「日本に迫る次の大地震は?」

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国土のどこかが毎日揺れている怖い前兆

東日本大震災の爪痕が残り、南海トラフ地震への不安も募る災害大国・日本。この国において危惧される地震とその特徴を分析すると、恐ろしい現実が見える

東日本大震災とそれに伴う原発事故からの復興がいまだ終わらず、南海トラフ地震への不安も日に日に募る災害大国・日本。多くの日本人が、精緻な地震予測の実現を強く望んでいるはずだ。

はたして、地震は予測が可能なのか。前編では、日本において危惧される地震とその特徴を分析し、後編では日本の地震予測の歴史に触れながら、「地震予測ビジネス」の最新動向と展望を紹介する。

地震と戦ってきた日本人防災への関心はかつてなく高まる

人類は、古くから災害の発生を未然に知り、防止、もしくはコントロールするための研究を行ってきた。また、災害発生時と発生後にいかに被害を最小限に食い止めるかという研究も“学術的”に行なってきた。人類の歴史はまさに「災害との戦いの歴史」だった。
 
とりわけ日本は、世界でも類のない地震大国であり、人々の生活と地震を切り離して考えることはできない。近年では、阪神淡路大震災や東日本大震災で、多くの尊い命が奪われる悲劇が発生している。今後、南海トラフや首都圏直下などの大規模な地震が発生することも予想されている。
 
そんななか、防災に対する関心はかつてないほどに高まっている。国や自治体が中心となり、地震の予知、地震発生直後の対策、発生後の被害予測、それに対する対応策などに尽力し、さまざまな取り組みがなされているのだ。

民間企業の力も重要だ。「防災」という分野は、官民連携による取り組みが重要となる。というのも、民間企業が防災ビジネスを完全な独立採算事業として対応することは、責任の所在や損害賠償責任の観点から、非常にリスクが高いためだ。
 
地震の震源、発生予想日時、規模(震度、マグニチュードなど)を事前に知ることで、人命や財産に対する損害を大幅に減らすことは可能だ。世界有数の災害大国がゆえに、これまで培った減災の技術やノウハウなど、日本発の技術を世界に発信、輸出することも可能になってくるだろう。
 
まずは、そうした日本の「地震予測」によって分析された、近い将来わが国を襲うことが危惧されている地震と、日本における地震の特徴を見てみよう。

「南海トラフ」「関東直下型」もしも恐ろしい大地震に襲われたら…
 
近年発生が危惧されている地震として、真っ先に思い浮かぶのが「南海トラフ地震」だろう。気象庁によると「南海トラフ」というのは、駿河湾から紀伊半島の南側の海域および土佐湾を経て日向灘沖までの、フィリピン海プレートおよびユーラシアプレートが接する海底の溝状の地形を形成する区域のことを指す。
 
この南海トラフ沿いのプレート境界を震源とする大規模な地震が「南海トラフ地震」だ。南海トラフ地震は、おおむね100~150年周期で繰り返し発生していると言われるが、昭和東南海地震および昭和南海地震の発生から70年以上が経過しているため、危惧されているのだ。
 
もう1つ危惧されているのが「南関東直下型地震」である。この大地震は、関東地方の南部にある埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県で、歴史的に数十年に一度程度の周期で繰り返し発生しているものだ。
 
1855年(安政2年)に発生したマグニチュード6.9の「安政江戸地震」、1894年(明治27年)に発生したマグニチュード7.0の「明治東京地震」(M7.0)などが南関東直下型地震に該当するという。

安政江戸地震の震源は断定されていないらしい。直下型地震であるため震源が海底ではなく、緊急地震速報発信がS波(地震波の一種で、進行方向に垂直に振動する弾性波)到達の直後になってしまう可能性があるなどの懸念がある。
 
明治初期からこれまでの間に、日本で発生した主な地震を見てみよう。悲しいことに、これまでに日本で発生した地震により多くの死者・行方不明者が出ているのだ。たとえば、大正12年の関東大震災では死者・行方不明者が10万人、東日本大震災では1万人以上に及ぶのである。

日本で発生する地震の頻度、災害被害額、死者・行方不明者数を見ても、地震という自然現象は、人の日常生活、ひいては人生そのものに大きな影響を与えるものなのだ。

地震は日本のどこかでほぼ毎日発生しているという現実
 
では、1年間にどれくらいの頻度で地震が発生しているのかご存じだろうか。おそらく多くの人は、詳しく知らないだろう。
 
まず、どの都道府県で多くの地震が発生しているのか見てみよう。下図に、東日本大震災が発生した2011年における地震発生数が多かった都道府県の10位までをランキングしてみた。
 
