「朝鮮半島「統一」の経済的恩恵は大きい、ただし......」

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朝鮮半島に平和が訪れれば、韓国と北朝鮮の両方が相当な経済的恩恵を受けるだろう。

もちろん、現在の韓国と北朝鮮は政治的にも社会的にも大きく異なり、経済格差も大きい。南北統一の莫大なコストを考えると、過度の楽観論は禁物だとする慎重論もある。

それでも4月27日の南北首脳会談が、朝鮮半島の平和に向けて現実的見通しを高めたのは間違いない。この結果、韓国と北朝鮮には「平和の配当」がもたらされる可能性が高い。金融市場もその恩恵を受ける領域の1つだ。

「北朝鮮リスクがあるから、韓国の株式市場は長年、アジアで最も割安だった。ほとんどの投資家のポートフォリオでも、韓国株の比率は低く抑えられてきた。だから半島の平和につながる大きな出来事は、何であれ株価に大きな影響を与える」と、日興アセットマネジメント(オーストラリア)のアジア株シニアポートフォリオマネジャーであるロバート・マンは語る。

ただし、韓国企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)や経営の透明性に対する懸念も、業績のわりに韓国株が安かった理由の1つだ。だが最近の財閥改革は、韓国企業に対する信頼をある程度高める役割を果たした。

「(韓国の)コーポレート・ガバナンスは改善している」と、トリムタブズ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャーであるジャネット・ジョンストンは投資情報誌バロンズで語っている。ジョンストンは、企業の業績改善、割安な株価、そして配当の伸びを理由に、韓国株は今後も上昇するとの見方を示した。

また、通貨ウォンの下落は、韓国の輸出を後押ししてきた。

12年に発効した米韓自由貿易協定(FTA)は、ドナルド・トランプ米大統領の猛批判を受けたものの、今年3月には見直し案が大筋でまとまった。

国際情勢によっては上昇の幅を抑えられる可能性があるが、「市場は控えめながら、『平和の配当』を織り込み始めたようだ」と、米投資銀大手ゴールドマン・サックスは最近のリポートで指摘している。

ゴールドマンはこのリポートで、北朝鮮との平和が実現すれば、インフラ投資が拡大して建設、鉄鋼、機械関連銘柄の株価が上がるとの見方を示している。「(アメリカとの)貿易問題が解消し、長期金利の上昇懸念が払拭されれば」、地政学的要因が「より大きな役割を果たし、韓国の株価とウォンを下支えするだろう」。

米金融大手モルガン・スタンレーは、韓国と北朝鮮の経済統合の進捗によっては、韓国の株価が大幅に上昇する可能性があると指摘している。韓国の英字紙コリア・ヘラルドはモルガン・スタンレーの見方として、「市場は再び力強い上昇に転じる可能性がある。韓国総合株価指数(KOSPI)は10~15%上昇するだろう」と伝えている。

その一方で、90年に東西ドイツが統一されたとき、当初の楽観論がすぐに消えたことを、モルガン・スタンレーは指摘している。89年のベルリンの壁崩壊後、ドイツの株価は28%上昇したが、統一のコストが改めて明らかになると、たちまち下落に転じた。

手本は中国とベトナムか

北朝鮮の手本は中国とベトナム

英経済調査会社キャピタルエコノミクスのアジア担当エコノミストのギャレス・レザーは、平和の見通しが、直ちに韓国経済を浮揚させるという期待に警鐘を鳴らす。

画期的な南北首脳会談は、「この地域の市場と経済にとって、大きなリスクを取り除く助けになるだろう。しかし韓国経済に与える影響はそれほど大きくない」と、4月末のリポートで書いている。

何しろ実際の平和条約締結までにクリアしなければならない問題は多い。

それに、これまでにも多くの南北合意が北朝鮮によってほごにされてきたから、「両国間には信頼感が欠けている」と、レザーは語る。

実際、南北首脳会談に対する市場の反応はごく控えめだったと、レザーは指摘する。それに「一般に、朝鮮半島情勢は市場心理を動かす大きな要因にはならない」と、言う。「昨年トランプが、『炎と怒り』という言葉で北朝鮮を脅したときでさえ、金融市場の反応は長続きしなかった」

平和条約の次の段階となる南北統一は、莫大な恩恵とコストの両方をもたらすだろう。「北朝鮮の人口約2500万人は比較的若く、(少子高齢化が進む)韓国の人口動態を改善する。国防費も減るだろう」と、レザーは語る。「だが、統一のコストは莫大だ。韓国と北朝鮮の経済格差は、東西ドイツの比ではない。韓国政府はかつて、統一のコストをGDP100%相当と試算したことがある」

だが北朝鮮にとって、平和条約がもたらす経済的な恩恵は大きい。「北朝鮮の指導部は、中国とベトナムが政治的締め付けを緩めずに経済を自由化して、見事な変革を遂げてきたのを見てきた」と、米資産運用会社マシューズ・アジアのポートフォリオマネジャーであるマイケル・オーは語る。

「若き金正恩(キム・ジョンウン)(朝鮮労働党委員長)が今後30年間を見据えたとき、北朝鮮も中国やベトナムのようになれるはずだと思ったとしても、不思議はない」

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