「大手マスコミが既得権益にしがみつき新規参入に激怒する理不尽」

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放送業界の規制緩和を促す放送制度改革を巡って、大手マスコミの言い分が迷走している。ああ言えばこう言う、といった具合で、自分たちの既得権益を守ろうという“下心”丸出しなのだ。

言いたい放題で周囲は困惑
マスコミ幹部のモンスターぶり

既得権益にしがみつき、新規参入を拒む大手マスコミの言い分を時系列で追ってみると、驚くほど自分たちに都合のいいように詭弁を弄していることがわかる

突然だが、もしもみなさんの職場にこんな人がいたら、どう思われるだろうか。

職場を良くするためだと、とにかく人のミスや不正を見つけては言いふらす。口を開けば「職場のためにもっと言いたい放題言わせろ」と文句ばかり。ただ、時にデタラメを広め、無関係の人を傷つけるなどトラブルも続いたため、「自由もいいけど、少しは遠慮したら」と同僚たちがそっと諭した。

すると、その人は顔を真っ赤にして「言論の自由が侵害された!」と大激昂。その迫力に身の危険すら感じた周囲は、これまで以上に言いたい放題できるよう、職場内で最低限守るべしと定められていた「発言ルール」を取り払うと持ちかけた。

当然、飛び跳ねて大喜びするかと思いきや、なんとその人の怒りはさらにヒートアップ、発狂しそうな勢いで、耳を疑うような恫喝をまくしたてた。

「そんなことしたらデタラメを言うやつが増えるだろ!さては、俺を潰すための策略だな!」

完全なモンスター社員だと呆れる方も多いだろう。こんなのが現実にいたらサイコパスだよ、と冷笑する方もいるかもしれない。

だが、驚くなかれ、このような方たちが現実にちゃんと存在している。テレビ局や大手新聞社などの「マスコミ幹部」だ。

放送法の「政治的公平」を巡る
大手マスコミの詭弁

先月、政府が放送制度改革を行うという話がちらっと出た。今やニュースはスマホで読むのが当たり前となっているように、テレビもネットと同列にして何が悪いということで、放送と通信の垣根をなくし、新規参入を促すように規制緩和を進めようというわけだ。そのなかのひとつとして検討されているのが、放送法4条にある「政治的公平」の撤廃だ。

少し前、高市早苗総務相(当時)が、この条文に違反すると電波停止もあり得ると発言したことで、テレビ局がこの世の終わりのような大パニックになったことからもわかるように、この「政治的公平」という縛りによって、報道が萎縮するというのがマスコミの主張だった。

それをなくすというわけだから当然、みんな諸手を挙げて大歓迎かと思いきや、テレビ局をはじめとしたマスコミ各社が猛烈な反対キャンペーンを開始した。

思う存分に報道ができる規制緩和に、なぜ彼らは腹を立てているのか。テレビ局幹部、総務省、マスコミが引っ張り出してくる専門家など、反対派の主張を端的にまとめると、ざっとこんな感じになる。

「政治的公平を撤廃して自由にしてしまうと、偏向報道やフェイクニュースを垂れ流すロクでもないテレビ局がたくさん増えて、それをヒトラー安倍みたいな権力者が悪用するので絶対ダメ!」

こうした意見に賛同し、「そのとおりだ!これは政治のメディア支配だ!」と、今すぐデモでも始めそうな方たちも大勢おられるかもしれないので、ちょっと申し上げづらいが、残念ながらこれは、第2次大戦中くらいの、かなり前時代的なメディア観と言わざるを得ない。

確かに、新聞やラジオなど限られたメディアしか社会に存在していなかった時代は、大手マスコミを掌握してしまえば、権力者はフェイクニュースで世論誘導ができたということもある。

が、今では状況がまったく違う。むしろ今の日本では、テレビや新聞のように閉鎖的な既得権益業界の方が、自ら進んで「フェイク」の罠に陥っている。

マスコミのフェイクニュースを
ネット民たちが正す時代

最近、オフィス北野のお家騒動で、「グッディ」(フジテレビ)に「偽社員」が出演したと話題になったが、ホラッチョ川上ことショーンKさん、佐村河内守さんなどなど、テレビは定期的に「フェイク」をつかませられる。これはなぜかというと、閉鎖的な世界ゆえ、多くの人たちのチェックが働かないからだ。

そういう既存マスコミの弱点は、ネットで克服できる。たとえば、大相撲の女人禁制問題における春日野親方の「トイレ騒動」がわかりやすい。

当初、マスコミは行司が「女性の方は土俵から下りてください」とアナウンスした際、親方はトイレに行っており、会場にはいなかったと報じた。が、会場にいた観客が、親方が会場にいるところをスマホで撮影していて、その画像がネットで拡散されたことで、トイレ発言が「嘘」だということがバレてしまったのである。

つまり、マスコミが図らずも広めてしまった「フェイクニュース」を、一般人たちが検証して誤りを発見し、それをネットに拡散したことで是正したのだ。

もし仮に、テレビ局幹部などが心配するように、安倍首相が懇意のネットTVを悪用して、「信者」に対して事実と異なるデマを触れ回ったとしても、同じような検証が働く、というのは容易に想像できよう。

仮想通貨における「ブロックチェーン技術」を想像してほしい。よく「改ざんができない台帳」というたとえがなされるように、この技術はネットワークにつながる不特定多数のPCが相互に確認と検証をおこなうので、改ざんや不正な取引ができない。

それと同じように、「報道」というものも、ネットというオープンスペースに多種多様なメディアが乱立した方が、不特定多数の個人が相互に確認と検証をおこなえるので、「フェイク」や「偏向」を防げるのだ。

「政治的公平」は一握りの知的エリートしかわからないものか?

