「北朝鮮の目論見通りに?」

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瀬戸際戦術の達人、北朝鮮の目論見通りに?

4月27日の板門店会談で、朝鮮半島の「終戦」と「平和」を約束して熱い抱擁を交わした韓国と北朝鮮たが、それから1ヶ月も経たない今、韓半島に再び緊張感が漂っている。

去る16日の未明、当日に予定されていた南北閣僚級会談を一方的に中止した北朝鮮は、その後から米国と韓国に対する非難を繰り返し、韓半島情勢を荒波の中に押し込んだ。

北朝鮮は16日の午前3時頃、『朝鮮中央通信』を通じて、「われわれは南朝鮮で無分別な北朝鮮侵略戦争騒動と対決騒ぎが起きている険悪な情勢下で16日に予定された北南高官級会談(南北閣僚級会談)を中止する措置を取らざるを得なくなった」と公表した。

会談中止の理由に掲げたのは韓・米空軍が2009年から定例的に実施してきた「マックス・サンダー(Max Thunder)訓練」と、2016年に脱北したテ・ヨンホ元駐英国北朝鮮大使館公使の「韓国国会の講演」だった。

続いて16日の午後には金桂寛(キム・ゲグァン)外務第1次官の名義の談話を通じて、北核問題解決に当たって「リビア方式(核廃棄の先行、その後の制裁解除の一括プロセス)」を強調しているジョン・ボルトン米ホワイトハウス国家安保会議(NSC)担当補佐官を露骨に非難した。

その上、「一方的な核放棄を主張するならば、朝米会談を見直しする」と、脅しをかけた。

17日、李善権(リ・ソンクォン)祖国平和統一委員会委員長もマックス・サンダー訓練やテ・ヨンホ公使の国会講演を非難した。なお。文在寅(ムン・ジェイン)政府に対しては、「現実に対する初歩的な感覚も、現実的な判別力もない無知無能な集団」だとし、「北南高官級会談を中止させた重大な事態が解決されない限り、南朝鮮の現政権と再び対座することは容易に実現しないだろう」と警告した。

一方、米朝会談場所となったシンガポールの北朝鮮大使館関係者はメディアとのインタビューで「ボルトンが言うリビア式やイラク式は通用しない」、「米国が、我々に一方的な核放棄を要求し、そのような態度で出るのなら、絶対受け入れられない」と改めて強調した。

18日には、22、23日に予定された「豊渓里核実験場の廃棄」の取材を行うために訪朝する、韓国記者団リストを伝えようとした韓国政府の通知文を拒否した。CNNなどの米欧のメディアに、「22日の午前11時まで北京の駐中国・北朝鮮大使館に集結せよ」と告知したのとは対照的だ。

毎日のように続く北朝鮮の警告は、米朝会談を控え、交渉を有利に導くための圧迫戦略であることに違いない。そして、この戦略はすでに大きな効果を発揮している。

米国のウォールストリートジャーナル紙(WSJ)は、5月末に予定されていた「米日韓空軍連合訓練(ブルーライトニング・Blue Lightning)」への不参加を韓国政府が通達した、と報道した。

文在寅大統領の外交ブレーンである丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一部長官は、南北会談の再開に向けて北朝鮮の面子を立たせるための政府措置が必要だとし、マックス・サンダー演習の取り下げを検討しなかった宋永武(ソン・ヨンム)国防長官に警告を与えるべきだと主張した。

文政府の実質的な外交トップと知られる文正仁(ムン・ジョンイン)外交安保特別補佐官は「韓米同盟は破棄するのが最善」と、不満をこぼした。

韓国内では、ボルトン米補佐官や米国の態度に対する不満も噴出した。

盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府当時、統一部長官を務めた鄭東泳(チョン・ドンヨン)国会議員は、「ボルトン補佐官は基本的に北朝鮮崩壊論者で、対北朝鮮交渉無用論者だ」とし、「ボルトン補佐官を(トランプ大統領が)口止めしなければならない」と主張

金大中(キム・デジュン)政府で文化部長官を歴任した朴智元(パク・チウォン)国会議員は、「米国は、不必要な刺激で北朝鮮の面子をつぶしてはいけない」と米国を非難した。

左派野党の『正義党』の盧喜燦(ノ・ヒチャン)国会議員は、「米国人の人質を釈放した北朝鮮に対し、米国がステルス機まで動員した訓練を実施するのは行き過ぎ」と話した後、「(訓練を)だまっていては、北朝鮮がバカになる」と北朝鮮をかばうような発言をした。

韓国各地では、ロウソクデモの核心勢力だった市民団体による「米軍撤収と韓米軍事演習の中止を求めるデモ」が行われている。

北朝鮮が「人間のクズ」と非難したテ・ヨンホ公使についても、厳しい攻撃が続いた。

「北朝鮮と金正恩(キム・ジョンウン)総書記について講演したテ・ヨンホ公使は、一度でも金正恩総書記に会ったことがあるのか!」「北朝鮮出身として、北朝鮮に対する愛情があるなら、米朝首脳会談を壊すような真似をしてはならない!」「せっかく作られた韓半島の平和ムードに冷や水を浴びせている理由が何か?!」と、『共に民主党』の議員らは声を一つにしてテ公使を非難した。

大統領府のホームページには「テ・ヨンホを北朝鮮に帰すべき」という国民請願まで掲載された。

米国もまた、北朝鮮の強硬な態度にいったん圧迫を自制しているようだ。

16日、米ホワイトハウスのサンダーソン・スポークスマンは、北朝鮮の核問題に対する解決策は、「リビア式ではなく、トランプ大統領が考えている方式で行われる」と、一歩譲った姿勢をとった。

大好きなツイッターでも沈黙を守っていたトランプ大統領は17日に、「リビア・モデルは我々が北朝鮮に対して考えているモデルではない」「金総書記は(ずっと)北朝鮮を統治するだろうし、彼の国は富強になるだろう」と、北朝鮮をなだめた。

ニューヨークタイムズ(NYT)は、「(ホワイトハウス内の)一部ではトランプ大統領がボルトンを自制させなければならないというアドバイスがでている」と伝えた。

瀬戸際戦術の達人である北朝鮮を相手に、米国と韓国はどう対応すべきだろうか。

22日に予定されたトランプ-文在寅間の韓米首脳会談で絶妙な戦略が出てくるか否かに、注目が集まっている。

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