「中国のリチウム独占、永遠には続かない 」

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ハイテク産業は、ある主要原料の価格高騰に悩まされている。背後にいるのは中国で、その原料を買い占めているのだ。どこかで聞いたような話ではないか。そのはずだ。
 
中国は2000年代に経済超大国として台頭して以降、鉄鉱石や、いわゆるレアアースと呼ばれる希少資源を繰り返し独り占めしようとしてきた。その最新の例が電池の主要原料のリチウムである。

深セン証券取引所に上場する天斉リチウムは、チリのリチウム生産会社ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ(SQM)の株式24%を40億7000万ドル(約4500億円)で買い取ろうとしている。チリ政府によると、これが実現すれば、天斉は世界のリチウム市場の70%を支配することになる。

ぞっとする数字である。だが実際のところ、これは新味のない話だ。

リチウムの世界的な供給はひっ迫しており、価格は2016年初めから17年終盤の間にほぼ2倍になった。

しかし電気自動車(EV)革命が起きたとしても、その時まで高値が続くことはなさそうだ。いくつかの主要な測定基準によれば、EVに必要な材料であるリチウムは非常に豊富にありそうだ。

調査会社バーンスタインによれば、リチウムの埋蔵量は年間生産量の400倍強で、埋蔵量の対年間生産量比はコバルトや銅の4倍以上に達する。

バーンスタインは、中国政府の厳しいEV生産目標がリチウム需要を急増させた場合でも、2030年時点のリチウムの年間消費量を満たすには、130億ドルの投資が必要となるだけだと試算している。

これに対しニッケルや銅では、1000億ドル以上の投資が必要となると見込まれている。

鉄鉱石のような主要資源からリチウム関連への設備投資の移行が、今後10年間、比較的小規模なペースで進んだとしても、リチウムの供給についてはおそらく大きな問題は発生しないとみられている。

確かに、リチウムは開発プロジェクトが策定中の間は上昇を続けるだろう。しかしバーンスタインによると、新規プロジェクトの内部収益率がここ1年間ほぼずっと50%を大きく上回ってきたことを考えれば、リチウム関連の設備投資はすぐに実現するだろう。

資源大手リオティントは、セルビアでのリチウム生産の可能性について検討を始めている。

一方中国企業は、厳密には安値でリチウム生産会社を購入しているわけではない。

SQMへの40億7000万ドルの提示価格は、SQMの時価総額に対しおよそ20%のプレミアムとなっている。加えて、SQMの株価はすでに期待収益に対し30倍にまで膨れ上がっている。

中国は、電池用金属が同国経済の将来のかぎを握っていると見ている。

つまり買収資金は豊富にありそうだ。低利で調達できる国家支援の資金がない他の国のライバル勢は、既存のプロジェクトで中国企業と競争するのは苦しいだろう。

その解決策は分かりきっている。新規鉱山の開発である。リチウム価格が目まいのすうような現在の高値付近にとどまるならば、待ち時間はおそらくそれほど長くはならないだろう。

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