「韓国よ、日本人は怒っている」

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「韓国よ、日本人は怒っている」元駐韓大使が日韓合意反故を嘆く

韓国が日韓合意の新方針を発表
安倍首相「受け入れることができない」

1月9日、韓国の康京和外交部長官は、その直属の慰安婦合意検証チームの結果を踏まえ、日韓合意に関する新方針を発表した。

その中で強調したのは、「日韓合意は政府間の秘密交渉の下で進められ、元慰安婦の意見が反映されていない」「両国間の交渉に非公開の合意があり、不均衡な合意だった」ということであり、日本側が拠出した10億円については、一部の元慰安婦らが受け取りを拒否していることから「今後、扱いを日本側と協議する」と述べた。

これに対し、河野外務大臣は、「日韓合意は国と国の約束であり、韓国側に対して直ちに抗議を申し入れることにしている」と反発した。

さらに文在寅大統領は、翌日の年頭記者会見で、「再交渉を要求するわけではない」「間違った結び目は解かなければならない。日本が真実を認め、被害者女性たちに心を尽くして謝罪し、それを教訓に再発しないよう国際社会と努力するとき、元慰安婦も日本を許すことができるだろう」とし、日本側の“自主的な対応”を求めた。

しかし、安倍晋三首相は「韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れることができない」としてこれを一蹴している。

慰安婦問題をこじらせてきた 支援団体名乗る挺対協が元凶

そもそも、交渉に当たって国内の意見を取りまとめる責任は韓国側にあり、それが不十分なものであっても国際的な合意は忠実に履行する義務がある。しかし、文政権の今回の新方針は論理のすげ替えであり、全く論理矛盾している。

文政権は、「元慰安婦の意見が反映されていない」と言うが、実際には合意当時に生存していた元慰安婦の7割がこの合意を受け入れている。当事者の7割が受け入れている合意が、「元慰安婦の意見が反映されていない」というのはどう考えても無理がある。

要するに、文在寅大統領を支持した、「韓国挺身隊問題対策協議会(以下、挺対協)」のような、左翼系の政治団体の意見が反映されていないということである。
(注)韓国の主要紙、朝鮮日報によれば、合意時の生存者47人のうち36人は一人当たり1億ウォン(約1000万円)、死亡者199人の遺族の内68人は一人当たり2000万ウォン(約200万円)を受け取ったり、受け取る意向を示したりしている。

慰安婦問題をこじらせてきた
支援団体名乗る挺対協が元凶

挺対協は、自らを慰安婦支援団体としているが、実際には過激な政治団体である。アジア女性基金が活動していた頃、同基金から“償い金”を受け取った韓国人の元慰安婦に対して、その後支給された韓国政府からの見舞金を受け取らせなかったばかりか、日本の基金から金を受け取るのは、自ら「売春婦」であったことを認める行為であると非難した(河野談話作成過程等に関する検討チーム報告より)。

筆者が支援団体であれば、そのような金は日本に返せと言い、韓国政府の見舞金を渡したであろう。まして、元慰安婦が最も傷つく「売春婦」と認める行為だとは、どういう顔をして言い放ったのであろう。筆者が挺対協を「政治団体」というのはこのためである。

「挺対協が言うことが全体の希望」だと主張

河野談話の検証チームの報告でも述べられている通り、韓国側は常に世論の批判を懸念して、日本側の“自主的な措置”とするよう求めてきた。そして、日本側が採る措置については、事前に知らせてほしいと言いつつ、実際には協議を求めてきた。

日本側も、韓国側が反対する措置ではむしろ問題をこじらせるだけであることから、韓国側の意見を相当程度取り入れ、韓国側の理解を得つつ進めてきた。このように、韓国側も基本的に理解した措置を、常に覆してきたのが挺対協である。挺対協は、自分たちにとって100点満点の合意しか受け入れないという姿勢なのだ。

