「東京五輪が「経済災害」になる日」

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日本の地価崩壊はもう始まっている。東京五輪が「経済災害」になる日

東京五輪まであと2年。アベノミクスで始まった資産バブルは、ヘッジファンドから見れば破裂させるにいい頃合なのでしょう。五輪が経済災害になる可能性があります。

国民のお荷物になった東京五輪。湾岸エリアから異変が起きている
東京の不動産バブル崩壊は、もはや時間の問題

2020年・東京オリンピックまで残すところ、あと2年ほど。安倍政権の発足とともに始まった資産バブルは、ヘッドファンドから見れば、破裂させるにいい頃合なのでしょう。

「東京の不動価格は、そろそろピーク?」、あるいは「まだピークには達していない!?」…。

日銀の量的金融緩和政策の先行き不透明を反映して、「東京の不動産バブル破裂は、オリンピックの前?」、それとも「ピークアウトはオリンピックが終わった後?」と議論が分かれています。

金融機関と直接的につながっている不動産関連のシンクタンクの予想は、それぞれの思惑に素直に反応しているようです。

いずれにしても、「2020年・東京オリンピックの前後に、不動産価格がピークを打った後、ひたすら下落していく」という見方に反対する専門家を探すのは、砂浜に落としたコンタクトレンズを探すほど難しいでしょう。

2017年6月6日付のブルームバーグの「東京・銀座の土地価格に警告シグナルが点滅している」と題した記事で、地価は、かなりの水準になったことを示している。地価は、今後下がるだろうが、私には、それがいつ始まるのか正確に言うことができない。

ただ言えることは、間違いなく、不動産物件は供給過剰状態にあるということだ と、森トラスト・アセットマネジメントの堀野郷社長のコメントを掲載しています。

また、2017年6月7日のジャパン・タイムズの「銀座の地価はバブル時代の最高値を更新し、修正を余儀なくされる」との記事では、私たち不動産業者の共通の見方は、銀座の過去の価格パターンに基づと、2018年から徐々に不動産の売却が始まって、ピーク時から50%ほど下落する可能性がある。

とにかく、地価が下がることだけは間違いないと、銀座で創業100年を迎えた不動産会社「小寺」の児玉裕社長の見通しを引用してバブルに警戒感を示しています。

バブル崩壊で「3分の1」になった銀座・鳩居堂本店前の地価

海外メディアが注目しているように、日本の不動産バブルのバロメーターは、東京銀座5丁目の銀座・鳩居堂本店前の地価の推移です。

ちょうど1年前の2016年7月、鳩居堂本店前の地価は、1平米当たり前年比18.7%増の3200万円まで上昇しました。

バブル時のピークは1992年の3650万円でしたから、3200万円からでは過去最高値まで、まだ450万円のゆとりがあると不動産アナリストは様子見を決め込んでいました。

しかし、2017年7月3日の国税庁の発表によって、1年も経たないうちにバブル時代の最高値を抜いて、1平米当た4032万円の過去最高の高値を付けたことが明らかとなったのです。

1992年の3650万円は、バブル崩壊後5年あまりで、およそ3分の1以下の
1136万円まで暴落しました。

このときの日本経済の基盤は、土地本位制に立脚していたため、橋本内閣で突然、総量領制が発表されると、雪崩が押し寄せるように、土地、株式、絵画などの美術品に至るまでなぎ倒されていったのです。

「小寺」の児玉裕社長は、過去の価格推移のパターンから、「50%は下落する。それは確実に起こることだ」と述べていますが、今度の資産バブル崩壊は、政府と日銀がタッグを組んで演出した官製相場で起こることなので、状況は、さらに悪くなること必至です。

現実になりそうな湾岸エリアの「2018年問題」

2016年前半から、東京の湾岸エリアで開業されている読者や、タワーマンションの居住者の方から、2020年・東京オリンピックに向けての地価がどうなるのか感想を求められました。

