「パナマ文書」

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「パナマ文書」の目的と国内マスコミが報じない国際金融の闇

欧米の金融を震撼させている「パナマ文書」について、わが国のメディアはほとんど取り上げない。タックスヘイブン(租税回避地)やヘッジファンドでの運用が馴染みの薄いテーマだからでしょう。

ところが、わが国株式の総売買額(1日で2.5兆円から3兆円)のうち、70%は海外からのものです。この海外は、米国や英国ではない。ほぼすべてが「オフショア」からのものです。

新聞では、これを「投機筋の短期売買」と言っています。現物は少なく、ほとんどが先物やオプションの売買です。

世界の株式・為替・商品市場を牛耳る超巨大マネーの正体とは

「オフショア」と「タックスヘイブン」の基礎知識

オフショアは、陸から離れた沿岸の意味ですが、金融では、タックスヘイブンのことを指します。ヘブン(天国)ではなく、ヘイブン(haven)です。マネーの安息所・避難所というのが原義です。なぜ避難所になるのか?その法域(法が及ぶ地域)における、利益に課す所得税が無税か、低い課税だからです。

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このため、自国では課税されるマネーをタックスヘイブンに逃がす。これには合法的なものと、非合法のものがあります。Wikipediaでは、世界で数10カ所のタックスヘイブンが挙がっています。

有名なのは、バハマ、バーミューダ諸島、バージン諸島、ドミニカ、グレナダ、リヒテンシュタイン、マーシャル諸島、モナコ、パナマ、サモア、オーストリア、ベルギー、ブルネイ、チリ、コスタリカ、グアテマラ、ルクセンブルグ、マレーシア、シンポ─ル。香港、ウルグアイ、スイスなどです。

世界の多くの(ほとんどの)大手金融機関は、タックスヘイブンに法人を作っています。世界で8000本のヘッジ・ファンドはタックスヘイブンを本拠地にしています。金融以外の会社でも、アップルやグーグルは、タックスヘイブンを事業所の所在地にしています。

窓口は、ウォール街や、ロンロンのシティ、そしてチューリッヒの小さな建物です。そのコンピュータがタックスヘイブンにつながっています。そこで行う株の売買は、オフショアのタックスヘイブンになるのです。

多くは、私書箱の住所だけの所在です。法人は契約書で作られる観念的なものです。手で触ることができる形はない。自然人は人間で、肉体をもちますが、法人は、法的な人格をもつだけです。それで資産やマネーの所有権をもつことができる。

世界では数十万人の個人が、タックスヘイブンにペーパー・カンパニーを作っているでしょう。全貌は明らかではない。その一部(バージン諸島の分)が、パナマ文書で明らかになりつつあるのです。英国と米国の金融機関に関連するものが多いはずです。

タックスヘイブンに資金を移動する2つの理由

なぜ、わざわざ面倒な手順を踏んで、タックスヘイブンにマネーを移動するのか。目的は2つしかない。

(1)所得税や相続税の課税逃れ。例えば、ヘッジ・ファンドの本拠がタックスヘイブンなら、株やデリバティブの売買で利益を上げても、所得税の課税がないからです。相続税も、相続資産そのものの存在が明らかにならないと、課税はされません。

(2)マネーロンダリング。資金洗浄ですが、これは課税を逃れた取引で上がった利益をタックスヘイブンに移動し、無税の資産とするものです。

巨大な地下経済

例えばイタリアやギリシアでは、地下経済がGDPの30%はあるとされています。そうしたマネーは、マフィア等の手で、タックスヘイブンの金融機関に行っているはずです。今のマネーは預金数字ですから、会社とコンピュータの形式上の所在地がタックスヘイブンなら、タックスヘイブンマネーになります。

現金を離れた預金金融とともに、世界のタックスヘイブンが巨大化したのです。

「パナマ文書」は、総数1150万件の文書で、総体で2.6テラバイトの情報と言う。金融機関、法人、個人の情報取引が記載されているでしょう。21万4千社の、オフショアの会社の電子メール、契約書、スキャン文書(PDF)が入っていようです。

