「北を「石器時代」に戻す米国の「贈り物」」

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北を「石器時代」に戻す米国の「贈り物」電磁パルス攻撃受けるのは金正恩氏 地中貫通核爆弾も!

北朝鮮が「石器時代に戻る」可能性が浮上している。

米国のドナルド・トランプ大統領は8月29日の中距離弾道ミサイル《火星12型》発射に対し「全ての選択肢を検討中」と軍事行動を示唆。

北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用水素爆弾の6回目実験を9月3日午後に行うと、国家安全保障会議の席上、ジェームズ・マティス国防長官に軍事的選択肢につき「一つひとつ」説明を求めてもいる。この「一つ」に、《電磁パルス(EMP)攻撃》や《地中貫通核爆弾》を用いた戦法が含まれていたとする情報が、日韓の安全保障関係者の間で観測されているのだ。

EMPや地中貫通核爆弾については小欄で取り上げてはきたが、EMP攻撃の方は、もっぱら北朝鮮が日本を筆頭に米韓に仕掛けるというパターンだった。

現に、北朝鮮がICBM搭載用水素爆弾の6回目実験を行った3日、北の朝鮮労働党機関紙・労働新聞がEMP攻撃を完遂できると強調している。理由は後述するが、本当だろう。

韓国の公共放送KBSは3日夜のニュースで、韓国がEMP攻撃に遭えば「自動車などの交通手段や金融機関や病院、通信施設など、全基幹施設が停止したり、誤作動を起こしたりして、事実上『石器時代に戻る』」という専門家の声を紹介してもいる。

だが、『石器時代に戻る』のは北朝鮮ではないのか。

インフラ全滅の闇世界を創り出す悪魔

『石器時代に戻る』は大げさとしても、凄まじい被害が出るのは間違いない。地中貫通核爆弾は後回しにし、まずはEMP攻撃とは何か-のお復習いを。

EMP攻撃は、高度30~400キロの上空での核爆発を起点とする。その時生じたガンマ線が大気を構成する窒素や酸素などの分子に衝突。分子中の電子がはじき飛ばされて雷のような巨大な電流が発生するなどした結果、強力な電波の一撃であるEMPが地上に襲来する。「宇宙より押し寄せる津波」に例えられるゆえんだ。

EMPは送電線を伝ってコンピューターといった電子機器に侵入。電圧は5万ボルトに達するので、機器はIC(集積回路)の機能停止で損壊し、同時に大規模停電にも見舞われる。

影響範囲は爆発の高度や規模によるが、高度100キロで広島型原爆の3分の2に相当する10キロトン(TNT火薬換算)のケースでは、日本全土をほぼ覆う半径約1100キロにも達する。

現代社会は電気なしでは成り立たない。大規模停電で公共インフラを支える電子機器が損壊すれば、都市機能はマヒする。携帯電話&電話&インターネットなどの通信やガス&水道の供給が停止。

飛行中の航空機が操縦不能になり、電力を絶たれた原子力発電所が制御不能に陥る。自衛隊・警察・消防の指揮・命令系統や金融機関も機能不全となる。 

EMP攻撃は地上への核攻撃と違い、ミサイルの弾頭部分を大気圏再突入時の超高熱から守る素材や突入角度制御に関わる技術は必要ない。小型の核弾頭を搭載したミサイルを発射し、目標上空で起爆するだけ。米国防総省では、北朝鮮が既に核弾頭の一定程度の小型化に成功し、EMP攻撃能力を備えたと確信している。

この恐るべき兵器を米国は当然、研究・開発し、実戦段階まで昇華している。

実際、米国は1962年、北太平洋上空で高高度核実験《スターフィッシュ・プライム》を実施、高度400キロの宇宙空間での核爆発でEMPを発生させた。

ところが、爆心より1400キロも離れた米ハワイ・ホノルルなどで停電が引き起こされ、予想通りの「魔力」が実証された。

米国の専門家チームが近年まとめたシナリオでは、10キロトンの核爆弾がニューヨーク付近の上空135キロで爆発すると、被害は首都ワシントンが所在する米国東部の全域に及ぶ。損壊した機器を修理する技術者や物資が大幅に不足し、復旧には数年を要し、経済被害は最悪で数百兆円に達する。

