中国の教科書

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中国の教科書「文化大革命」を削除へ ネット流出で騒動

現在の中学2年生向け歴史教科書にある「文化大革命」の項目。文中の見出しには「動乱と災難」とあり、毛沢東の過ちに言及している

3月から中国の中学校で使われる歴史教科書から、中国が混乱に陥った政治運動「文化大革命」の項目が削除される見通しだ。文革を発動した毛沢東の過ちを認める表現が削られるとみられる。中国では政治的な問題を巡る発言への締め付けが強まっているが、改訂の是非を巡り批判や疑問の声が上がっている。

中国は昨秋から順次、「歴史」「国語」「道徳と法治」の教科書の改訂を進めている。以前は複数の出版社の教科書が使われていたが、この3科目は「重要で特殊な教育機能がある」として教育省が統一して監修するようになった。新たな教科書では、愛国意識を養い、共産党が国を発展させた歴史を詳しく教えることに重点を置いている。

注目を集めているのは、中学2年生向けの「中国歴史」。現行版は「文化大革命の十年」という独立した項目を設け、全国の学校や工場が閉鎖され、知識人らが迫害されたなどと説明している。ところが10日、新版とみられる内容の一部がネット上に流出、文革の項目がなかったことから騒動になった。

出版社側はすぐにコメントを発表。文革については別の項目の中でしっかり採り上げ、マイナス面にも触れるとした。

しかし、流出した新版の内容では、現行の「毛沢東が誤って認識」との表現や「動乱と災難」という見出しが消える一方、「世界の歴史は常に曲折を経て前進してきた」との説明が追加されている。

改訂には、習近平(シーチンピン)国家主席の意向が反映された可能性もある。習氏は2013年の毛沢東生誕120周年座談会で、文革の誤りを指摘しつつ「個人の責任だけでなく、国内外の社会的、歴史的な原因があった」と主張。「世界の歴史を見れば、どの国や民族もみな曲折に満ちている」と、毛への批判を和らげようとするような発言をした。

「今さら覆い隠してどうするのか」

文革を研究してきた北京大学の印紅標(インホンピアオ)教授が朝日新聞のインタビューに応じ、この問題について語った。

中国で、文革の歴史を徐々にあいまいにしようとする問題は、昨日や今日に始まったものではない。教科書の言葉はより穏やかなものとなり、マイナス面の内容は減ってきている。理由は三つあると思う。

まず文革は共産党の過ちであったということ。党のイメージの問題がある。党の統治の威信や合理性に影響するからだ。

二つ目は、団結のためだ。ある期間までは悪いことはすべて(毛沢東の周りにいた)林彪や江青がやったとして団結が保てたが、弊害が大きくなっている。

最後に、文革研究は共産党の制度上の問題につながっていくということ。中国国内で研究が制限される一方、海外では学術的なもの以外に、反共の人々も文革を研究している。こうした人々に文革の歴史が利用されるのを恐れているのだ。

しかし、私には理解できない。1980年代、共産党は文革の歴史について自ら過ちを正し、人民の支持を得た。それを今さら覆い隠してどうするのか。将来、国内の人々は何も分からず、国外の人々だけが文革について語るようになれば、私たちは文革についての発言権を外国に渡してしまうことになる。愚かな政策だと思う。

どの民族も、過ちを犯すときがある。日本の侵略戦争やソ連のスターリン時代の問題などたくさんある。中国では文革がそうだ。

問題はいかにそれを正しく認識するかだ。真剣に過去に向き合い、過ちを繰り返さないようにするならば、現在の人々が恥じることはない。歴史を直視し、過ちをきちんと認めることができれば、私たちは必ず尊重されるはずだ。

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