全貌は、次第に明らかになりつつあります。世界の法人、首脳、政治家、資産家、個人の名前があるという。

「パナマ文書」問題の核心を報じない国内メディア
タックスヘイブンはパナマだけではない

タックスヘイブンはパナマだけではない。ほとんどは、米国領と英国領バージン諸島です。バージン諸島はキューバの南東で、抜けるような紺碧の、カリブ海の島々です。ウォール街と、英国のシティ(金融街)のマネーの本拠はバージン諸島です。

世界第3位の米国債保有高

例えば、米国債の海外保有は、1位の中国が$1兆2523億(135兆円)、2位の日本が$1兆1331億(122兆円)ですが、3位はカリブ海の金融機関となっています。金額は$3611億(39兆円)です。カリブ海には、巨大な銀行はない。全部が、英国、欧州、中東の金融機関とファンドの、ペーパー・カンパニーです。

「パナマ文書」問題の核心を報じない国内メディア

中国政府は、パナマ文書に首脳の親族の名前あったことが報じられたので、国内のインターネットでの記載を禁じました。日本政府は、なぜか、早々と「政府としては調査しない(菅官房長官)」と言明しました。
政府の意向を汲むことが多くなっているわが国のメディアは、ほとんど、肝心なところを報じません。

日本人では、約400の個人名が出ているようです。セコムの創業者と親族が、1990年代から持ち株700億円をバージン諸島などに設立した法人に名義移動しているという(WikiPediaからの情報)。売買が行われたのなら違法ではない。また、仮に違法であっても、10年たてばほぼ時効になっています。

本稿で、タックスヘイブンをテーマにして書く理由は、「世界の銀行資産の50%はタックスヘイブンにある」とされているからです。

世界の銀行資産は、世界のGDPの約2年分で、$120兆(1京3000兆円)でしょう。その半分なら$60兆(6500兆円)です。金融はその根底に、本質的な怪しさをもっています。

日本の銀行・信託・証券の総資産は官民で1000兆円くらいでしょう。わが国の銀行が、タックスヘイブンに移動しているマネーは、おそらく500兆円まではいかない。50%より少ない300兆円でしょうか。

2016年12月での、わが国の対外資産は945兆円あります(対外負債は578兆円で、対外純資産が366兆円です)。この対外資産のうち30%くらいがタックスヘイブンにあるとすれば、ほぼ300兆円です。

わが国最大の三菱UFJフィナンシャル・グループの総資産が286兆円(2015年9月現在)ですから、おおよそその総資産並みです。英や米国の金融機関の口座に預けた場合、それが、タックスヘイブンに行くことも多いのです。

「パナマ文書」は米国発の情報爆弾か?

なぜ、このパナマ文書が明らかになったのか、理由は不明です。完全版は、国際ジャーナリスト連合の約400名によって、2016年5月に明らかにされる予定です。

英国や欧州の金融機関の名前は出ても、米国の金融機関と政治家の名前がまだ出ていないことから、米国政府がかかわっている可能性もあります。
ウィキリークスでは、パナマ文書の流出に、米国国際開発庁とジョージ・ソロスもかかわっていると言う(真偽は不明)。パナマは事実上、米国の支配下にあるので、この説には親和性もあります。

名前が出ている中国、ロシア、産油国の首脳と親族に打撃を与え、体制を揺るがすことが目的の「情報爆弾」かもしれません。戦争の形は、地上戦、海戦、空戦の物理的なものから、通信のサイバーテロ、情報爆弾に変わりつつあるからです。

FRBが増発している$4兆のマネー、そして、ユーロのECBのマイナス金利マネーは、金融機関とファンドによって相当部分がタックスヘイブンに流出しているかもしれません。

これが米国と欧州のデフレの原因も構成しているでしょう。増発マネーが、金融商品と株の売買に使われ、「企業への融資→設備投資」という実体経済には回っていないからです。

日本の株の売買の70%(日量約2兆円)は、オフショアからのものとされます(東証)。海外の日本株の所有は約30%であり、金額(残高)では「時価総額約500兆円×30%=150兆円」です。

