「本社は日本?」

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ベトナムで快進撃の中国企業が「本社は日本」を謳う理由

ハノイを走るバイクの圧倒的多数がホンダやヤマハなどの日本ブランド 

世界を席巻するメードインチャイナが
なりを潜めるベトナム・ハノイ
 
今や世界の市場を席巻する「メードインチャイナ」。価格の安さはもとより、豊富な種類に競争力あるモデル、そしてすばやい生産体制でその存在感がますます高まっている。
 
先進国はもとより、新興国でも中国ブランドは人気だ。例えば、ロンドンのカムデンマーケットでは中国製の衣類がたくさん売られていた。数年前に訪れたバングラデシュの首都ダッカでも、生活雑貨やアクセサリー、衣類や玩具、食品など、人々の生活のあらゆるシーンに中国製品が食い込んでいた。

「メードインチャイナ」の存在感の高まりは疑うべくもなかったが、興味深いことに、ベトナムの首都ハノイでは「メードインチャイナ」はなりを潜めていた。
 
筆者はハノイの旧市街を訪れたが、ここで中国製品の看板を目にすることはほとんどなかった。短い滞在期間ではあったが、目撃したのは中国のスマホブランド「OPPO」の看板だけだった。

ハノイにはチャイナタウンもない

地元資本の大型スーパーマーケット「Vin Mart」の家電売り場で、店員は「チャイナ、ノー」と言い切った。

洗濯機はパナソニック、東芝で、白物家電にハイアールはなかった。液晶はLG、ソニー、ドライヤーはフィリップスと、確かに中国家電はゼロだった。

むしろ、白物家電では「メードインベトナム」が育ってきており、街中ではホアファット鉄鋼グループ傘下の「Funiki」ブランドの冷蔵庫、エアコン、洗濯機が目についた。
 
大型の卸売市場にも足を運んだが、必ずしも中国ブランドの“独り勝ち”というわけではなかった。帽子やバッグは中国製品だが、靴や衣類はベトナム製、サンダルはタイ製など、生産地の多極化が見られた。

ドンスアン市場で扱われる帽子は中国製が多い 

そして何より決定的な現象は、クルマとバイクである。道路を走行する無数のバイクに中国ブランドはほとんど見られない。圧倒的多数が、ホンダやヤマハなどの日本ブランドだ。クルマも同様にトヨタ、ホンダ、マツダが好んで乗られていた。
 
これには、ハノイを訪れた中国人旅行者もあぜんとしているようだ。中国語のブログにこんなコメントを見つけた。

「中国人はメードインチャイナが世界中で強さを発揮していると信じているようだが、現実は違う。外国ではたいしたことないことを思い知らされた」

ハノイにはチャイナタウンもない

さて、チャイナタウンといえば、たいていどの国の大都市にもある中国人コミュニティだ。ホーチミン市には、18世紀後半にできたチョロンといわれる中華街があり、50万人の中国人が住んでいるといわれている。

だが、ハノイにはそうしたスポットがない。そういう意味では「ハノイは珍しい都市」(かつてハノイに駐在していた日本人ジャーナリスト)なのだそうだ。

チャイナタウンがないどころか、あってもいいはずの中国の飲食チェーンもない。最近は海外に進出・出店する中国の飲食チェーンも少なくなく、日本では「小肥羊」や「海底撈」のような火鍋チェーンが店舗を増やしているが、ハノイにはこうした人気飲食チェーンもない。

表立って「中華料理」の看板を掲げて営業する店すら目にすることはなかった。

中国南部に隣接するベトナムは、かつて中国王朝の支配を受けた国でもあった。ある時期までは漢字が使用されており、中国固有の孔子廟もいまだに存在する。

中華文化圏に属するため「中国資本にとってやりやすいはず」と思いきや、実態は決してそうではなかった。中国の侵攻を繰り返し受けたその歴史から、“嫌中”はベトナム市場の奥深くまでしみ込んでいるのだ。
 
