「トランプ氏指南できるのは安倍晋三首相だけ」

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藪中三十二元外務事務次官「トランプ氏指南できるのは安倍晋三首相だけ」

北朝鮮が1月以降、何で大転換をしたのか。間違いなく制裁が効いたわけですよ。日本もやってきた圧力強化路線は間違っていない。

北朝鮮は相当局面を展開しないといけないというところまで追い詰められた。核・ミサイル開発はある程度やったというところもあるんでしょうけど。

大転換をすると決めたらやるんですね、あの人たちは。2002(平成14)年9月17日の小泉純一郎首相と金正日(キム・ジョンイル)総書記との会談でも、そこに至るまで北朝鮮が「何とかしないといけない」と思った。

金総書記は、あのときも前年に訪中しているんですね。日朝首脳会談で、それまで全然認めなかった拉致を認めて、謝罪までした。

演出効果もあるが、北朝鮮は決めると細かいことは言わない。米韓の合同軍事演習もどうぞおやりください、南北首脳会談は板門店の韓国側でやりますよと。最も効果的なやり方で今の状況を変えるんだというメッセージを伝えようとしている。

「非核化」という言葉も「交渉中はミサイルも撃ちません」も、自分から言っている。昔なら一個一個について「これをやるためには何をくれるか」というやり方だったが、今度はやっていない。従来のスタイルとは全然違う。

韓国も北朝鮮もトランプ米大統領をうまく持ち上げました。韓国の訪朝団はトランプ氏に「あなたのおかげでここまで来た。金正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長もあなたにぜひ会いたがっている」と。トランプ氏は舞い上がっちゃった。

米国は従来であれば、ちゃんとした核廃棄に向けた具体的な方策がない限り北朝鮮と会っても意味がないと言っていたが、そんなのすっ飛ばして会おうとなった。

極めて異例な展開が起きている。北朝鮮は追い込まれたがゆえにそれなりの作戦を持っているが、トランプ氏は直感ですよね。

米朝首脳会談だから大きな流れができることは間違いない。何がまとまるかはわからないが、トランプ氏は「世界一のディールメーカー(交渉役)」と言っているわけで、まとめる方向に行く公算の方が大きい。全体としての非核化に合意したと言うかもしれない。

だが、日本にとって大問題なのは非核化の意味。ふわーっとして、その代わりこれぐらいのことはと見返りが求められる。非核化の中身が全然詰まらなくて、何のことはない、経済協力だけがスタートする。これは日本にとって最悪だ。

日本にすれば拉致問題がある。トランプ氏にお願いするのもいいけど最後は日朝間の話になる。日朝首脳会談は米朝が動くタイミングを見極めてすぱっとやる。今からお願いお願いなんて言ったら、足元みられますからね。ただ、核・ミサイル問題が前へ進んでいるという状況でないと北朝鮮も出てこない。

私が日朝交渉を担当するようになって、拉致問題だから席を立つということはなくなりましたね。「これは解決済み」というたぐいのことは言ってきますよ。そういうことであれば日本から一銭も出ないし、もうちょっとやろうということですが、そういうときに相手の親分が判断できるか。

日本はどこかの段階で「核・ミサイル問題が解決したら、日朝の関係正常化に向けて多大な経済的な貢献をする用意はある。ただ、拉致問題の解決が前提、最優先であって、それがない限りは一銭も出さない」と大々的に言ったらいいと思う。

忘れてはいけないのは、拉致問題は最大の問題の一つだが、核・ミサイル問題も日本の問題であることです。安倍晋三首相も外務省もその点ははっきりしている。

4月の日米首脳会談では、核・ミサイル問題の解決もトランプ氏に迫らなければいけない。首相がトランプ氏を指南しないといけない。そういう重大な役割がある。間違ってもトランプ氏が金委員長に軽々に「わかりました」と今後の交渉に悪影響を及ぼすような合意をしないようにくどいぐらい、嫌がられてもやらなきゃいけない。できるのは首相しかいない。

6カ国協議の最大の意味は日本も当事者の一人であるということ。いろんな外交的アイデアを投げていかないと。中国とも連携を取ったらいい。日本は自分の問題であるから、蚊帳の外ではなく、どうやったら日本の安全を確保できるかとの観点から相当厳しいシナリオを考えて、米韓などに突きつけるべきですよ。

日米首脳会談は時間をかけてやるべきですね。1時間の会談と1時間の食事ではだめ。「自分が一番の交渉役」というのが一番危険ですよ。

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