この年は、福島県、茨城県、宮城県など太平洋に面した県が2000回以上にのぼる多くの地震を経験していることがわかる。大きなエリアで見ると、東北、北関東付近での発生が最も多い。震度1以上の地震の発生頻度を見ると、ほぼ1日に3~10回以上の地震がこれらの地域で発生している試算となる。震度5以上の地震発生は数回から20回強の頻度だ。とにかく地震が多い年なのである。

読者のなかには、歴史的な大地震が発生した年は、本震前の前震と本震後の余震が多発することから、地震の発生回数は多くて当たり前だと思う人も少なくないかもしれない。
 
では逆に、歴史的な大地震が発生していない年はどうであろうか。2010年に地震発生数が多かった都道府県を10位まで見てみよう。この年は、最も多かった福島県で最大年間175回の地震が発生している。2位の北海道も同程度の頻度であった。これらの地域で震度5以上の地震は一度も発生していないことがわかる。

また、トップ10に入る他の都道府県も発生頻度は100回台に留まり、同様に震度5以上の地震は発生していない。この年は、2日に1回の頻度で地震が発生している計算となる。

つまり、地震の多い年と少ない年、震度が大きい年と小さい年があることがわかる。震度の大きい年は、前震や余震などで地震が多い年になる傾向があり、震源を中心とした周辺の都道府県に多くの地震が発生する傾向にある。地震が少ない年は、震度も小さく、2010年と2011年の2ヵ年を比べただけでも、地震の多い都道府県は限定されるわけではなく、多岐にわたっていることがわかる。
 
地震の多い年は、当然のこと、地震が少ない年においても1年を通じて日本全国で発生している地震回数をトータルすれば、365回を余裕に上回るため、地震は、日本のどこかでほぼ毎日発生していると言えるのだ。日本にとって地震は、日常生活、社会活動と密接に関わる自然現象であるといえるだろう。

世界の国土の1%程度未満なのにかくも地震が多い日本

では、世界的に見て、日本ではどれくらいの地震が発生しているのだろうか。防災白書には、2000年から2009年の間に、世界全土で発生したマグニチュード5.0の地震のうち、10%以上は日本で発生しているという記載がある。

また同様に、マグニチュード6.0以上の地震の約20%が日本で発生しているという。日本は、世界の国土の1%程度の面積しか占めていないにもかかわらず、かくも多くの地震が発生しているのだ。これは紛れもない「地震大国」である。
 
次に、地震による災害被害額を紹介したい。防災白書には、1979年から2008年までに、日本が災害により被った災害被害額が記されている。それによると、29年間の間に約20兆円以上に達しているのだ。これは、世界の災害被害額の10%以上が、日本の災害被害総額にあたるという驚くべきデータである。

古くは地震雲、電磁波、動物の異変…地震予測の仕組みは進化しているか
 
我々がいかに地震と隣り合わせの生活を送っているか、おわかりになっただろう。こうした状況だから、日本では昔から「地震予知」の研究が行われてきたわけだ。いくつか耳にしたことがあるかもしれないが、その研究は多岐に及ぶ。
 
たとえば、地震発生前に異常気象が発生することを事前に検知するものがある。

その1つが地震雲である。地震雲は、地震発生前の約2週間前から見られ、放射状・渦巻き状・直線状など様々な種類があるが、気象上の雲や飛行機雲と違い、風により流されることがなく、定点に長時間存在するものである。地震の前兆である地殻の衝突、歪などにより生じる電磁波が上空に雲を発生させるというメカニズムである。
 
また、地震発生前に地盤から放出される電磁波を検出するものもある。阪神・淡路大震災の発生直前、ラジオから大きなノイズ音が聞こえたという現象が報告されている。 
 
その他にも、動物の行動を見るものなど様々な研究があるようだ。こうした地震予測の手法の多くは信憑性が不明だが、霊能力的な力による予知研究まで存在するくらいだから、それだけ人々の期待を背負った分野と言える。
 
そうした数ある地震予知の手法のなか、筆者が紹介したいのは日本における最先端の地震予知システムで、「ビジネス」という視点からも取り組みが開始されている。従来の学術研究というフィールドから新しいフィールドへと、地震予測は大きく変わろうとしているのだ。
 

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