不動産の高騰を当て込んだ外国人投資家が、「2018年問題」によって投資用に購入した物件を投げ売りするのではないか、という心配から、私に感想を求めてきたのです。

お台場は気分転換にたまに行く場所でもあったのですが、問題の勝どきから晴海、豊洲にかけてのエリアは交通の便が良くないので、行く機会がほとんどありませんでした。

そこで、半日潰して、このエリアを車でくまなく回ったのです。

まず最初に誰でも気が付くことは、整備された広い道路に人が歩いていないことです。夕暮れどきになっても、林立するタワーマンションの窓には明かりが灯らないのです。

中国人の富裕層が、湾岸のタワーマンションを投資用に買い漁っていたというのは本当だったのです。

東京の不動産市場に訪れる「2018年問題」とは、このとき私が勝手に名付けたのですが、つまり、東京の不動産の高値売り抜けが始まる最初の年であると位置づけたのです。

中国人富裕層の行動パターン

湾岸エリアのタワーマンションを大量に買い込んでいる中国人富裕層は、2008年の北京オリンピックのずっと前に北京の不動産を買い漁り、北京五輪の1年前にすべてを高値で売り抜けて資産を築いた中国人たちです。

ですから、東京オリンピックによる地価高騰を当て込んだ今度も、2013年あたりから湾岸の物件を仕込んでいるので、同じように2018~2019年の間に手持ちの物件を売り払おうとするでしょう。

不動産を売る場合、5年以内の短期譲渡所得の場合は売却益の35%に課税されますが、5年以上の長期譲渡所得の場合は、売却益21%に税金が減額されるので、もし、長期ローンを組んで2020年までに期待していたより不動産価格が上がらなかった場合は、いわゆる逆ザヤとなって損失が発生してしまうのです。

今年、マンションを購入しても、東京五輪がやってくるまでに売却した場合、キャピタル・ゲインの35%に課税されてしまいます。

なぜ、中国人の富裕層が、「東京五輪までに売却を考える」のかというと、おそらく、2013年頃、都内の新築・中古のマンションを爆買いしていた彼らが、5年間の所有期間が過ぎて売却益への課税が21%に減額される2018年から、所有している物件をいっせいに売りに出すことが予想されているからです

迫る2018年の悲劇「不動産バブル大破裂」と東京オリンピック後の無残

2016年の暮れに、再びこのエリアを訪れたとき、「2018年問題」が現実のものとなるであろうことを確信して、中国の資産バブル崩壊と関連づけて、日本の不動産バブル崩壊のプロセスについてまとめました(※当メルマガ第184号パート1、パート2「買ってはいけない!迫る住宅バブル破裂と東京五輪後の無残。

国民のお荷物か。東京五輪が「経済災害」になるとの声も

誘致決定で即座にタワマン爆買いが始まった

バブル崩壊後、「失われた20年」は、さらに「失われた30年」に延長されました。2020年のオリンピックの東京誘致は、長い閉塞状態から日本を再び飛躍させる起爆剤として期待されました。ただし、これは、政府と日銀の異次元の量的金融緩和が日本株を押し上げていた2013年時点のことです。

2012年12月、安倍政権が誕生して9ヵ月後、2020年夏季オリンピックとパラリンピックの開催都市を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会がブエノスアイレスで開かれ、56年ぶり東京が選ばれました。

日本が、アジアで2回目の開催となるはじめての国になった、この瞬間、日本の運命が決まったのかも知れません。
このときに、中国人富裕層による湾岸エリアのタワーマンションの爆買い
が始まったのです。

「国民のお荷物」になった東京五輪

あれから5年経った日本の現状はどうでしょう。

実質賃金は下がり続け、国際競争力は削がれ、一方的に国力が衰退していく中、永田町と霞が関は、目前に迫った高齢化社会を乗り越える気力さえ失いつつあります。

今や「希望の東京オリンピック」は、もっとも厄介な「国民のお荷物」となってしまったのです。

海外メディアは、早くも「2020年のオリンピック後の日本の運命」と題して、バブル崩壊に突き進む日本の似た現状を取り上げ出しています。
中でも、2018年4月25日付のジャパン・トゥデイは、「2020年のオリンピックは、東京の商工業に災害をもたらす」と、東京オリンピック特需の
光と影を描き出しています。

週刊金曜日が、2016年7月15日号の「呪われた東京五輪」に続いて、2018年4月20日号の「東京オリンピックなんて、大っ嫌い! 最後の一人になっても2020年開催に大反対する理由」と題して特集を組み、「反東京オリンピック宣言」を行いました。

