2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
「大谷翔平」
ホームランと奪三振だけじゃない!
大谷翔平が全米で“So cute!”な理由。
日本のファンだけでなく、エンゼルスファンだけでなく、全米中が大谷のプレーに注目し始めている!
「オータニは本物だ」
「オータニのDNAテストをしよう。多分、人間じゃないと思う」
8日、大谷翔平がエンゼルスタジアムのオークランド・アスレチックス戦での投手としての本拠地デビュー戦で、次々と相手バッターを打ち取ると、賛辞の言葉がSNSを埋め尽くした。
6回までに11三振を奪い、走者を出さないパーフェクトピッチ。大谷を見ようとスタジアムに駆けつけた4万4742人の観客の度肝を抜くようなパフォーマンスを見せた。7回に走者を出したが得点は許さず。12三振を奪い、2勝目を挙げた。
開幕以降、大谷が打席に入るたび、マウンドに立つたびに、野球ファンの興奮ボルテージが高まっている。
「しばらく野球を見ていなかったけれど、オータニの試合は全部見ようと思う」
「今季はオータニを見る」
海を渡った日本人選手が、アメリカ人ファンの心を大きく揺さぶっている。
大谷のメジャー挑戦を理解できなかった米国ファン。
昨年のオフシーズン、大谷はアメリカの野球関係者やファンの間で大きな話題になっていた。
“二刀流”という異色さだけではない。大谷が契約金の額に関係なく、メジャーへの移籍を希望したからだ。
2016年オフの新労使協定で、25歳未満でドラフト対象外の外国人選手の契約金上限は575万ドル(約6億円)という、いわゆる「25歳ルール」が設けられた。そのため大谷の契約金は、ポスティングを使った過去の日本人選手と比べてかなり低くなることが予想された。
「25歳になってからメジャーに来ればいいのに」
「急がなくてもいいのに」
ファンだけではなく、メディアからもこんな声が相次いだ。
日本のファンは大谷が高校時代からメジャー志向を持ち、高校卒業後にメジャー挑戦を希望していたことも知っている。しかしアメリカではそういった報道は少なく、また多くの野球選手が多額の契約金を求めて移籍する現状もあり、「もう少し待てばもっと大金を得られるのに。なぜ焦るんだろう」という声が多く出たのだろう。
米国で深刻化するファンの野球離れ。
ここ数年、メジャーリーグのファン離れが深刻化している。
ドーピング問題、試合時間の長さ、選手交代の多さによる展開の遅さ、チケットの高騰化、生え抜き選手の少数化。応援していた選手が契約金の高いチームに移籍することに嫌気がさした人も多い。
ここ10年ほど、スタジアムの老朽化の影響もあり、多くのチームがスタジアムの建て替えを行った。
しかし客足の伸びにはさほど結びついていない。むしろ新しいスタジアムを好ましく思わないファンもいる。
ブロンクスで生まれ育ったという男性は「幼い頃に父や祖父とよく野球を見に行った。スタジアムの隣の芝生でキャッチボールをしてからスタジアムに行くのが恒例だった。新しいスタジアムになって、自分の思い出が奪われたような気がする」と話してくれた。
多くのチームで、同じように感じているファンは少なからずいるのではないだろうか。
球場にファンが来ない、テレビ中継も見ない……。
昨年5月のマイアミ・マーリンズ対フィラデルフィア・フィリーズの試合では、1989年以降で最低観客数となる1590人という驚異的な数字を叩き出している。
そして、観客動員数だけではなく、視聴率も伸び悩んでいる。
試合のハイライトはスポーツニュースやSNSでチェックすればいい、そんなファンが増えているのが現実だ。
各チームは様々な方法でファン獲得の努力をしているが、一度離れたファンの心を取り戻すのは至難の技だ。
“He is so cute!(すっごくかわいい)”
ホームランを放った大谷がベンチに戻ると、チームメイトたちは新人いじりの儀式の1つ、“サイレント・トリートメント(無視)”をして、満面の笑みの大谷を知らんぷり。
大谷は一瞬、「あれ?」という表情をした後に、1人の選手の背中に飛びかかった。まるで「ねぇねぇ、いいバッティングだったでしょう」と言わんばかりに。
この大谷の行動にハートを奪われたファンは多かった。
“He is so cute!(すっごくかわいい)”
こんな言葉がSNSには溢れたが、豪快なプレーと大きな体躯に似合わない無邪気さのギャップもアメリカ人ファンにはウケたのだろう。「野球がとても大好きな野球少年なんだな」と理解した人も多かったはずだ。
野球のおもしろさを再確認するきっかけに。
3月29日のメジャーデビュー戦で初ヒット、4月1日には投手としてメジャー初勝利、そして本拠地でのデビュー戦でホームラン、8日の本拠地での投手デビューでは7回無失点12奪三振、とまるで漫画の主人公のような活躍を見せる大谷。
誰よりも速いボールを投げたい。
強打者を打ち取りたい。
思い切りバットを振って、遠くまで飛ばしたい。
投げるのも打つのも楽しい。
純粋にプレーするおもしろさ、一球一球に全力を尽くす楽しさ、それは幼い頃に野球をプレーしたことがある人なら誰もが感じた気持ちだろう。だが、様々な要因で少しずつ野球から心が離れていたファンに、大谷は野球の楽しさを教えてくれた。
まさに全米中が大谷のプレーに注目している!
ここまで打者では、4月3日の本拠地初打席初本塁打に始まる3試合連続ホームラン。ルーキー選手がデビューから4試合のうちに3試合連続でホームランを記録したのはエンゼルスでは初、そしてメジャーの歴史上、大谷が6人目という快挙だった。
大谷の快進撃はとどまるところをしらない。
「エンゼルスファンじゃないけれど、オータニの出る試合は欠かさず見ようと思う」
「エンゼルスの試合は全部、全国放送で流せばいいのに」
年齢も居住地も様々な人たちがスタジアムやテレビの前で海を渡った野球少年のプレーを心待ちにしている。
“Ohtani is good for baseball. (大谷は野球にいい影響を与えている)”という言葉は、最高の賛辞だろう。
大谷のような選手になりたいという野球少年や、大谷のプレーに注目するファンが、今季どれくらい増えるのか。大谷のプレーとともに、彼が引き起こす「オータニ現象」も注目したい。