「相手にするのはアフリカだけ」

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中国「一帯一路」終焉が見えてきた。相手にするのはアフリカだけ

大国の焦り。中国が一方的に「東シナ海ガス田」開発を続けるワケ

一時は世界中がその経済的勢いにひれ伏し、参加や協力を表明した中国の「一帯一路」構想ですが、ここに来て黄信号が灯っているようです。

台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、同構想に乗り気だったEUの消極化を受けた中国がアフリカに頼らざるを得ない現状を紹介。さらに中国内で湧き上がる「習近平批判」を取り上げ、習氏に対する中国共産党長老たちの反乱の可能性を指摘しています。

【中国】アフリカしか相手にしなくなった一帯一路

● 西アフリカ初、中国がセネガルの「一帯一路」協力文書調印を歓迎─中国メディア

習近平の「一帯一路」計画はまだ健在のようで、相変わらずのバラマキ外交でアフリカ諸国の支持を得ているようです。以下、習近平の歯の浮くような文言が並んでいる記事を一部引用しましょう。

われわれはセネガルが西アフリカ諸国で初めて中国との「一帯一路」協力文書に調印することを歓迎する。これを契機に両国協力の水準を全面的に高めたい。中国側はセネガル側との協力を拡大・深化し、セネガルの自主的発展能力を強化したい。

人的・文化的交流を緊密化し、民心の通じ合いを促進する必要がある。法執行・安全協力を強化する必要がある。

中国側はセネガル側のテロ対策、平和維持、安定維持能力の強化を支持する。中国側はセネガル側が国際・地域問題で一層の役割を発揮することを支持する。セネガル側とアフリカの平和と安全、国連、気候変動など重大な国際・地域問題で意思疎通と調整を強化し、アフリカ及び途上国の共通利益を守りたい。

セネガル側も、中国からかなりメリットある話を持ち込まれたのでしょう。以下のようなことを言わされています。

サル大統領は「セネガルは『一つの中国』政策を揺るぎなく遂行し、両国の包括的・戦略的協力パートナーシップの深化に尽力する。インフラ整備、水利、工業化、農産物加工、観光、文化、スポーツ分野で双方の交流や協力を強化したい。

セネガルは『一帯一路』イニシアティブを支持する。コネクティビティー強化に積極的に参加したい。中国と多国間問題で意思疎通や調整を緊密化し、より均衡ある公正かつ包摂的なグローバル・ガバナンス体制の構築に尽力し、共に多国間主義を守り、保護貿易主義に反対したい」と表明した。

中国は、資金や技術などの援助をすることを条件に、こうして地道に「一帯一路」の参加国を増やしていますが、これまでもこのメルマガで述べてきたように、国際的にはその実態を疑問視する声もだんだんと上がってきています。

中国メディアが習近平氏に反旗?

● 中国高速鉄道、国内では建設ラッシュも海外では頓挫ラッシュ

技術・規格・装備が一体となった本格的な中国高速鉄道輸出の第一弾として注目された、インドネシアのジャカルタ─バンドン鉄道は、用地取得の問題により16年の着工式以降全面的な施工に至っておらず、開通のめどが立っていない。コメとの交換と言われるタイ高速鉄道プロジェクトは、タイ政局の混乱で再三遅延している。

そして、この状況は「一帯一路」沿線にとどまらず、米国西部のロサンゼルス─ラスベガス高速鉄道プロジェクトがご破算となり、メキシコからも「不明瞭、非合法、不透明」として高速鉄道協力を破棄された。

トルコのプロジェクトは開通にこぎつけたが、大部分の装備や技術は欧州の規格が採用されている。ベネズエラのプロジェクトは、現地の経済情勢悪化に伴い建設現場が廃墟と化してしまった。

そして、先週のメルマガで紹介したように、今、中国の皇帝として自身を君臨させた習近平に対して、国内からも反発が出ているのではないかという記事も登場しました。

習近平が周囲を切り捨てて権力を強化すればするほど、人民ばかりでなく中国共産党内での不満はたまり、いつかは習近平時代も終わるだろうとは思っていましたが、それもそろそろかもしれません。

今の段階では、中国内での習近平への批判はゴシップ扱いで、信用性は低いものですが、こうした噂が出てくること自体、そろそろ習近平も限界だということを意味しているのではないでしょうか。

例えば7月9日、党機関紙『人民日報』のトップページに「習近平」の文字を含んだ見出しが一切出なくなった。加えて7月15日にも同様の現象が観察された。1週間のうち何度も習近平に一切言及しないトップ紙面が組まれるのは政権成立以来はじめてのことだ。

