「英国」

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ブレグジットは名ばかりか

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)は、象徴的意味合いにとどまりそうだ。交渉前半の大詰めでメイ英首相とEUが結んだ基本合意により、混乱の中で離脱に至る恐れは和らいだ。

しかし、離脱しておきながら貿易だけ守ることの難しさも露呈した。長い移行期間中、英国はさらに譲歩することになりそうだ。

英国はきっぱりとした態度で離脱交渉の第1段階に臨むはずだったが、実際には譲歩続きの半年間だった。当初抗議していた「清算金」については、英高官の推計で400億─450億ユーロを支払うことで合意。

EU市民が絡む紛争について、離脱後8年間は欧州司法裁判所による裁きを受け入れる点でも歩み寄った。

最大の譲歩となったのは、アイルランドの国境問題だろう。閣僚らは当初、厳格な国境を再導入しなくても、EUの単一市場や関税同盟から抜けられると主張していたが、その考えは甘すぎた。

詳細の決定は交渉の第2段階に委ねられたが、解決策が見いだされない場合、英国は国境の開放を求めるEUの規則に全面的に従い続けると約束した。

交渉第2段階の様子も察しがつくというものだ。つまり英国は、離脱後もEUの規制に進んで従う構え。メイ首相は一方で、英国の将来を自ら決める権利も主張している。

EU高官らによると、つまり英国は、EUとカナダの自由貿易協定のような形で手を打ちたいと考えているのかもしれない。ただ、それも英国を除くEU27カ国すべての合意が必要なため、すんなり通るとは限らない。

離脱期限の2019年3月までにこうした問題を完全解決するのは不可能だろう。とりあえず2年の移行期間が設けられたため、詳細の合意については時間を稼げる。移行期間は、いったん実施されれば簡単に延長できそうだ。

そうなるとメイ首相はさらに譲歩する可能性があるし、メイ氏が設けた「レッドライン(超えてはならない一線)」にこだわらない次期首相に交替する可能性もある。国民投票の決定が覆されることは、なおも考えにくい。しかし英国のEU離脱が名ばかりに終わる可能性は膨らみ続けている。

●背景となるニュース

*英国とEUは8日、離脱の大枠に合意し、移行期間や通商関係を巡る第2段階の交渉に道が開かれた。欧州委員会は、交渉に十分な進展があったと表明した。

*トゥスクEU大統領は合意を歓迎しながらも、離脱後の新たな関係についてさらに姿勢を明確にするよう、英国に求めた。

*今回は離脱後のEUおよび英国市民の権利、清算金、英領北アイルランドの地位などで合意した。

*合意文書によると、英国は厳格な北アイルランド国境の設置を避けたい意向。この問題で合意に至らず、英国が具体的な解決策も示せない場合には、英国はEUの単一市場および関税同盟の規則に全面的に従うとしている。

*欧州委員会は今後、移行期間や通商、長期的な英・EU関係などを巡る交渉第2段を開始する。移行期間は約2年間とする指針が示された。英国はこの間、関税同盟と単一市場に一部残留するが、EUの諸機関には参加せず、議決権も持たない。またEU法の管轄下に留まる。

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