「若者の判断」

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今回の総選挙で、20代以下と30代の若者で内閣や自民党の支持者が多かったという調査結果が報道された(10月9日付け毎日新聞)。

「政治的な知識不足」「現状維持を望む」のほか、「(雇用状況の好転による)雇用の売り手市場」なども要因とされている。

だが、若者は本当に「右傾化」しているのか。

「自民支持」の若者は増えた
「右傾化」は若者より高齢者

この種の調査は、現時点での傾向はつかめるが、これまでの変化はわかりにくい。そこで、内閣府で継続的に行われている「外交に関する世論調査」を参考にしたい。

「右傾化」を判断する代表的なものは、中国への態度だろう。

この世論調査では、「中国に親しみを感じる」割合について、年代別の経年変化を追求できる。

全世代で見ると、中国に親しみを感じる割合は、1978年の調査開始以降、1985年6月には75.4%だったが、それ以降は低下し始め、1995年10月に5割を切り、直近の2016年11月では16.6%(20歳以上)まで下がっている。

雇用を重視する若者、安倍政権支持

世代別の数字を見ると、親しみを感じる割合は、1999年10月に全世代で49.6%、20代48.9%、60代47.4%と世代の差はほとんどなかった。しかし、2016年11月では、全世代で16.6%、20代(18,19歳を含む)31.1%、60代12.8%だ。

このデータから判断すれば、若い世代ほど「保守化」、「右傾化」していない。特に、2010年頃以降、20代と60代では、差が大きく、若い世代はそれほど数字が下がっていないが、高齢世代では大きく下がっている

中国への親しみ度の推移

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ところが、「自民党支持」について見ると、若い世代ほど支持する割合が高くなっている。より正確にいえば、若い世代は、それほど「右傾化」していないが、自民党支持が強い。

もっとも、これは、自民党というより第二次安倍政権の特徴である。実際、民主党政権への政権交代を許したときや第一次安倍政権の時は、若い世代の「自民党支持」はそう高くはなかった。

雇用を重視する若者
第二次安倍政権を支持

なぜ、それほど「右傾化」していない若い世代が自民党支持で、「右傾化」している老齢世代で自民党支持が少ないのか。

筆者が思うに、若い世代は雇用を重視し情報はテレビ以外から入手する。

一方、高齢世代は雇用の心配がなく時間があって、情報をテレビばかりに頼っているからだと思う。

大学教員をしているのでよくわかるのだが、大学生にとっての最大の関心事は就職である。初めての就職がうまくいくかどうかは、その後の人生を決めるともいえる。

民主党政権時は、残念ながら就職率は低く、就職できない学生が多かった。 ところが安倍政権になってから就職率は高まり、今では就職に苦労していない。正直言って学生のレベルは同じなのだが、政策によって就業者数にこれほどの差が出るとは驚きだ

◆図2:就業者数の推移

高齢者は雇用に無関心、「安倍批判」

また、今の学生は情報をネットなどから入手するので、安倍政権批判がなされることがしばしばのテレビをあまり見ない。

雇用に無関心の高齢者
テレビの「安倍批判」受け入れ

老齢世代は若い世代の真逆だ。

就職の心配はないので、雇用に無関心だ。そして、情報をテレビに依存するので、安倍政権批判に染まりやすい。雇用重視の安倍政権の政策は、本来なら左派が力を入れる政策なので、「右傾化」していない若者にも受けるのだろう

一方、高齢世代は雇用に無関心だが、マスメディア、とりわけテレビから受ける影響は大きいと考えられる。

これは、総務省による「平成28年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」でも裏付けられるので、それを中心に見ておこう。

たしかに、平日は、テレビの平均利用時間は年々減少している。一方、インターネットの利用時間は増加している。ここ5年で、テレビ(含む録画)は平日1日あたり201.7分が186.7分と15分減っている。

◆図3:平日主なメディアの平均利用時間

一方、インターネットは71.6分が99.8分と28.2分も増加している。そのあおりを受けて、テレビとともに新聞は15.5分から10.3分と5.2分も減っている。この調査にはないが、本、雑誌の読書も減っているのだろう。

テレビがメディアのトップから陥落するのはまもなくともいわれているが、なかなかテレビもしぶとい。

テレビからの情報がほとんどの高齢者

日本でも、休日ではテレビの平均利用時間はほとんど減っていない(図5)。

◆図5:休日主なメディアの平均利用時間

こうしたテレビを支えているのが、高齢世代だ。

これは、世代別のメディアの平均利用時間(図6、図7)を見れば明らかだ。平日、休日ともに、若い世代はインターネットネットもテレビも利用が多いが、高齢世代ではテレビ中心である。

◆図6:平日の主なメディアの平均利用時間・年代別

◆図7:休日の主なメディアの平均利用時間・年代別

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以上のデータから浮かび上がるのは、若い世代は意外なほど「右傾化」しているわけではないということだ。

雇用の改善は安倍政権のおかげと実感

また、身の回りで雇用状況がよいことを知っており、これは安倍政権のおかげであると実感している。

テレビで安倍政権批判があってもあまり見ていないが、ネット上では、逆に既存メディア批判が多く、安倍政権批判が少ないこともあって、雇用状況の良さがそのまま安倍政権支持につながっているといえよう。

逆に高齢世代は結構、「右傾化」している。

年金生活に入ろうとするわけなので、雇用状況にはあまり関心がない。

この世代は、高度成長の恩恵を受けてきており、就職にも苦労がなく、その後、古き良き伝統の終身雇用制の恩恵を受けてきたので、そもそも雇用は当たり前になっていて苦労をあまり知らない。

最近では、時間に余裕があり、テレビを見る時間が多い。そこで繰り返される安倍政権批判を無条件に受け入れる傾向がある。

かといって、テレビ以外から情報を得ようとしないし、鬱憤を安倍政権批判で紛らわし、自民党支持が少なくなっているのではないか。

さて、22日の衆院選投票である。

若い世代の投票率は高くないためその世代の支持が強い党は、必ずしも選挙で有利とはならない。主要メディアの世論調査では今のところ、自公で議席は300を超す勢いだが、どうなるか。

まして投票日には、台風が日本列島を直撃する可能性が高い。これは自公共に有利、その他には不利に働く可能性がある。

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