「裏切られ続けてきた韓国人は再び、北朝鮮を信じ始めた」

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裏切られ続けてきた韓国人は再び、北朝鮮を信じ始めた

韓国の若者たちからも絶対的な支持を得ているインスタグラムでは最近、時期尚早な「水冷麺」の写真が大流行している。「インスタ映え」を狙って、冷麺に青色の小さな朝鮮半島旗をさした写真も目につく。写真の下には、#歴史的な日、#金正恩委員長、#南北首脳会談などのハッシュタグがついている。

韓国では辛いソースで味をつけたビビン冷麺を咸興(ハムン)冷麺、冷たいスープの水冷麺を平壌(ピョンヤン)冷麺と呼ぶ。夏場の人気メニューである水冷麺がインスタグラムから季節外れの愛を受けている理由は、4月27日の南北首脳会談の昼食メニューが平壌の玉流館の冷麺だったからだ。

証券業界では地政学的危機により形成された「コリア・ディスカウント」現象が解消されることに大きな期待が集まっている。「コリア・ディスカウント」とは、韓国企業の株価が同規模の外国企業に比べて低い現状を意味する言葉だ。

証券アナリストによると、投資者たちの関心がバイオ関連株から建設や金融株に移る兆しが見えているようだ。板門店宣言で言及された南北鉄道の直通化および再整備と関連して鉄道関連株が連日急上昇し、南北経済協力関連株も久しぶりに活気を取り戻している。

某証券アナリストは「開城に南北連絡事務所を設置するというのは、近いうちに開城工業団地が再稼動することを暗示するものと受け止められている」と説明する。

南北首脳会談は、韓国の地上波3社はもちろん、6つのニュースチャンネルを通じて27日の一日中、韓国全域に生中継された。多くの韓国国民が文在寅(ムン・ジェイン)大統領が大統領府を出た瞬間から南北首脳の晩餐が終わる時刻まで、TVの前でこの歴史的なイベントを見守った。

調査機関が明かした、生中継の平均視聴率は35%だった。授業が中止された教室で生中継を見ながら拍手を送る小学生たち、ソウル駅の待合室で複雑な顔でTVを見守るおじいさん、ソウル市役所前のソウル広場に設けられた電光掲示板に映る南北首脳の姿を見て、感激の涙を流す若い女性…。

4月27日は韓国国民に忘れられない一日として記憶されただろう。

韓国のマスコミの評価も日本や米国のマスコミとは対照的で、非常に肯定的だ。韓国の主な新聞の28日の朝刊のヘッドラインを見ると、「完全な非核化、一歩踏み出す」(中央日報)、「完全な非核化、戸を開ける」(東亜日報)、「核のない韓半島、(南北の)同行が始まった」(京郷新聞)、「韓半島の完全な非核化、初の明文化」(韓国日報)、「韓半島の完全な非核化、道は開いた」(朝鮮日報)などなどだ。

紙面のほとんどが南北首脳会談のニュースで埋まり、口をそろえて「板門店宣言」を高く評価した。特に、「完全な非核化」がこそ、米国が主張しているCVID(完全かつ検証可能で、 不可逆的な核廃棄)の韓国的な表現だと解説した。

ただ、韓国内世論の浮き立った雰囲気とは別に、多くの北朝鮮専門家は、「板門店宣言」で非核化へ向けた金正恩氏の意志が見えないと否定的に評価した。

韓国の有力紙の『朝鮮日報』は、今回の会談結果に対する専門家の懸念を次のように伝えた。「北朝鮮が考える非核化は、北朝鮮だけでなく、韓国も含まれたのものだ。北朝鮮はこれまで、在韓米軍が核を持っているとし、米国が韓国に提供する核の傘までも撤廃しなければならないと主張し続けてきた。北朝鮮の従来の立場が強く反映されたものとみられる」

「非核化の合意が原論的レベルの止まった。結局、先週発表された北朝鮮労働党全員会議の決定に従って、北朝鮮は、核保有国として核軍縮をするというコンセプトだ」「国際社会が関心を持っていたのは、核廃棄へのロードマップやタイムテーブルだったが、新しい内容は皆無で何度も話してきた内容ばかり」

