「試金石」

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万年野党か責任政党か 「巡航ミサイル」「イージス・アショア」は野党の試金石

政府が、戦闘機用の長射程の巡航ミサイルや、陸上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」を導入する方針を決め、平成30年度予算案などに関連経費を盛り込んだ。いずれも日本の防衛戦略にとってインパクトの大きな装備品であり、22日に開会予定の通常国会の大きな焦点になるのは間違いない。

初の本格的な国会論戦に臨む立憲民主党、希望の党がこの件にどう向き合うかは、現実的な安全保障政策を志向する「責任政党」か、反対のための反対に終始する「万年野党」にとどまるかの試金石になりそうだ。

導入予定の巡航ミサイルは3種類あり、最大900キロという射程は既存の自衛隊ミサイルの能力を大きく上回る。北朝鮮の弾道ミサイル基地をたたく「敵基地攻撃」にも活用できる可能性があり、導入は日本の防衛政策上の大きな画期といえる。

イージス・アショアは2基で日本全土をカバーできるとされ、ミサイル防衛態勢に厚みを増す。秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場が配備の候補地に挙がっている。政府は整備費用を1基あたり1000億円弱と見積もっており、2023年度の運用開始を目指している。

「専守防衛の防衛戦略の中で国民の命を守り抜くためには質の高い防衛力を持たなければならない。今回、導入するスタンドオフミサイル(巡航ミサイル)は相手の攻撃能力の外から発射できるので、パイロットの安全を守りつつ、日本を守ることができる。国民のご理解もいただくことができると思う」

安倍晋三首相(63)は7日放送のNHK番組のインタビューで、新たな装備品の調達の意義をそう語った。これに対し、野党はすでに批判の矛先を向け始めている。

「(政府は)専守防衛に反しない、敵基地攻撃能力を持つものではないと説明しているが、まやかしのやり方はやめるべきではないか。専守防衛に反しない、近隣諸国に不用意な脅威を与えないためには、前提としていくつかのハードルを設けないといけない。正面から説明せず、なし崩し的にやれば、歯止めなしに実態としての装備(調達)が進む。これは最悪だ」

立憲民主党の枝野幸男代表(53)は、同じNHK番組でこう批判した。

希望の党の玉木雄一郎代表(48)も昨年12月に「年末の予算編成で突然出てくることには違和感を禁じ得ない」と述べ、8月の概算要求になかった巡航ミサイル経費が、予算編成が大詰めの段階で追加要求されたプロセスを疑問視している。

イージス・アショアについても、調達費用が当初見積もりの800億円から上昇した過程などを問題視する向きがある。

しかし、ここで思い起こされるのは、旧民主党と民進党が安全保障を対立軸として安倍政権と対決してきた結果、ことごとく敗北を重ねてきた歴史だ。

第2次安倍政権は平成24年12月の発足以降、安全保障政策で着々と手を打ってきた。特定秘密保護法によって友好国と機密情報を交換する基盤を整え、安全保障関連法で日米同盟の飛躍的な強化を図った。「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法も成立させた。

これらの法制をめぐって、旧民主党や民進党は同じ失敗を繰り返してきた。徹底的な対決姿勢を示して政府・与党に法案を「強行採決」させ、「民意を無視して暴走する安倍政権」を演出するやり方だ。

こうした戦術で内閣支持率は一時的に低下したが、ほどなく復元した。ところが野党の支持率は一向に伸びなかった。旧民主党・民進党は、この「黄金の負けパターン」を繰り返して袋小路にはまり込み、疲弊して分裂に至った。

ただ、民進党も昔から反対一辺倒だったわけではない。政権奪取を目指して上り調子だった平成15年、旧民主党は安全保障関連法の前段といえる有事法制の関連法案に賛成して責任政党としての存在感を示し、後の政権交代にもつながった。

民進党を離党した鷲尾英一郎衆院議員は自身のブログ(昨年11月27日付)でこの際の国会対応を取り上げ、「国民のニーズや関心に建設的に対応することが何を生むか。まさに過去の国会対応に学ぶべきではないか」と指摘している。

北朝鮮の脅威や中国の軍拡を目の当たりに、多くの国民は防衛力を強化していく必要性は認めている。「専守防衛の枠内か枠外か」といった観念的な議論や、「説明が足りない」といった手続き論だけではなく、現実に対応するため、どのような法制や装備が必要なのかという建設的な論戦が期待されている。

望みは限りなく薄いが、新たな野党には責任政党の道を選んでほしいと思う。 

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