日本「蚊帳の外」論は的外れ

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北朝鮮への融和的姿勢で知られる山崎拓・元自民党副総裁が15日、東京都内での講演で、北朝鮮問題について次のように語ったと東京発のロイター電で読み、既視感を覚えた。
 
「日本が拉致問題にこだわれば、日米間で足並みがそろわないことがありうる」
 
山崎氏は11年前、第1次安倍政権時の平成19年にも、拉致問題で進展がなければエネルギー支援は行わないとの政府方針を批判していた。米国の北朝鮮政策が転換したと指摘し、「バスに乗り遅れる」と訴えていたのだった。
 
3月28日には立憲民主党の辻元清美国対委員長が、党会合でこう語っていた。
 
「大きな緊張緩和に向けて動き出そうとしている流れに、安倍晋三首相だけが『蚊帳の外』、日本政府だけが置いてきぼりになっているのではないか」
 
北朝鮮問題で何かある度に、同じような顔ぶれが「バスに乗り遅れる」「日本だけが蚊帳の外だ」と言い出すのである。彼らには日本は、よほど主体性なく右往左往しているように見えるのだろう。

「板門店には反対」
 
だが、実のところはどうか。北朝鮮が対話を求めてきたのは、日本が主導、主唱した対北圧力路線を米国をはじめ国際社会が採用し、国連安全保障理事会の制裁決議に基づき対北包囲網を敷いたからである。

「蚊帳なんてそもそも存在しない。むしろ、安倍首相がトランプ米大統領に話して北朝鮮問題は『こうやろう』『そうしよう』と言ってきたんだから」
 
外務省幹部はこう憤る。トランプ氏が当初、米朝首脳会談の開催地候補として挙げていた韓国と北朝鮮の軍事境界線がある板門店を取り下げたのも、かねて安倍首相がこんな考えを伝えていたことが大きい。
 
「板門店だとどうしても北朝鮮のペースになるし、日本のリエゾン(連絡調整係)も現地に派遣できないので反対だ。シンガポールではどうか」
 
実際、10日の日米電話首脳会談でトランプ氏は、安倍首相に米朝会談を6月12日にシンガポールで行うと明かし、こう述べている。
 
「安倍さんがこれまで主張していた方向になった」
 
電話会談でトランプ氏は北朝鮮問題をめぐる日本の役割は重要だと指摘した上で、こうも強調した。
 
「日本はビッグプレーヤーだ。これからもそうだ」 トランプ氏は4月18日の日米共同記者会見でも「拉致被害者が帰国できるようにできることは何でもやるつもりだ」と国際社会に表明している。これがどうして「バスに乗り遅れる」ことになるのか。

中韓も協力の姿勢
 
米国だけではない。5月9日の日中韓サミットでは、中国の李克強首相が中国内の抵抗を押さえ込んで共同宣言に北朝鮮が嫌がる拉致問題を盛り込んだ。
 
また、このときの日韓首脳会談では、日頃は北朝鮮に融和的な文在寅大統領も、安倍首相に強い口調でこう約束した。
 
「もしかして私を疑っているかもしれないが、私は国連決議に従って実施している制裁を勝手に解除することはない。信じてもらいたい。拉致問題でも、できることはすべて協力する」 一方、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞(電子版)は6日、日本について「1億年たっても、(北朝鮮の)神聖な地に足を踏み入れることはできない」と批判する論評を掲載した。
 
日本「蚊帳の外」論は、北朝鮮が追い詰められ、包囲網の一端を突き崩そうと試みるときこそ浮上する。

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