このような指摘通り、今回の南北首脳会談で最も関心を集めた「非核化」に関する合意内容は、過去の南北合意文と比べて特別に進展した内容が含まれているとは言い難い。

しかも、「南(韓国)と北(北朝鮮)は、北朝鮮側が取っている主導的な措置が朝鮮半島の非核化に向けて非常に有意義で重大な措置という認識を確認し、それぞれ自分の責任と役割を果たすことにした」という文句は、解釈によっては大きな問題になりうる。

北朝鮮がこれまで引き続き要求してきた体制安全保障や軍事的脅威の除去などについて韓国政府が努力しなければならないという言葉として受け止めることができる。

その場合、駐韓米軍の撤退、韓米軍事演習の中断などが含まれる可能性がある。しかも、非核化の日程は提示されてない反面、朝鮮半島の終戦宣言については、「今年内」とはっきりと言及した。

北朝鮮の実質的な軍事脅威はそのままの状況で、終戦宣言を急ぐ場合、韓国の戦争遂行体制が弱まる恐れがある。終戦宣言が行われれば、国連軍司令部が解体され、韓米連合司令部の存続にも当然影響を及ぼす。

国連軍司令部が解体されれば、横田空軍基地など在日米軍基地7ヵ所を後方基地として活用することもできなくなってしまう。

北朝鮮が取っている主導的な措置(ICBMの発射中止、豊渓里核実験場の閉鎖など)に対して、韓国が「見返り」を支払わなければならないという意味にも解釈できる。

『中央日報』はこれに関連し、大統領府関係者の「非核化過程に従って、我々が取るべき行動もあると思う」という発言をもとに、「北朝鮮の非核化措置に伴う補償を念頭に置いたようだ」と分析した。

つまり、北朝鮮から非核化へ向けての何らかのアクションがあるたびに、韓国が「代価」を支払うという記述とも思われるのだ。

宣言文にはまた、「10.4合意の事業を積極的に進めていき…」と、南北経済協力事業を進めることを暗示していて、国際社会の北朝鮮に対する経済制裁を台無しにする恐れも出ている。

韓国の統一部は、すでに昨年7月に南北経済協力の細部事業の予算で2480億ウォン(約248億円)を確保している。10.4宣言の合意の履行と関連し、当時、 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が推定した予算は14兆4千億ウォンだった。

北朝鮮が初めて非核化に言及したのは、1992年1月20日の南北が合意した「朝鮮半島非核化共同宣言」だ。

当時、宣言文には ①核兵器試験・製造・生産・接受・保有・保存・配備・使用の禁止 ②平和的目的のみで核エネルギーを利用する ③核再処理施設・ウラン濃縮施設の保有禁止などが盛り込まれ、韓国と北朝鮮の総理がサインした。しかし、翌年の1993年3月、北朝鮮は核拡散禁止条約(NPT)脱退を宣言した。

以後、北朝鮮は1994年10月21日の「ジュネーブ枠組み合意」で2000キロワットの軽水炉の建設と、軽水炉建設まで毎年50万トンの重油を支援するという条件でNPT残留や国際原子力機関(IAEA)査察受け入れを約束した。が、2002年、突然、北朝鮮は核凍結を全面解除した。

2005年には6か国協議で「9・19共同声明」がなされて、北朝鮮が2番目の非核化を公言した。北朝鮮は「すべての核兵器と現存する核計画を放棄する」と宣言した。しかし、翌年、北朝鮮は1回目の核実験を強行して世界を驚かせた。

文在寅大統領が大統領府秘書室長時代だった2007年10月、盧武鉉前大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記の第2次南北首脳会談を行い、「10・4宣言」をまとめた。

「韓国と北朝鮮は朝鮮半島の核問題解決に向けて6か国協議の9・19共同宣言が順調に履行されるよう、共同で努力する」という内容だった。

翌年の2008年、北朝鮮は米国のCNNテレビ取材陣を平壌に招待して、寧辺原子炉の冷却塔を爆破するパフォーマンスを全世界に流した。しかし、1年足らずの2009年5月に2回目の核実験を強行した。

2018年4月27日、韓国の文在寅大統領は北朝鮮の金正恩委員長ともう一度、朝鮮半島の「非核化と平和定着」に向けた合意を成し遂げた。そして多くの韓国人は、再び北朝鮮の約束を固く信じ始めた。

二度あったことは三回あるのか、三番目の正直になるのか。すでにボールは米国のトランプ大統領に投げられた。

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