「揺さぶり戦術は逆効果だ」

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北に米朝会談を蹴る選択肢は無い 揺さぶり戦術は逆効果だ

トランプ米大統領は北朝鮮の揺さぶりを「会談が実現しなければ次のステップへいく」と切り捨てた。

次のステップとは軍事オプションである。このため北朝鮮にとって「米朝首脳会談を蹴る」選択肢は限りなくゼロに近いとの見方が大勢だ。また今回の北朝鮮の瀬戸際外交は歴代米政府による「不名誉な過去」を想起させ、過去との決別を宣言しているトランプ政府を結束させたようだ。

一方、日朝関係者の間では、「米朝首脳会談の後に日朝首脳会談も視野に入った」との情報が出始めた。

米政権は結束

「朝米(米朝)首脳会談に応じるかどうかを再考せざるを得ない」との北朝鮮・金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官の談話は、米政権を結束させた。揺さぶり戦術は逆効果になった形だ。
 
2011年に吹き荒れた「アラブの春」で内戦の末に殺害されたリビア・カダフィ大佐の末路にこだわる北朝鮮は、完全非核化の成功例として「リビア方式」に何度も言及するボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)への警戒が強い。金第1次官はボルトン氏を名指し、リビア方式を非難した。これを受けてトランプ大統領は17日「北朝鮮を考えるときリビアはモデルにしない」と言及した。

しかし、今回の談話騒動で、核廃棄を「完全かつ検証可能で不可逆的」に進め、過去の過ちを繰り返さないとするトランプ政権の態度に変更がないことが改めて確認された。

その原則は
(1)定例の米韓合同軍事演習は継続する
(2)北朝鮮が対話を望まないのであれば軍事オプションを含む「すべての選択肢」による抑止政策に戻る
(3)北朝鮮からのこうした揺さぶりは織り込み済み-との立場である。
 
今回、北朝鮮が対米交渉で揺さぶりに出たのは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の2度にわたる訪中と習近平国家主席との首脳会談からくる「自信の表れ」だとみられる。

習氏は非核化について、金正恩氏の主張する「各国が段階的、同時並行的な措置を講じる」との条件を全面的に支持している。「再考」談話も中国のアドバイスであった可能性がある。
 
しかし、談話は対外宣伝用の朝鮮中央通信のみが報じ、国内向けの朝鮮中央テレビや朝鮮中央放送、朝鮮労働党機関紙の「労働新聞」は現在まで談話を報じていない。
 
北朝鮮は非核化のシンボルとして豊渓里(プンゲリ)の核実験場を閉鎖するとして、23日から行う閉鎖式典を海外メディアに公表する予定だ。

「再考」が本気であれば、この式典を中止、あるいは延期するだろう。
ただ、北朝鮮側が米朝首脳会談の席につかないまま会談自体を拒否すれば、米政権が「次のステップ」に進むことが明白になったことで「金正恩氏に首脳会談を蹴る選択肢はない」(米国専門家)と見方が大勢な情勢だ。

続く日本非難

米国に駆け引きを仕掛けている一方で、北朝鮮はメディアを使って日本非難を続けている。そんななか、米朝首脳会談が予定通り開催された場合、日朝首脳会談が行われる可能性が取り沙汰され始めた。
 
「非核化をめぐって米朝が決裂すれば、日朝会談の実現は困難になるが、継続協議ならば日朝はあるだろう。日本にとっては拉致問題が最優先だが、北朝鮮は日本との『過去の清算』が大きい」(日朝関係に詳しい関係者)
 
金正恩氏は4月末の南北首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領に「いつでも日本と対話する用意がある」と応じた。だが、その後も北朝鮮メディアによる日本非難、安倍政権批判を続けている。
 
さらに今月12日、唐突に『この世の万事は決して日本の欲望に従うものではない』(朝鮮中央通信)との論評を発表、日本の拉致問題について「解決済み」との立場を強調した。拉致問題についての言及は今年1月24日以来で、注目された。論評では加藤勝信拉致担当相や菅義偉官房長官も批判した。ただ、専門家はこれを心理戦とみている。

北朝鮮が全く日朝交渉に興味がないのなら、わざわざ言及する必要はない。

いま日本を攻撃することで、日本国内にある“バスに乗り遅れる論”や“日本だけカヤの外”といった安倍政権批判に乗じ、日朝交渉のハードルを上げている。これは北朝鮮が得意とする心理戦の常套手段だ」(同)
 
北朝鮮の韓国・平昌五輪参加と、金正恩氏の米朝首脳会談への意志が明らかになった今年3月初旬以降、北朝鮮発の「日朝交渉が現実味」との複数の情報が日本に入っている。

米朝首脳会談で非核化問題が動き出した場合、日朝国交正常化を視野に入れた日朝平壌宣言を交渉することも射程に入ってくる。朝鮮中央通信の12日の論評でも「過去の清算だけが日本の未来を保証する」と国交正常化交渉への期待を隠そうとしていない。

拉致問題の論評を再開したのはこうした背景があるとみられる。
 
トランプ氏は米朝首脳会談で日本の拉致問題を取り上げる意向を示しており、米朝首脳会談と日朝首脳会談は連携して進む可能性もある。

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