2016年の特集では、東京オリンピックが腐敗の温床になることを警告したのに対して、今回の特集は、どちらかというと経済災害を警告したものになっています。

14ページにわたる今回の特集では、2020年の夏季オリンピックとパラリンピックが、東京や日本経済にもたらす経済被害に焦点を当てています。

ビックサイト、幕張メッセ、埼玉スーパーアリーナが同時に使用不可に

大型イベントの中止が大打撃に

たとえば、東京オリンピックでは、日本最大の国際展示場・東京ビッグサイトが各メディアの放送拠点として使われることになっていますが、その間、民間資本による多数の国際見本市は開催できなくなるので、展示会関連の事業者にとっては、まさに死活問題となります。

利害関係者は、大会主催者側に解決策を求めて声を挙げてはいるものの、大会側からは何のアイデアも提供されないままタイムリミットが迫っています。

大会側に解決策を求めている事業者団体による試算によれば、東京五輪の開催によって、東京ビッグサイトの下請工事業者を含む約8000社が総額2兆円の損失を被るとのこと。

まもなく、メディアセンターに改装するための工事に入るため、総展示面積の約70%を占める東展示ホールが、2019年4月から20ヵ月もの長い間、国際見本市や定期見本市に使用できなくなります。

日本展示会協会の公式発表によると、「東展示ホール以外の残りの部分も、2020年5月から9月にかけて完全に閉鎖される」とのこと。

去年770万人が訪れた有名な東京モーターショーに加えて、ロボティクス、電力、エレクトロニクス、ジュエリー、食品、コミックなどの展示会は開催されなくなるのです。

事業者団体は、「これほどの長期間、見本市や各種産業展の工事がストップしてしまうと、倒産に追い込まれる業者が出て来る」と憤懣やるかたない思いをぶちまけています。

彼らは、「小規模事業者が軽視されている」と、すでに都庁前で抗議行動を起こしていますが、小池都政からは具体的な返答がありません。

産業展や見本市のキャンセルは、そこを商談の場としている出展者の利益に影響するだけでなく、ディスプレイ工事会社、セキュリティー会社、保安会社などにとっては、まさに死活問題です。

展示会が長期間中断されると、最初に仕事を失うのは、長年のベテラン労働者で、彼らは早期退職を余儀なくされます。

国際イベントの「日本離れ」が始まる

これは、東京ビッグサイトに限ったことではなく、千葉の幕張メッセや埼玉スーパーアリーナでも同様です。

これらの多目的施設でも、2020年5月から9月にかけてスポーツイベントなどが盛大に催され、関東エリア最大規模の3つの展示施設がオリンピックのために完全に使用不可になってしまうのです。

もっとも、日本展示会協会が危惧していることは、関連事業者の倒産や失業問題だけではありません。

彼らが本当の危機々として受け止めていることは、東京ビッグサイトの閉鎖が長引いた場合、展示会の会場が、上海や他のアジアの都市に移ってしまう可能性があることです。

東京ビッグサイトの床面積は日本最大ではあっても、世界では68位と決してゆとりのある広さではありません。いったん海外に出ていってしまった見本市や産業展が、オリンピック後、果たして再び日本に戻って来る保証はないのです。

報道されない影で、「いったい何が起きているのだろうか」とジャパン・トゥデイは訝しがっているのです。

「まるで戦時中の軍部による国民への滅私奉公の強要、あるいは、戦後の占領軍による民間施設の接収と同じようなことが、今の日本で起こっている」と、東京五輪に反対している事業者団体の声を伝えています。

これは、決して軽視できることではなく、日本経済へボディーブローのように、じわりじわりと効いてくることになります。

五輪前から始まる日本の悲惨な未来。マスコミは「2020年問題」と煽る

日本政府は、民間資本が、スタジアムから電気自動車に至るまで考え得る限りに投資し、建設ラッシュや世界各国から流入する来場者から経済的恩恵を最大限に受けることを期待しています。