平均の所有期間は「残高150兆円÷日量2兆円=75日」です。買って75日(約3カ月)で売買されています。

世界の銀行資産の50%を占めるオフショア・マネー

オフショアから売買のうち、相当部分(推測50%)は「黒い目のマネー」でしょう。日本の金融機関がタックスヘイブンに設立したファンドか、またはオフショアのヘッジ・ファンドに預託したマネーと推測される部分が混じっているはずです。

割合は不明ですが、このオフショア金融の50%はあると思っています。ヘッジ・ファンドは、通貨、国債、社債、株、資源やコモデティでポートフォリオを組み、分散投資しているので、その全容はわからない。

世界では、オフショアが本拠地のヘッジ・ファンドに預託された元本マネーは、$2兆から$3兆(216兆円から324兆円)と言われます。ほとんどが先物やオプションなので、10倍くらいのレバレッジはかかっていて、総額で2000兆円から3000兆円の投機マネーになっているでしょう。

オフショアを本拠地にするのは、他にシャドー・バンクです。シャドー・バンクは、預金保険の対象にならない投資銀行を含むものであり、大手では、米国のJPモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなどがシャドー・バンクの範疇にはいります。

そのマネー総額は、中国も含んで、世界で$60兆(6480兆円)と言われます。$60兆の多くの所在地は、オフショアになっているでしょう。

世界の通貨市場、商品市場、株式市場、社債市場で売買をしながら駆け巡っている巨大マネーの本流は、国籍を持たないオフショア・マネーです。古典的な銀行の、古典的な融資や現物株の売買ではない。

世界のデリバティブの契約総額は$552兆です(2015年第1四半期6京円:BISの統計)。世界の実体経済であるGDP($6000兆)の10倍です。
もっとも多いのは、「金利交換(固定金利と変動金利のスワップ)」です($434兆:BIS)。これらのデリバティブのほとんどは、形式上は、タックス・ヘイブンで作られています。

デリバティブは金融機関同士のマネー契約です。商品とサービスの生産と売買である実体経済には、間接的な関係しかもっていません。

金融機関同士の取引の巨大化(=デリバティブ化)が、2008年のリーマン危機以降、日米欧と中国の中央銀行が$10兆(1080兆円)以上のマネーを増発しているにもかかわらず、消費財のインフレになっていない理由です。GDPの計算にはいる実体経済(商品の売買)には使われていない。

ただし、世界の大都市不動産の高騰、そして、金利の低下(=国債価格の上昇)、株価の上昇には大きく関係しています。つまり、金融資産(国債を含む債券と株式)の購入、そして不動産の購入マネーになっています。

オフショア・マネーの総本山はBIS(国際決済銀行)である

【BIS】

BIS(Bank for International Settlements)は、スイスの小さな町バーゼルの丸い小さな建物にあります。世界(58カ国)の中央銀行が加盟し、中央銀行間の決済に関与しています。設立は1930年で、中央銀行の中央銀行を自称し、そう言われています。

世界の銀行に、BIS規制という自己資本規制を課すことで有名です。現在はバーゼル3を試行中です。国際業務を行う銀行の、自己資本比率を厳しくするものです。

【バーゼル1】

バーゼル1(1990年~)は、自己資本比率で8%という規制でした。この規制は、日本銀行を狙ったものでした。海外でプレゼンスが大きくなっていた日本の大手銀行の自己資本比率(自己資本/総資産)は3%程度しかなかった。

このため日本の銀行は資産の圧縮、つまり融資の引き揚げと回収、およびリスク資産とされた株式の売却を迫られました。日本の80年代の資産バブルの崩壊に、金融圧縮での役割を果たしたのが、バーゼル1でした。

