致

習国家主席は、米中貿易戦争に関連して「トランプ大統領が2期目を務めるのは難しいだろう」との見通しで、金委員長と意見が一致したという。

中朝首脳は、トランプ大統領の再選を助けないことで合意した模様だ。米中貿易戦争で、北朝鮮は中国に全面協力し、トランプ大統領を困らせる外交を進める。

習国家主席はまた、9月の国連総会で演説し、国連制裁を解除するよう訴えるべきだと金委員長にアドバイスした。

そうすれば、制裁緩和の雰囲気が生まれ、中国も支援を推進しやすくなると伝えた。だが、国連総会に出席すれば2回目の米朝首脳会談に応じざるをえなくなる。金委員長はなお検討している模様だ。

「拉致問題の進展は期待薄」

日本の拉致問題について、習国家主席は金委員長に「拉致は日朝2国間の懸案で、米朝会談の議題ではない」と忠告した。

このため北朝鮮は、米朝首脳会談の議題を調整したポンペオ国務長官に「拉致問題は議題にしない」との立場を示し、譲らなかったという。このため、米朝首脳会談で「拉致問題は話し合わなかった」というのが北朝鮮の公式の立場だ。

こうした平壌の空気と金委員長の意向を受け、北朝鮮の高官は誰も「拉致問題解決」「日朝首脳会談」を進言できない状態にある。

金委員長に直言できるのは、妹の与正(ヨジョン)氏と秘書室長の金昌善氏だけという。北朝鮮の高官は、秘書室を通してしか金委員長に報告・進言できず、面会もかなわないという。平壌のシステムも、金正日時代とは様変わりし、秘書室が全権を掌握している。

習氏「朝鮮は、何度も中国に裏切られた歴史を忘れないだろう」

首脳会談での中朝首脳の発言は、にわかには信じがたい驚愕の内容だ。しかし、最近の北朝鮮の外交姿勢をみると、変化に至った背景と米中朝外交の「流れの変化」を十分に理解できる。

トランプ大統領は、中朝が最初の首脳会談を行った直後に「中朝首脳会談後に、北朝鮮は姿勢を変えた」「完全な非核化に期限は設けない」「習近平国家主席は世界的なポーカーの名手」と発言した。

また、ポンペオ国務長官も「交渉は長期化する」と、見通しを変えた。米国首脳陣による一連の発言は、中朝首脳会談の議事内容をホワイトハウスが入手した事実を、強く示唆している。あるいは、中国側が意図的にリークしたのかもしれない。

習国家主席は、巨額の経済支援を約束した上で、「北朝鮮は中国の属国になることを心配するだろうが、そうしたことはしない。中朝の歴史関係を十分に理解している」と語ったという。

「北朝鮮が中国に反発するのも理解している。北朝鮮は、何度も中国に裏切られた歴史を忘れないだろう」とも述べたという。

そのうえで、「米朝の関係を改善してもかまわない。中国に隷属することなく独立を維持するために米朝関係を重要視する、という朝鮮の戦略を十分に理解している」との認識を示した。習国家主席が示したこの理解に、金委員長と幹部たちは心を動かされたという。

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