「商工中金」

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100店舗のうち、97店舗で不正が発覚──。不正融資問題を起こした政府系金融機関の商工組合中央金庫(商工中金)。内部調査の結果、驚きの全貌が明らかになった。

問題となったのは、災害などで業績不振に陥った企業に対し、国の税金を利用して支援する制度である「危機対応業務」。過剰な営業ノルマに追われた商工中金の職員が企業の財務諸表を改ざんし、本来ならば制度の対象外となる企業にも融資を行っていたのだ。

調査の結果、不正融資の総額は2646億円、不正を働いた職員は444人に上った。

事態の深刻さに経済産業省と財務省、金融庁は2度目の行政処分を決定。商工中金の安達健祐社長は、後任のめどが付いた段階で引責辞任する考えを示している。

今回の事件は、不正融資のあきれた実態のみならず、政府系金融機関の在り方も問われている。

というのも、こうした制度融資は民業の補完が目的で、民間の金融機関が融資を避けるような企業の救済のために、税金によって低金利で行われるもの。ところが、制度を利用する必要のない健全な企業にも適用し、結果的に地方銀行や信用金庫、信用組合の仕事を横取りしているからだ。

ある地銀幹部は、「当行が期間10年の変動金利0.5%という融資条件を出していた企業に対し、制度融資を使って期間10年の固定金利0.2%という破格の数字を後出ししてきた」と、商工中金に勝ち目のない貸出金利を提示されたことに恨み節を吐く。

実名通告で逃げ場なし

商工中金も、調査報告書に「(危機対応業務を)他の金融機関との競争上優位性の“武器”として認識していた」と明記。制度の悪用が、民業の圧迫につながっていたことを認めたかたちだ。

そして今、政府系金融機関に対して、民間が反撃ののろしを上げた。民間の金融機関が民業圧迫だと認識した事例を、企業の実名付きで通告しようとしているのだ。

これまでも、そうした事例の解決に向けて、定期的に話し合う場は設けられてきた。

2010年ごろから少なくとも年1回、財務省や金融庁、中小企業庁といった関係省庁と、民間の金融機関が会合を実施。その場には、地銀や信金から400~500件の問題事例が寄せられて、各省庁経由で政府系金融機関に通告してきた。

だが、それらは全て匿名だったため、「向こうの返答が『そのような事例は確認できませんでした』で終わってしまい、らちが明かなかった」(地銀関係者)。

そこで今回、くだんの商工中金の問題を足掛かりに、了承を得られた企業の事例を実名で通告することで、逃げ道をふさぐ構えだ。

年内にも実施される会合での通告を手始めに、民間の金融機関からの追及が厳しくなるのは間違いなさそうだ。

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