日銀は、いまだに明確にならない工事費の数倍もの経済効果があると見積もっています。それは、およそ30兆円です。

政府は、待ったなしの少子高齢化対策をなおざりにしたまま、「夢をもう一度」とばかり、東京オリンピックを再び景気浮揚の起爆剤になることを期待しています。

しかし、それは、本棚の奥に眠っていた古い教科書を取り出して、試験の前夜に引いた赤線の上をなぞりながら青い線を引くようなものです。
有識者たちは、オリンピックが終わった後、日本経済が次は何を頼りにして進むべきかを検討し始めています。

今回の東京オリンピックが、1964年の最初の東京オリンピックの時と大きく異なるのは、日本経済の命綱を用意しようとしていることです。問題は、その命綱がまだ見つからないことです。

致命傷になる「2020年問題」

こうした事態に、マスコミは「2020年問題」という名前を与えています。2020年から、日本は再び、取り返しのつかない致命的な間違いを犯しまうかもしれません。

日本の長期衰退トレンドの出口を模索する中で、起業家でありベンチャーキャピタリストでもある、ウィリアム・サイトー(William Saito:本名 齋藤 ウィリアム 浩幸)は、現在、複数の公的機関や企業などの民間組織、非営利団体の理事会に参加して、日本の将来について、精力的に提言を行っています。

彼は今まで、表面には出てきませんでしたが、サイバーセキュリティ、イノベーション、アントレプレナーシップ、人事戦略の専門家としての立場から、日本のあるべき国家戦略について政府に助言してきました。

また、大学で講義を行う傍ら、世界各地でアベノミクスについて講演も行ってきました。経済協力開発機構(OECD)やダヴォスの世界経済フォーラムなどの国際会議にも招かれて講演を行った経験を持っています。

その彼が、2020年・東京オリンピックに限っては、辛口のコメントを発しています。「日本は、オリンピック関連事業費を必要以上に過大に見積もっている」と。

つまり、ウィリアム・サイトー氏は、「それは国民の我慢の限界を超えたものになるだろう」と警告しているのです。彼の言葉どおり、誰もが「オリンピック後、それが日本経済が深刻な危機に陥る触媒になりうる」と予想しているということです。

東京オリンピックの準備が着々と進められる背後で、彼は、魑魅魍魎の蠢動を感知しているのです。

最近、彼は、2020年のオリンピックが、後々、日本経済に災いをもたらすと警告している悲観論者の仲間入りを果たしました。

彼が上梓した最新刊の本のタイトルー「日本の地価が3分の1に下落! 2020年・東京オリンピック後の危機」(“Japanese Land Prices Sink to a Third of Their Value! The Crisis That Comes After the 2020 Tokyo Olympics.”)は、悲痛な叫びを上げて日本経済崩壊を警告しています。

もっとも、フィナンシャルタイムズ(2017年11月16日)は、昨年のうちに、東京の地価下落の兆候を報じています(“Is Tokyo’s property market reaching its peak?”で検索のこと)

どんぶり勘定で進む東京五輪。日本はある日突然、ゲームオーバーに…

東京オリンピックの計画は、出だしからつまづきどおしです。新国立競技場の工費は、ある日突然、3000億円という、当初の見積もりの数倍にも跳ね上がりました。マスコミが、その異常さを騒ぎ立てると、予算はシュンと萎んで、最初の見積もりに近い線に落ち着いたのです。

公開コンペによって募集された東京オリンピックのロゴマークについても、盗作疑惑のため仕切り直しとなりました。

新国立競技場の国際コンペを勝ち取った女流建築家ザハ・ハディッド氏の案は、最終的には却下されたわけですが、その莫大な違約金を日本側から受け取るかというときに死去しました。

また、大会の組織委員会は、いまだにオリンピックの総事業費の公式見積を発表しておらず、その数字がいつになれば固まるのかさえ伝えていません。

こうした杜撰などんぶり勘定は、日本の政府債務残高が対GDP比で234%にまで膨れ上がった2015年半ばから始まったのです。

日本の負債はもうコントロール不能

元大蔵官僚で現在は法政大学経済学部の教授を務めている小黒一正氏は、「負債をコントロールできるタイムリミットは、すでに期限を切ってしまったかも知れない」と述べています。

現在の低金利が今後も続けば、政府は利払いが可能となりますが、将来金利が大幅に上昇すると、言うまでもなく、財政赤字は壊滅的になる可能性があります。

小黒教授は、「ある日、ゲームオーバーになるだろう」と率直です――

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