中国資本にとってベトナムは、決して商売向きの土地柄ではないことは数字でも明らかだ。在ベトナム日本大使館とベトナム外国投資庁の資料によると、国別に見た2017年時点の累積投資金額は、1位韓国(576.6億ドル)、2位日本(494.6億ドル)、3位シンガポール(422.3億ドル)、4位台湾(309.1億ドル)、5位英領バージン諸島(225.8億ドル)であり、トップ5に中国はない。6位香港(177.6億ドル)、7位マレーシア(121.9億ドル)に続き、ようやく8位に中国(120.8億ドル)が顔を見せるのである。
 
さすがの中国商務部(日本の経済産業省に相当)も、ベトナムを“難攻不落の市場”と受け止めているようだ。商務部は中国のベトナム投資を阻む理由を、「行政コストや土地・労働コストの上昇」としながらも、「ベトナム投資を行う中国人の身元は複雑で資質に問題があり、ベトナムの法律法規に対する理解は低く、現地化の意識に欠ける点にある」と指摘している。

ベトナム人が中国人を受け入れられないのは、歴史観のみならず、“中国流の商売のやり方”にも原因がありそうだ。

そうした中で商務部は、中国の対越進出企業に対して、「日常の発言や行動に注意し、中国人に対する良好なイメージづくりを心掛けよ」とする異例の呼びかけを行っている。

“本社日本”の中国企業が快進撃

こうした逆境のベトナム市場で、快進撃を果たす“中国資本”があった。

「MINISOU」(企業名:株式会社名創優品産業)という名の日用雑貨チェーンだ。ハノイの旧市街では3店舗を見かけたが、ハノイやホーチミンを中心にベトナム国内で40店舗を展開し、今年中には50店舗に増えるともいわれている。

同社は、創業者である中国人の葉国富氏が、日本の小売業態から着想を得た企業だといわれている。同社は日本に本社を置くものの、実際の経営は中国で行われていることは、簡素な日本語版ホームページを見ても明らか。

日本のみならず、中国でも「ユニクロや無印良品、ダイソーの模倣では」という批判があり、筆者も昨夏上海で同様の違和感を抱いたものだった。
 
ハノイで見かけた店舗のカウンター奥には、「ジャパニーズ・デザイナーズブランド」とあるが、実情を知らないベトナム人が見れば、この店は純粋に日本資本が経営する店舗だと信じて疑わないだろう。

中国南部に隣接するベトナムは、かつて中国王朝の支配を受けた国でもあった。ある時期までは漢字が使用されており、中国固有の孔子廟もいまだに存在する。中華文化圏に属するため「中国資本にとってやりやすいはず」と思いきや、実態は決してそうではなかった。中国の侵攻を繰り返し受けたその歴史から、“嫌中”はベトナム市場の奥深くまでしみ込んでいるのだ。
 
中国資本にとってベトナムは、決して商売向きの土地柄ではないことは数字でも明らかだ。在ベトナム日本大使館とベトナム外国投資庁の資料によると、国別に見た2017年時点の累積投資金額は、1位韓国(576.6億ドル)、2位日本(494.6億ドル)、3位シンガポール(422.3億ドル)、4位台湾(309.1億ドル)、5位英領バージン諸島(225.8億ドル)であり、トップ5に中国はない。6位香港(177.6億ドル)、7位マレーシア(121.9億ドル)に続き、ようやく8位に中国(120.8億ドル)が顔を見せるのである。
 
さすがの中国商務部(日本の経済産業省に相当)も、ベトナムを“難攻不落の市場”と受け止めているようだ。商務部は中国のベトナム投資を阻む理由を、「行政コストや土地・労働コストの上昇」としながらも、「ベトナム投資を行う中国人の身元は複雑で資質に問題があり、ベトナムの法律法規に対する理解は低く、現地化の意識に欠ける点にある」と指摘している。

ベトナム人が中国人を受け入れられないのは、歴史観のみならず、“中国流の商売のやり方”にも原因がありそうだ。

そうした中で商務部は、中国の対越進出企業に対して、「日常の発言や行動に注意し、中国人に対する良好なイメージづくりを心掛けよ」とする異例の呼びかけを行っている。

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