【国際金融マフィア】

BISは「国際金融マフィア」とも言われます。この場合は違法な暴力団という意味の、シシリア島などのマフィアではない。

スイスを含む、どの国の法にも支配されない機関という意味でのマフィアです。法より優先する独自の倫理綱領がある。国際金融マフィアは正式な用語です。

(注)日銀は日銀法の支配下にあります

BISはスイスへの納税の義務はない。BISの職員は、治外法権を獲得しています。スイスで交通事故を起こしても、外交官のように、スイスの法で裁かれることはない。

バーゼル規制1が、皇居の土地だけでアメリカ全土が買えると言われていた日本の金融力(1990年)を弱体化させる目的であったかどうか、それは分からない。

表の目的は「世界金融の安定」だったからです。

しかし事実を言えば、日本の銀行は不動産融資を引き揚げ、株を売りました。この事実から見るべきでしょう。

【バーゼル2】

2006年から発効したバーゼル規制2は、自己資本の内容を、バーゼル1より厳しくするものでした。これが、2008年からの米国のサブプライムローン危機を招くことになったのかどうか、その因果関係の立証はできません。しかし、米国と欧州の銀行の信用規模が大きく収縮したことは事実です。状況証拠にはなるでしょう。

【バーゼル3:2018年~】

次はバーゼル3の、自己資本規制の強化です。2013年から試行され、2018年(2年後)に発効し、19年度から完全実施されます。バーゼル3で要求される自己資本は10.5%です。

きわめて簡単に言うと、デリバティブの規制になるでしょう。このバーゼル3は、次の金融崩壊(ウォール街と欧州)を準備するものになるでしょう。自己資本比率が特に低いのはドイツ、フランス、英国の大手です。

2018年が危ないというのは、このバーゼル3からでもあります。

このBISそのものがオフショア金融です。これが、オフショア金融の拡大を放置してきた理由にも思えます。

中央銀行の上に立つBISの金融権力の元になっているものは何か?世界の中央銀行に対する支配力でしょう。真の世界銀行はBISです。IMFや世銀ではない。世界の中央銀行は、BISに対して支店の位置です。

アジア開発銀行総裁だった黒田日銀総裁も、国際金融マフィアの一員と言われます。しかし例によって、世界のもっとも重要なことの真偽は、いつも明らかではない。

『タックスヘイブンの闇(邦訳2012年)』の驚くべき主張

パナマ文書公開の背景に、税収が伸びない米国の台所事情?

パナマ文書の公表は、GDPの増加があっても、その割に税収が伸びないことも背景にあるのでしょう。米政府が主導して公開したという傍証にもなります。

(注)前述のように、わが国の菅官房長官は、手回しよく、あえてなぜか「調査しない」と言っています。有力な自民党政治家の名前があるのかもしれません

タックス・ヘイブンも、文書が電子化されていることから、暗号を解くハッカーによる流出が起こりやすくなっています。このためスイスのプライベートバンクには、手書きと、パスワードではない自筆サインを守っているところがあります。

アーカイブの文書が盗まれれば、All(オール)になるインターネットなどはとんでもないという考えです。

電子化・インターネット化したことで情報の一括入手が可能になって、非合法な金融の季節は終わったのかもしれません。

ある広域暴力団は、スイスに巨大な隠し預金をもつとも言われます。何らかの手段で現金を国外に持ち出し、個人信用で、非合法な資金も預かる銀行から送金する方法でしょう。国内の銀行は、外銀であっても報告義務があるからです。

GDPとして把握されていないアングラ経済が30%を占めるともいうユーロのラテン(南欧)ではどうか?浮かび上がるのは、13世紀の過去からベネチア(デル・バンコの一族)かもしれません。

公式文書にはありませんが、デル・バンコは、BIS(国際決済銀行)への最大と言われる出資者です。

役員会の議事録が存在しないBIS

なおBISは驚くべきことに、マフィアの伝統をひくのか役員会の議事録がない組織です。

黒田日銀総裁も、どんな実質的地位かわかりませんが、役員の1人です。

政府との会議で「BISでは、満期保有する国債でも、リスク資産とする検討が進んでいる。そうなると日銀が国債を買い進めることが難しくなる」と発言しています。これはユーロ圏で南欧債が下落したことを受けた検討です。

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