「騙しあい」

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北朝鮮の五輪参加、韓国はフィーバー

2018年新年に入るやいなや、金正恩(キム・ジョンウン)氏の新年演説をきっかけに韓国と北朝鮮との間に、関係改善ムードが急速に広まっている。

1月1日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は新年の演説で「南朝鮮(韓国)でまもなく開かれる冬季五輪大会は民族の地位を誇示する良いきっかけとなり、私たちは大会が成功的に開催されることを心から願っている」と述べ、「北朝鮮も代表団の派遣を含めて必要な措置を執る用意がある」と続けた。

これまで文在寅(ムン・ジェイン)政府の対話への呼びかけにも挑発を続けてきた北朝鮮が、コロリと態度を変えたのだ。

文在寅政府は、電光石火のように動いた。金正恩氏の演説の発表直後、大統領府は安保室を中心に緊急会議を開き、異例的に大統領府報道官の口を通じて「歓迎する」という初論評を発表した。

翌日の2日午前、文在寅大統領は2018年の初の閣議で、「南北対話を速やかに再開させ、北朝鮮代表団の平昌五輪参加を実現可能とする対策を速やかにまとめるよう」と、統一部と文化観光体育部に指示した。この日の午後は趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官が記者会見を開き、1月9日、板門店(パンムンジョム)で高位級南北当局者会談を開催することを北朝鮮側に公式要請した。

3日には23ヵ月間、断絶されていた南北間のホットラインである板門店(パンムンジョム)電話が再稼動し始めた。4日には、大統領府で南北対話準備点検に向けたNSCが開催される一方、文大統領は、米国のトランプ大統領と電話会談を開き、北朝鮮の平昌五輪参加のため、オリンピック期間中に実施が予定されていた韓米軍事演習の延期に合意した。

5日には中国の6か国協議主席代表の孔鉉佑(こうげんゆう)外務次官が訪韓し、8日には日本の6か国協議主席代表である金杉憲治アジア大洋州局長も韓国を訪ねるなど、北朝鮮問題をめぐる6か国協議の再開への動きも始まった。国際社会も北朝鮮と韓国との対話ムードに乗りかかってきたのだ。

思えば、去年5月に発足した文在寅政府は、これまで韓国内外からの多くの非難を甘受しながらも北朝鮮との対話に執着してきた。文政権の対話と制裁というツートラックで北朝鮮問題を解決するという対北朝鮮の方針は、これまで北朝鮮が11発のミサイルと6回目の核実験にも揺れなかった。

北朝鮮が射距離1万キロメートル級のICBM「火星-14型」を発射して米国を驚かせた7月には南北軍事会談と離散家族再会に向けた南北赤十字会談を提案した。6回目の核実験で国際社会の緊張感が高まった9月にも800万ドルの人道的対北朝鮮支援を発表した。

11月29日、北朝鮮が高度約4500キロ、飛行距離約960キロの「火星15型」を発射し、「核兵力の完成を達成した」と主張すると、文在寅政権は「まだ完成したとは考えていない」といい、急いで鎮火に乗り出した。

12月に入って、文在寅政府はより積極的に動いた。19日、文大統領は、米国のNBC放送とのインタビューで米国へ韓米海軍合同演習の延期を提案したことを明らかにし、北朝鮮の平昌五輪参加を重ねて促した。

28日には統一部が開城工業団地の停止は朴槿恵(パク・グンヘ)前大統領の口頭命令による違法的な措置だったと発表し、開城工団再開に向けた国民世論の造成に入った。

それに先立って、18日には平昌の管轄地である江原道の崔文洵(チェ・ムンスン)知事をはじめ、与党側の政治家たちが中国の昆明で開かれた『幼少年サッカー大会』に参加した北朝鮮の体育界の要人に会って、北朝鮮選手団の五輪参加を説得した。

この席で、北朝鮮代表団の便宜のために宿舎として使うことができるクルーズを提供するという提案もしたという。このような文在寅政府の忍耐と努力が、北朝鮮の平昌五輪出場という実を結び、さらには南北関係が解氷する転機を迎えることになったのだ。

政府と歩調を合わせて韓国のマスコミも連日、平昌冬季五輪に対するバラ色の見通しを示している。北朝鮮が美女応援団を派遣するだろうとか、金正恩氏の妹の金汝貞(キム・ヨジョン)氏とトランプ大統領の娘であるイバンカ氏が揃って平昌五輪に出席する可能性があるなどといった、期待に満ちたニュースを出している。

韓国国民の78%が北朝鮮の平昌五輪参加を賛成(『リアルメーター』2018年4日発表より)しており、崔文洵江原道知事は出場権を返上した北朝鮮フィギュア選手たちのために南北フィギュア単一チームを構成することを提案した。金正恩氏の一言によって韓国では、まさに北朝鮮フィーバーが押し寄せてきたのだ。

しかし、韓国国民の歓呼を見守っている同盟国の米国の態度はやや冷笑的だ。米国務省は「両国が対話を望むなら、それは彼らの選択だ」とし、「北朝鮮の離間策はうまくいかないだろう」という論評を出した。

サラ・ハッカビー・サンダース米ホワイトハウス報道官は定例ブリーフィングを通じて「私たちの対北朝鮮戦略は全く変わっていない」「米国は北朝鮮が変化し、韓半島非核化に乗り出すまで引き続き最大限の圧迫を加える」と明らかにした。

ニッキー・ヘイリー国連駐在米国大使も「米国は北朝鮮が核兵器をすべて禁止するための行動に出ない限り、どんな会話でも真剣に捉えることはない」と、否定的な立場を示した。ヘイリー大使はまた、北朝鮮のミサイル発射の兆候が見えていると付け加えながら、2018年にも依然として北朝鮮を注視すると明らかにした。

韓国の右派メディアも慎重な反応を見せている。『韓国経済新聞』は、北朝鮮の平昌五輪参加にはさまざまな条件がついていると指摘しながら、文在寅政権の性急な対応策にクギを刺した。

同紙は「(新年演説に盛り込まれた)金正恩のメッセージは明確だ。韓国には対話を口実にして米演習の中止や戦略資産の撤退などを要求し、米国には核保有国地位を認めるよう働きかけたものだ。核兵力の完成、机の上の核のボタンといった脅迫表現で語気をさらに強めた。韓半島の運転台は私が握っているという露骨な宣言に他ならない」と主張した。

『朝鮮日報』もやはり米国に向かって「米国本土全域が韓国核攻撃射程圏内にあり、核のボタンが私の事務室の机の上に置かれている」という恐喝にもかかわらず、ひたすら北朝鮮代表団を平昌に送るという言葉に浮かれている韓国政府を眺める米国では韓国が真の同盟国なのかという疑わしい反応が出るとし、韓米同盟が危険に直面していると警告した。

米国との間では頻繁に不協和音が奏でられ、韓米同盟の亀裂説、昨年末から再び浮上した慰安婦の合意をめぐる日本との葛藤、計画的な無礼を甘受しなければならなかった中国国賓訪問などで外交分野で四面楚歌に追い込まれた文在寅政権にとっては、北朝鮮の五輪参加は希望の星だろう。

しかし「北朝鮮カード」を上手く使って2018年の国際外交舞台で大逆転を果たすことができるだろうか。一ヵ月後に近づいてきた平昌冬季五輪に、世界中の視線が集まっている。

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