「米論文のシビアな結論」

画像の説明

「経営者がゴルフ好きだと業績は?」米論文のシビアな結論

トランプ米大統領はゴルフ好きで知られ、11月の来日時には、安倍首相とプロゴルファーの松山英樹選手とプレーした 

全米ゴルフ協会(USGA)など米国のゴルフ団体は、ゴルファーを「18歳以上で、過去12カ月に最低1回は規定ラウンドを回ったことがある人」と定義している。

その中で年間8~24回プレーする人を「コアゴルファー」、同25回以上を「アビッド(熱心な、貪欲な)ゴルファー」と定めている。

昔から「ゴルフは人脈を構築できるビジネスの有効なツールだ」といわれてきた。では、最高経営責任者(CEO)がゴルフに「アビッド」であればあるほど、その企業の業績は向上するのだろうか。

2008年3月に破綻した米投資銀行ベア・スターンズのCEOは、傘下のヘッジファンド2社が破綻した07年7月でさえ、21営業日中10日間もゴルフおよびトランプのブリッジをしていたという。

このテーマに正面から取り組んだ論文が、米マイアミ大学のL・ビガースタッフ准教授らが書いた「ファー!CEOの怠けに関する分析」(14年)である。同論文は、S&P500種株価指数を構成する企業の中から、CEOがUSGAのハンディキャップを保有している363社を抜き出し、彼らの08~12年のラウンド数と企業業績を分析したものである。

米国のメディアで頻繁に取り上げられる論文なので読んでみたところ、ゴルフ好きの企業幹部にとって極めて“冷酷”かつ“危険”な分析が展開されていた。

経営者のゴルフの頻度が高くなるほど業績は…

サンプルのCEOの年間平均ラウンド数は16回だった。ただし、ラウンド数上位25%に入るCEOの平均値は40回強、100回を超すCEOも数人いた。彼らは「アビッドゴルファー」といえる。

企業業績との関係を推計したところ、経営者のゴルフの頻度が高くなるほど業績は低下する傾向があるという。

例えば、ラウンド数上位25%に入るCEOの企業の総資産利益率(ROA)は、サンプル企業全体の平均より100ベーシスポイント(1%)も低い。

企業価値が増大しても経営者の報酬はあまり増加しない企業の場合、CEOはゴルフに頻繁に行く。一方で、個人資産の大半を自社株で持っているCEOのラウンド数は少ない。ラウンド数下位25%のCEOの自社株全体に対する持ち株の比率は1.82%だが、上位25%は1.09%と低い。また、CEOの在任期間が長いほど年間のラウンド数は多くなるという。

これに反論したいCEOは多いに違いない。ただし、ゴルフ場での社交が有用なケースは伝統的産業に多いだろう。

米東海岸のエリート層に比べると、西海岸のシリコンバレーにあるハイテク企業の幹部に「アビッドゴルファー」は少ない。もちろん例外もあって、アドビシステムズのCEOはハンディ1桁だが、近年はカイトボードを行う海岸がハイテク企業幹部の「ゴルフ場」といわれている。

なお、米紙「ワシントン・ポスト」(3月31日)によると、米大統領で在任期間中にラウンド数が多かったのは、ウッドロー・ウィルソン氏が1000回超、ドワイト・アイゼンハワー氏が800回超、バラク・オバマ氏が300回超だった(いずれも任期は8年間)。ドナルド・トランプ現大統領も頻繁に行っている。

ラウンド数と大統領職の関係を同紙が前掲論文の著者に尋ねたところ、「われわれの論文は他の物事に直接的には転用できないだろう」と返答されたという。

ちなみに、ホワイトハウスの報道官は、トランプ氏が日本の安倍晋三首相とゴルフをしたのは「深い関係を育成するため」と説明している。

コメント


認証コード0373

コメントは管理者の承認後に表示されます。