挺対協の意見を聴取していては、2015年の日韓合意はなかったであろう。朴槿恵政権が、挺対協以外の多くの慰安婦に接触したからこそ、7割の元慰安婦が受け入れたのだ。文政権が言う、「意見を受け入れられていない」という元慰安婦は、極めて少数派なのだ。要するに、文大統領は事実をねじ曲げ、「挺対協が言うことが全体の希望」だと主張しているわけだ。

すなわち、韓国で認められている慰安婦に関する「事実」は、挺対協が流している「事実」なのだ。慰安婦問題を客観的に調査した「帝国の慰安婦」という書籍は、発刊を止められ、著者は裁判にかけられている。

10億円の扱いに関する主張も意味不明
日本は全く対応する必要なし

今回、文政権は日本側の自主的な謝罪を求めてきているが、これは、これまでの韓国政府のやり方と同じだ。その内容について、執拗に注文を付けてくるのではないかと思われる。

文政権は、こうした日韓合意について、「秘密合意があった」と言うが、「最終的不可逆的なものにする」という項目を、そもそも韓国側が言い出した、という点は秘密であったろう。

その他、韓国側が秘密合意と主張する、(1)「挺対協」への説得を要求、(2)第3国での慰安婦像などの設置をしないことを要求、(3)「性奴隷」という表現を用いないことを要求、というのはいずれも韓国側が、「困るから秘密にしてほしい」といったことであろう。国内的に、前政権を批判したいがために、日本側に合意の不当性を提起するのはさらさらおかしい話だ。

韓国の各メディアも 文政権に疑問を呈する

日本側が拠出した10億円の扱いに関する、韓国側の主張も意味不明である。それ以上に、「再交渉は求めない」と言いつつ、実際には合意事項全てを事実上、反故にしているのが新方針である。安倍首相の「全く受け入れることができない」というのは当然であり、日本側としてこれに対応する必要は全くない。

ただ、日本側が対応しないとなると、また挺対協を中心に米国で日本批判をするであろう。「日本に圧力をかけるために米国を味方にする」というのがこれまでの韓国である。

となると日本としては、挺対協が慰安婦支援団体でなく、過激思想に取り込まれ、北朝鮮寄りの活動をする政治団体(幹部の夫や妹で北朝鮮と繋がりのある人もいる)であることを、米国でもっと発信していくこと必要があるだろう。米国の少女像撤去を求めても、米国では支持は得にくいであろうが、挺対協がいかに日韓関係をむしばんできたかと発信すれば理解を得やすいであろう。

日本はもっとうまく立ち回っていく必要がある。

韓国の各メディアも
文政権に疑問を呈する

韓国の保守系の主要紙『中央日報』は、今回の新方針に対する日本の反発は、「これまでとは次元の異なるものである」との趣旨で、一連の記事を掲載している。

まず、筆者が注目した記事は、「日韓議員連盟、東京の真ん中で『慰安婦合意衝突』」と題する記事である。

在日本大韓民国民団の新年行事において、挨拶に立った額賀志郎日韓議員連盟会長は、「駐日韓国大使(李洙勲大使)から事前に説明を聞いたときは、韓国が合意を認めて履行するものと理解したが、今出ている報道を見ると理解できない。歴史問題が両国関係の障害になってはならない」「外交は単独でするものではなく相互間でするものであり、お互いの国益を共に考慮しなければいけない」と、新方針に対し危惧の念を表明した。

朝日の元ソウル支局長の批判を韓国保守系メディアが紹介

こうした発言に対し中央日報は、過去には韓日両国間に葛藤が生じたとしても、韓日議員連盟所属議員の間で公式的な発言を控えたり、迂回的な表現を使うのが常であったが、今回の「額賀議員の発言内容は普段の額賀スタイルとは違ってとげがあった」と解説している。

