2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
「人民元」
人民元を世界基軸通貨へ。中国のばら撒き政策がアフリカでじわじわと効いてきた
金準備を積み増す中国。アフリカ諸国が外貨準備に人民元を採用へ
後進国を味方に引き込む中国
人民元を世界基軸通貨にしたい中国が、アフリカに橋頭堡(きょうとうほ。戦闘を有利に運ぶための前進拠点)を築いているようです。海外報道を翻訳しながら、ポイントを解説します。
5月29日、30日にジンバブエで開催された会議で、アフリカ諸国14カ国の中央銀行高官や政府高官17人が出席し、人民元を外貨準備にすることについて議論した。
東南アフリカ地域マクロ経済金融管理機関(MEFMI)の報道担当官は、会議出席者は中央銀行副総裁や事務次官、さらにアフリカ開発銀行の高官であるとのこと。
報道担当者によると、今回の議題は“外貨準備管理の傾向”である。この報道担当者の主旨は以下の通りである。
同地域のほとんどの国々の外貨準備は米ドルであり、その構成比率は世界経済の動き(中国やインド経済の大きな伸び)と同調していない。
多くの国々は中国から借款を受け、その返済には中国人民元で返済しなければならない。
それゆえに、この地域では、人民元が共通通貨となっているのだ。
IMFのSDR通貨バスケットに人民元を含めたことは非常に重要で、IMFが公式外貨準備通貨として認定したことになる。
現在では、全世界で130カ国以上において中国が最大の貿易相手である。重要なことは、このような国際経済の新たな変化から、どのような利益を勝ち取るかということである。
過去5年間を見ても、欧米からの貿易や投資は冷え込んでおり、中国からの投資機会を逃さないことが重要である。
報道にある通り中国は、人民元借款、人民元建て原油取引、人民元建て金取引など、あらゆる分野で紙切れに印刷したペーパーマネーの人民元をばら撒いています。
世界基軸通貨を座を勝ち取るには、金準備を増やす必要がある
金準備を増やして世界基軸通貨へ
世界基軸通貨から、究極的には世界覇権通貨を狙っている中国とロシア。その歴史的変化を見るには、良いチャートを見つけましたので紹介します。
両国が目的を達成するには、自国の金準備を増やすことが最低条件なのです。早速、以下のグラフを見てください。
中国とロシアの金準備の歴史的変化(2007年から2017年の増加トン数)
中国人民銀行は600トンから3倍の1843トンへ、ロシア中央銀行は450トンから4倍の1839トンへと大きく増やしています。
ただし、中国は、いままで金準備トン数の買い増しを発表していましたが、IMFのバスケット通貨に組み込まれて以降は発表していません。しかし、舞台裏では積極的な買い増しをしているのは間違いないでしょう。
現在の覇権通貨国である米国では、金準備はまったく増えていませんし、第三者機関による実地棚卸しをまったくしていないことから、かなりの数を貸し出しをしているのではないか?と疑われている始末です。
中央銀行金準備額(米ドル)/人口比率
左から中国、EU圏、日本、ロシア、スイス、英国、米国、カナダです。
中国は、人口1人当たり56ドルの中央銀行金準備しか保有していません。ロシアでも537ドルしか保有していません。
現在の世界覇権通貨国・米国並みの1051ドル分まで増やすには、中国は約19倍に増やす必要があります。ロシアの場合は2倍に増やさねばなりません。
つまりどう考えても、中国とロシアはこれまで以上に金準備を積み増すことでしょう。
さらに買い増しが必要な中国。世界の金準備は増加の一途をたどっている
ロシアは54.5%の高い率(金準備担保比率)ですが、注目の中国は6%しかありません。つまり、さらに増やす必要があります。
日本のデータは無視すべきでしょう。というのは、戦後、日本の金準備について、誰も見たことが無いからです。
2008年以降、公的部門(中央銀行)の金準備は増加の一途をたどっています。そして現在も、その買い増しの勢いは変化していません。
不思議なことは、この大きな需要増加に対して、金価格はずっと横這いなのです。