EMP攻撃で、北朝鮮の核・ミサイル施設&基地を含む軍事拠点や各種司令部&各部隊間をつなぐ電子・通信機器=指揮・統制システムを不通にできれば、もはや戦(いくさ)はワンサイド・ゲームと化す。

その上、EMP攻撃敢行のハードルは、核爆弾の直接攻撃に比べハードルが低い。EMPの場合、核爆発に伴う熱線や衝撃波は地上には届かない。EMPは被攻撃側の人々の健康に直接影響しないのだ。

半面、食糧不足や病気などで数百万人単位もの死傷者は出る。病院をはじめ、無線などの情報通信やテレビ・ラジオもマヒし、被害情報把握も救援・復旧活動も困難に。信号機も突如消え、交通事故や火災で死者を増やし、大パニックに陥るためだ。

こうした、一般の北朝鮮国民への被害をどう局限し、国際世論の批判をかわすか、米国は今、シミュレーションを繰り返している。

もちろん、米国にとり最優先事項は人道ではなく、EMPの届きにくい地下坑道に陣取る北朝鮮・朝鮮人民軍の通常・核兵器による報復の芽を摘み取る点にある。核施設の制御不能回避も大きな課題だ。以上の課題も、米国は着々と解決している。

ところで、北朝鮮の韓大成・駐ジュネーブ国際機関代表部大使は5日、あろうことかジュネーブ軍縮会議で「米国が北朝鮮に圧力を加えようと無駄な試みを続けるなら、わが国のさらなる『贈り物を受け取ることになる』だろう」と演説した。が、現実には『贈り物を受け取ることになる』側は、北朝鮮になるかもしれない、ということだ。

20階建て鉄筋ビルを貫通して爆破する「大型貫通爆弾=MOP」

さて、冒頭のお約束通り《地中貫通核爆弾》を論じたい。 

バラク・オバマ政権は政権の最終盤に入って、ようやく北朝鮮の脅威に気付いた。昨年11月の政権引き継ぎ会談で、当時のオバマ大統領は大統領選挙を制したドナルド・トランプ次期大統領に「米国の最大脅威は北朝鮮」だと、自戒を込めて伝えた。

米国防総省も引き継ぎ直前、秘中の秘たる《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》の模擬弾投下試験を超異例にも公表。大統領選で激突していたトランプ候補とヒラリー・クリントン候補に、暗に覚醒を促した。

地中貫通核爆弾B-61タイプ11こそ、朝鮮人民軍がこもる地下要塞殲滅の切り札だ

朝鮮人民軍の指揮・統制施設や、核・生物・化学兵器&弾薬の貯蔵施設といった軍事中枢は、地下深くにあって分厚い岩盤+ベトン(コンクリート)で鎧われ、坑道も十重二十重に掘られている。

陸軍の火砲や地対艦ミサイルも坑道内を移動して、射撃時に「顔」を出す。空軍の軍用滑走路は低山の斜面をえぐって造られ、軍用機は通常、滑走路横の低山内の坑道に格納される。海軍基地も、沿岸部をくりぬいた坑道内に小型艦艇/小型潜水艦・潜水艇/半潜水艇を収容する。この種の海軍艦艇は、戦端が開かれる前や直後に工作員や特殊作戦部隊員を乗せ韓国近海に侵入、上陸して要人テロや軍・政治・経済中枢破壊を実行するプラットフォームになる。

2012年に国際問題誌ディプロマットは《軍事衛星の監視を外れる地下航空基地は20カ所、地下砲兵陣地は数千カ所》と報じる。

米軍は、国土が要塞化されている北朝鮮の特性を受け、地中貫通爆弾+核爆弾の組み合わせによる北攻撃を立案している、と筆者はみる。すなわち- 
(1)非核弾頭を搭載した通常型地中貫通爆弾=バンカーバスター
(2)核爆発力を抑えた「小さな核爆弾=ミニ・ニューク(戦術核)」
(3)通常型地中貫通爆弾では破壊できぬ深く堅牢な地下施設を破壊する、「小さな核爆弾」を装填した地中貫通核爆弾
-の3種類の使い分けだ。使い分けは作戦と予想される戦況によって変わる。