確かに、昨年12月11日に開かれた日韓・韓日議員連盟の総会の共同声明では、慰安婦合意について明確には触れられておらず、「両国の歴代政府の趣旨にそって、両国政府はともに努力することを確認」したという表現に留まっていた。筆者は、慰安婦合意が日韓間の大きな懸案になっている折でもあるし、韓国国民にもっとしっかりと日本側の考えを伝えてほしいと思ったものである。

新年行事に出席し、額賀氏の挨拶を聞いた宋永吉韓日議員連盟副会長は、「慰安婦合意は調整が避けられない」と述べながら、文大統領の立場を代弁した。同議員は日本との関係を重視しているが、思想的には左翼系であり文大統領とも近い。額賀会長の発言を文大統領にどう伝えたであろうか。

朝日の元ソウル支局長の批判を
韓国保守系メディアが紹介

また、同紙は、「『知韓派』日本言論人が見る最近の日韓関係」と題する記事で、朝日新聞の箱田哲也論説委員のインタービューを掲載している。

箱田氏はこの中で、「文在寅政権には責任ある姿勢でこの問題に終止符を打とうとする考えがあるのか疑わしい(中略)2015年の日韓慰安婦合意には日本側の責任とおわび、反省が明確に込められている(中略)歴史問題に強い執着を見せる安倍政権が事実上、国家としての責任を認めたのは『歴史的な事件』だった」「合意に含まれていた『不可逆的な解決』という表現は韓国側が先に提案した。

責任と謝罪に対する立場を覆すような言動をしてはならないという意味だった」と述べたのを紹介している。

韓国のメディアはこれまで、自己中心的な論理で固められ、常に自分たちが正しいと主張し、日本側がどのように考えているかについて“無頓着”を決め込んできた。それが、朝日新聞の元ソウル支局長の批判を紹介したのは画期的である。

そもそも韓国の保守系メディアは、文政権の親北姿勢を警戒しており、率直に批判するようになっていたが、それが日韓関係にも波及してきたのは驚きである。

韓国が客観的に見なければ日本人の気持ちは一層離れていく

『朝鮮日報』も、「引っかきまわした揚げ句、矛盾した対策しか打ち出せず」と題する記事で、文政権は、「韓国政府が別個に同じ額の「政府充当金」を用意し、国民感情からくる拒否感を静めようとする代案を打ち出したのだ。

だが、合意履行事項の一つである拠出金10億円に関して日本と再び協議するのは、事実上の再交渉という指摘もある」と主張している。また、決して保守系とは言えない『聯合通信』までも、「今回の韓国政府の方針により、日本の拠出金を韓国政府が負担することとなれば、アジア女性基金のときと変わりがなくなる」と述べている。

最後に、『中央日報』が、読売新聞が実施した世論調査の結果を報道しているのを紹介しよう。

それによれば、韓日慰安婦合意について、韓国政府の追加要求に応じないとした安倍政権の方針を「支持する」と答えた日本人が83%に上ったということである。韓国の人々がこれを、「日本人は相変わらず反省がなくけしからん」と受け止めたのか、それとも「韓国がいつまでもゴールポストを動かすのはまずい」と考えたのか。恐らく、今は前者であろう。ただ、反省の気運が出始めたことには注目している。

韓国が客観的に見なければ
日本人の気持ちは一層離れていく

日韓関係が改善するとすれば、それは韓国が自己の論理に固執せず、日本側の考えにも耳を傾け、より客観的に判断できるようになったときである。恐らく今の文政権ではこれは難しいであろう。

ちなみに、筆者の書いた「韓国人に生まれなくてよかった」という本は、韓国の保守層から翻訳出版したいという申し入れを5~6件受けている。筆者が優柔不断でまだ発刊されていないが、文政権の本質を扱い、日本人の文政権に対する危惧を率直に扱ったものとして、再び注目が集まったのだろう。

筆者も、韓国人に日本人の考えを知ってもらうためには、翻訳出版することが第一歩だと考えており、近々決断しなければならない。

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