また、7月11日には国営通信社・新華社のウェブ版が『華国鋒は誤りを認めた』という過去の歴史記事を突如として再配信し、中国のネット上で盛んに転載された。

華国鋒は1976年に党主席に就任した後、毛沢東時代の文化大革命式の政治を改めることなく自身の個人崇拝キャンペーンを推進したが政治力が足りずに失敗。

経済の失策もあって、トウ小平から批判を受けて失脚した人物だ。新華社の記事は間もなく削除されたが、『文革風』の政治姿勢を見せる習近平を遠回しに当てこする目的があったのは明らかだった。

また、フランスの『RFI』中国語版や香港の諸報道によると、江沢民・胡錦濤・朱鎔基ら党の大物OBグループが近年の習近平への個人崇拝に不満をつのらせ、政治局拡大会議を開いて習近平を失脚状態に追い込むことを画策する動きがあるという。

これはかつての華国鋒が追い落とされたプロセスを参考にしたものだとされる。

● 習近平氏にメディアも反乱? 墨汁事件に端を発する動きも

不評だった中国のアフリカ進出

今、中国はアメリカとの貿易戦争の只中にあり、経済成長も頭打ち状態です。トランプ大統領のやり方に不満を表明すべく、大豆のキャラクターを登場させてアメリカの農家に「トランプの政策はあなたたちのマイナスになる」と直訴するような動画の配信もしているそうです。

● アングル:大豆アニメで中国が米農家に直訴、貿易戦争で新戦略

米中関係は、トランプ大統領によって予想外の展開となり、習近平は戸惑いを隠せない感じすらあります。やることが裏目に出てばかりの習近平に対して、もしかしたら今後、中国共産党内の長老たちの反乱があるかもしれません。

自身を中国の生涯皇帝として君臨させた習近平の、今後の動向から目が話せません。

東西の文物交流は石器時代から始まっていたことは、考古学の出土品から実証されています。

海のシルクロードと陸のシルクロードで交易されていたのは、はじめは東からシルク、陶磁器、香辛料など貴族の嗜好品であり、その後、庶民の必需品へと時代によって変化していきました。

ここで最も重要なことは、かつての「文明の運び屋」であった交易の主役たちは、農耕民族の中国人ではなく遊牧民族たちだったということです。

しかし今、習近平が掲げている「一帯一路」は、ヒトもモノもカネもすべて中国人が取り仕切ろうというわけです。ユーラシア大陸からアフリカまでの世界各地に、「パックスシニカ」という大風呂敷を広げており、その構想があまりに壮大すぎて、蜃気楼とさえ言われるほどです。

中華人民共和国政府のアフリカ進出は、毛沢東の時代から始まっていました。それは、「世界革命、人類解放」という社会革命をめざす世界戦略としてでした。

対アフリカ戦略としては、鉄道建設をはじめ、西洋各国の植民地に対するゲリラ支援が主で、ことに文革中は中国は国際的に孤立していたこともあり、積極的にアフリカの独立を支援していました。

また、日本からのODAをアフリカ支援に転用したり、アフリカ各地の留学生を中国各地に受け入れるなどして、黒人留学生を世界革命の前衛として育てていくことを国策としていました。その流れで、改革解放後の上海では黒人と結婚することがブームとなりました。

さらに、刑務所から溢れた中国人の死刑囚や無期懲役の囚人たちをアフリカに送り込み、労働力として提供していたこともありました。

中国とアフリカの間には、そんな歴史的な経緯がありました。「一帯一路」は世界各地で挫折しており、最初は乗り気だったEUも最近では消極的になってきたため、アフリカに活路を見出そうというわけです。

しかし、中国のアフリカ進出はその多くが不評でした。というのも、現地の雇用を産まずに大量の中国人を本国から連れてくるうえに、汚職や環境破壊をはじめ、さまざまな問題を持ち込むからです。

海外への覇権主義路線の修正も

昂進し続けている米中の貿易戦争は、「核心的利益」と「普遍的利益」の対立でしょう。これに対して日本がどう対応するのかも注目すべき点ですが、私は米中の対立はできるだけ長引いたほうがいいと考えています。

戦後史を見る限り、東西冷戦後、名実ともにパックスアメリカーナの時代からオバマの時代までアメリカは世界を牛耳ってきましたが、アジアにおいては、アメリカは後退しつつあります。その空白を中国が埋めようというわけです。

しかし、米中が貿易戦争に突入した後のインドや太平洋地域の変化を見ると、日米印の同盟関係を強化するとともに、台湾と中国にも大きな変化がありました。

アメリカのイージス駆逐艦二隻が台湾を巡航することも実現しました。米中の対立は、習近平の権力闘争にも変化をもたらしました。

米中貿易戦争が昂進すると、中国経済が後退するどころか崩壊してしまう可能性もあるため、中国国内でも、海外への覇権主義路線を修正せざるをえないのではないかと思います。

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