そもそも、軍用機や潜水艦を敵の攻撃から防護する掩体壕を撃ち抜く地中貫通爆弾=バンカーバスターは第2次世界大戦(1939~45年)時には実戦投入されていたが、イラクのクウェート侵攻で勃発した湾岸戦争(1991年)でも、イラク軍の地下司令部を無力化すべく使用された。

しかし、北朝鮮とイランが進める核・ミサイルの脅威が高まると、従来の地中貫通爆弾では地下施設に対して破壊力不足だとの実験・シミュレーション結果が判明した。そこで開発した切り札が、格段に大きな破壊力を有す《大型貫通爆弾=MOP》である。

米空軍のB-2ステルス戦略爆撃機の弾倉に搭載されるMOPは、1万メートルの高高度で投下され、猛烈な重力加速度を付けて落下する。弾頭部分は、弾着時の強烈な衝撃に耐えるように高強度鋼を鍛造して仕上げている。GPSや慣性航法装置による自律誘導で、発射された爆弾の半数が目標の2メートル範囲内に着弾する。

貫通力は、一般の分譲マンションが使用する鉄筋コンクリートの強度に比し、はるかに硬い標的を相手にしても、60メートル(20階建てビルに相当)も「深掘り」する。その倍の強度=超高層マンションの基礎部分の柱に使われる鉄筋コンクリートでも8メートルを突き進む。標準的な硬岩なら40メートル下まで達する。限界深度に到達後に起爆して、地下施設を吹っ飛ばす。

大型貫通爆弾=MOPのパワー・アップ費&生産費や、MOPのプラットフォームとなるB-2ステルス爆撃機の改修費について、米国防総省は2000年代に入り近年でも頻繁に請求→認められている。
 
対する北朝鮮の核・ミサイル施設は地下深く、鉄筋コンクリートや硬岩、鋼鉄などを巧みに組み合わせて構築されている。しかも、時間の経過とともに地下施設は補強され、強度を増している。

かくして、米国が「克服しなければならない課題」は多数残っている。けれども、「克服しなければならない課題」は着実に「克服」されているもようだ。

30センチ以下の動く対象を捉える米国の偵察衛星は移動式発射台のワダチをさかのぼり、核・ミサイル格納トンネルを特定する。

軍事利用している衛星の種類には資源探査型があり、地質構造・地表温度を識別して、地下施設・坑道の構造や深度が一定程度判別可能だ。

こうして長年蓄積し続けた膨大な量の偵察・監視資料を精緻に総合的に再分析する。すると、見えなかった地下施設が浮かび上がる。

例えば、地下施設建設前と建設後で、地上地形がどう変化していったか/地形変化のスピード/掘削機の能力割り出し/トラックで運び出される土砂の量/トラックで搬入されるセメント・鉄骨・鋼板などの量/労働者数…など。

地下施設といえども、兵器や技術者、軍人が出入りする出入り口は絶対に必要だ。換気施設も然り。絶好の監視対象であり爆撃ポイントになる。
 
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の秘密居所は地下150メートルともいわれ、MOPですら荷が重い恐れがあるが、先述の《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》であれば確実に粉砕する。

《電磁パルス(EMP)攻撃》と同様、地中貫通核爆弾B-61タイプ11は他の核搭載兵器に比べ、実戦投入のハードルは低い。爆発威力を抑えれば、地下での起爆であり、一般国民の住む地上の被害を抑え、核汚染被害も局限できる。地下に蓄えられる朝鮮人民軍の生物・化学兵器も、核爆発力を抑えた「小さな核爆弾=ミニ・ニューク」が発する熱波で蒸発→無害化に一定程度貢献しよう。

やっぱり、「贈り物」が届く先は金正恩委員長が震えながら閉じこもる「地下のお住まい」のようだ。

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