「テレビの規制を緩くしたら、アヤしいマスコミがたくさん誕生して国民が洗脳される!」と騒ぐ人たちは、このあたりの視点がごそっと抜けている。「政治的公平」のジャッジができるのは、永田町、霞が関、そしてテレビ局など大手マスコミの、ほんのひと握りの知的エリートだけであって、読者や視聴者にはできっこない、とハナから決め付けているのだ。

要は、大衆を「下」に見ているのだ。

こういう「政治的エリートとマスコミが日本人を良き方向へ導く」みたいな選民思想は、昭和の高度経済成長期くらいまでは当たり前のように存在していたが、もはや明らかに時代錯誤である。

なんてことを言うと、マスコミのみなさんからお叱りを受けるかもしれないが、みなさんが「時代」を捉えていないということが、「朝日新聞」の3月31日付け社説に如実にあらわれているので、以下に引用させていただく。

「安倍内閣は従来の自民党政権にもまして、4条を口実に放送に介入し圧力をかけてきた。だがその強権姿勢は厳しい批判を浴びた。一方で首相は、バラエティー番組や政治的公平性を求められないネットテレビには進んで出演し、自らを宣伝する。4条撤廃の衣の下からは、メディアを都合良く使える道具にしたいという思惑がのぞく」

個人的には、お前はとにかくムカつくから息をするな、というのと同じくらい理不尽な言いがかりのような気もするが、問題はそこではなく、「政治的公平性を求められないネットテレビ」というくだりだ。

こういうもの言いをされると、ピュアな朝日読者は、「うんうん、そうだよな。法律で政治的公平性の縛りがないネットテレビなんてありえないよ」と誘導されるが、世界的に見ると、国がテレビを規制して「政治的公平性」を求めている方が、はるかに「あり得ない」のだ。

よく言われるように、アメリカでは大昔、テレビ局を管轄する連邦通信委員会が「報道の政治的公平」を求めていたが1987年にこれをスパッと廃止した。

当たり前だ。白人社会の「公平」と、ヒスパニック系の「公平」はまったく違うし、トランプ支持者とワシントンのエリート層の「公平」は絶対に相容れない。この中で、何が「公平」なのか政府がジャッジを下したら、本気で内戦が起きる。

「政治的公平」は法律でコントロールできない

日本のマスコミがなにかと手本にしたがるBBCがあるイギリスも同じだ。

NHKも安倍政権を叩けみたいな文脈の時によく出るが、BBCはかつてフォークランド紛争を「中立」に報道し、サッチャー政権から厳しく批判されても屈しなかったことで知られている。では、こういう硬骨の姿勢を貫けたのは、法律でちゃんと「政治的公平」が指導されていたからかというと、かの国にはそんな規制はない。

当時のBBCのガイドラインには、「公平性は、絶対的な中立性を意味するのではない」という趣旨の記述がある。BBCの言う「公平」とは、自分たちが信じる「公平さ」であり、報道機関として自らを厳しく律するポリシーでもある。役所や法律でああだこうだと指図されるようなものではないのだ。

まだ記憶に新しいかもしれないが、2年くらい前、テレビ・新聞は「ヒトラー安倍によって報道が萎縮している」という一大キャンペーンを張った。そのよりどころとなっていたのが、国連人権理事会が任命した「表現の自由」に関する特別報告者だった、米カリフォルニア大アーバイン校のデビット・ケイ教授である。

この方は2016年4月に来日し、1週間に及んで日本のマスコミ、ジャーナリストのみなさんにヒアリングをおこなった結果、こんな素晴らしい「提言」をしている。

「やはりこの放送法は一部改正する必要があるというふうに考えております。例えば、4条そのものを取り消すということです。政治的公平性を判断するということは非常にオープンな議論を要求するものであります。公平なのか・公平ではないのかというのは本当に大きな議論を要するところであって、それを政府がコントロールするということであってはならないというふうに考えています」(ログミー2016年4月19日)

あれから2年。国連に対して「安倍政権に恫喝されてます、助けてください」と、子犬のように怯えて訴えていた日本のマスコミが、「政府のコントロールがないとフェイクニュースが増える」と怒り狂っていると知ったら、ケイ教授はどう思うか。

やはり冒頭でみなさんが感じたように、「サイコパス」だと失笑するのではないか。

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