「情報機関の暴走説」

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シア元スパイの相次ぐ暗殺は、情報機関の暴走説

イギリスで起きたロシア人元スパイの暗殺未遂事件は誰の仕業か Peter Nicholls-REUTERS

<プーチンは黒幕ではなく、配下のスパイ組織をコントロールできないだけ?>

「裏切り者は死ぬ」と男は言った。「友人や戦友を裏切った奴は、代償に何を得ても(イエスを売ったユダのように)銀貨30枚によって命を落とす」

映画『ゴッドファーザー』に登場するイタリアマフィアのボスのせりふではない。2010年当時、ロシアの首相だったウラジーミル・プーチンがテレビ番組で発した言葉だ。

自分に歯向かう者には容赦なく刺客を送る――プーチンにはそんなイメージが付きまとう。それだけに今年3月、ロシア人元スパイのセルゲイ・スクリパリがイギリス南部の町で襲撃された際に英メディアがロシアの仕業だと非難しても、さほど意外性はなかった。

プーチン大統領が国外在住のロシア人の暗殺を命じていたとすれば言語道断だ。しかし、それ以上に恐ろしいシナリオも考えられる。スクリパリの暗殺未遂事件がロシアの情報機関の独断による犯行だったという可能性だ。
プーチン政権に批判的だったアレクサンドル・リトビネンコが06年にロンドンで毒殺された事件や、野党指導者ボリス・ネムツォフが15年にモスクワで射殺された事件などプーチンは多くの反体制派の粛清に関与しているとされる。

だが、プーチンが黒幕として全てを操っているわけではない可能性もある。もしも彼が平凡な独裁者にすぎず、配下の残忍なスパイ集団をコントロールできていないとしたら......?

スクリパリ襲撃事件の直後、ロシア当局は関与を否定し、イギリスによる反ロシアキャンペーンの一環だと猛反発した。実際、この事件はリトビネンコのときとは違って公衆の面前で実行され、犯行の痕跡も残されている。
組織間の対立が事件の引き金か

リトビネンコはお茶に混入された放射性物質ポロニウム210を摂取して死亡した。この物質は体内で急速に崩壊するため検出が困難で、それ故に冷戦期には暗殺の手段としてKGBに重宝された。

一方、スクリパリの事件では警察は事件後まもなく神経剤による犯行と特定。この神経剤は時間がたっても消えないため、最初に現場に駆け付けた警官も重大な被害を受けた。

猛毒の神経剤を入手できるのは国家機関だけだという見方もあるが、犯行をプーチンが指示したかどうかは別問題だ。ある元KGB職員は「われわれの仲間ならあれほど手際が悪いはずがない。ロシアの犯行に見せ掛けようとする挑発行為だ」と語る。

かつての治安組織が海外活動を活発化

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