「素晴らしい会社」

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残業ゼロ。日本一労働時間が短い会社が上げ続ける驚異の利益率
顧客より「社員の幸せ」を第一に考える会社が繁栄するのはなぜか

今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』で著者の伊勢雅臣さんが取り上げられた未来工業株式会社もそのひとつ。同社の社員たちは、どのような待遇を受けているのでしょうか。

未来工業~日本人の美質に立脚した経営

岐阜県に「日本一労働時間が短い会社」と呼ばれる企業がある。電気設備資材などの製造販売を行っている未来工業株式会社である。

休日の多さは日本一、残業ゼロ、給料は地域でトップレベル、それでいて利益率も驚異的だ。平成25年度は売上高314億円で営業利益38億円、営業利益率はなんと12%超。日本企業の平均的な利益率は3%程度というから、その4倍である。

同社が沖縄に営業所を開いたときのこと。

ところで、後日、正式の社員になったその女の子から、経理に「給料をもらったけれども、数字が間違っています」と電話がかかってきたという。よくよく聞いてみると、「今までの給料の倍はあります。ぜったい計算違いです」と怒っていたというのだ。
 
経理はびっくりして、「いや、これは未来工業の規定だから」と返事をしたらしいが、それだけではなかった。またまた騒動がもちあがった。
 
正月休みで休んでいたら、その子のおっかさんが、「あんたいつの間にクビになったの。なぜ正直に言わないの」と、さんざん怒ったというのだ。

…沖縄の正月休みはふつう3日程度だ。それが、20日近くも休みなのだから、おっかさんにはとても信じられなかったのだろう。

(『日本でいちばん社員のやる気がある会社』山田昭男 著/中経出版)
「社員を低賃金で長時間こき使ったほうがトク」か?

休日が多いからと言って、1日の就業時間が長いわけではない。朝8時30分から夕方4時45分までで、5時には会社の中はガラーンとなる。なぜ、こんなに労働時間を短くするのか。創業者の山田昭男氏はこう語る。

そもそも、日本の中小企業をみると、「社員を低賃金で長時間こき使ったほうがトクだ」と考えている経営者が少なくない。だが、本当にそうだろうか。
 
中小企業には凡人が集まっている。ズバ抜けた能力を持っている者が多いわけでもない。その社員に不満をもたれたら、ただ給料をもらうために会社に来ているだけという状態になり、目も当てられない結果を招くことになってしまう。
 
せいぜい、社員に不満をもたれないようにして、それなりにがんばってもらうしかないのではないか。

日本の会社員の代表的な不満の一つが、自分で使える時間の少なさだろう。山田氏はこう社員に語る。

ふつうの会社の場合、朝7時に家を出て、夜7時にはうちに帰る。つまり、通勤時間も含めて12時間を会社のために使っている。そうすると、残りは12時間や。そのなかで8時間は寝てる。すると、残りは4時間や。
 
その4時間ぐらいは自分の時間だろう。せっかく生まれてきてや、残りの4時間まで会社のために働いてどうするんじゃ。せめてその4時間の自分の時間くらい大事にして自分の好きなように使えや。それを残業で全部潰して、何がおまえ人生の価値があるんや。

冒頭に登場した女性社員なども、今までの給料の2倍も貰い、そのうえ正月休みを19日も貰ったら、「自分なりに頑張らないと申し訳ない」と思うだろう。社員全員がそういう気持ちになれば、会社全体では「社員を低賃金で長時間こきつかう」会社よりも、何倍もの業績をあげる事ができる、ということを未来工業は実証している。

「16日間も休んでお客さんに迷惑がかかってもいいのか」

しかし、普通の企業で、こんなに長い休みをとったら、お客さんに迷惑がかかるのではないか、と心配になる。

未来工業でも平成2(1990)年に会社設立25周年を迎えた年末に、上海、台北、ソウル、サイパンなどへの3泊4日の社員旅行に招待する、という企画をたてた。前後の休みも入れると16日間の休みとなる。

お客さんからどんどん注文が入る年末のいちばん忙しい時期に、16日間も休んで、迷惑がかかるのでは、と心配する社員に、山田さんはこう答えた。

誰も迷惑をかけていいとは言うてない。ピタッと休んで、残りの日でお客さんに迷惑をかけずにすむ方法を考えろ。ただし、ローテーションを組んで、交代で休む、なんてことはやるな。そんな平凡なことはどこでもやってるぞ。

社員の考え出した「方法」の一つは、お客さんに倉庫の鍵を預けることだった。もし急に商品が必要になったら、倉庫を開けて持って行ってください、というわけである。

そのほかにも社員はいろいろな工夫をして、その月に創業以来、最高の売上げを達成したのには、さすがの山田さんも驚いたという。
「すでにあるもの」は作らない
「女の子に代わってくれ」

実際に未来工業の社員たちが、日頃、どのように頑張っているのか、もう少し現場を見てみよう。お客さんから営業部への電話は、担当の女性社員が12人いる部屋に入るようになっていて、彼女らが用件を聞いて、対応している。

そしてそのために、女性社員たちは一生懸命、努力している。たとえば、次々とつくられる新製品をその部屋に運び込んでは、実際に手に触れながら、どんな製品なのかをいち早く説明できるように勉強している。
 
また、自社製品のパンフレットだけではなく、他社製品のパンフレットも揃えてあるし、他社の製品ポスターが貼ってあったこともあった。メーカーによって製品名が違うことがあるが、他社の商品名を言われても、すぐに対応できるようにするためだ。
 
その成果もあって、いまでは、女性社員が出られずに男性社員が出ようものなら、お客さんから「女の子に代わってくれ」と言われるほどだ。それだけ信頼されているし、お客さんを待たせない。

多くの企業では男性営業マンが外回りしている間に、お客から電話がかかってくると、女性社員は伝言をメモするだけで、あとは男性社員が帰社してから対応する、という職場が多い。これでは女性社員に、いくら低賃金、長時間労働をさせても、事業成果には繋がらない。

これに比べれば、未来工業の女性社員のような仕事をしてくれれば、2倍の給料を払い、労働時間を大幅短縮してもお釣りがくるだろう。

そして、女性社員たちが新製品を手にとって勉強したり、競合先の商品名まで覚えようとするのは、彼女たち自身で「こんなに給料と休みを貰ったら、それだけ頑張らなければ」という気持ちがあればこそである。

「ほかにあるものはつくらん。ほかにないものをつくる」

製品開発部門の頑張りもすごい。現在、1万6,000点ほどの商品があるが、「ほかにあるものはつくらん。ほかにないものをつくる」を鉄則として、全商品、なんらかの差別化がされている。

とは言っても、電気設備資材は寸法や材料まで規格が法律で細かく定められているものが多く、技術的にも成熟した分野なので、革新的な商品の出る余地は少ない。

その中での差別化の好例に、創業当初に出したスイッチボックスがある。スイッチを木ねじで柱などに固定する器具だが、当時は木ねじを通すための穴が、底の部分に対角線上に2つ空いているのが常識だった。

だが、未来工業では同じものは作らないと決めていたから、なんとか工夫できるネタはないかと調べてみると、規格で縦横寸法は決まっていても、穴の場所や数については規格がない事が分かった。

そこで箱の四隅に穴を開けた商品を考え出し、スライドボックスと名付けて売り出した。穴が対角線上に2つしか空いていないと、柱が細い場合、一カ所でしか止められない。しかし、4つ空いていれば、縦横斜めのいずれか2カ所で、しっかり固定できる。これが電気工事業者に受けて、ヒット商品になった。

こんな小さな工夫を積み重ねてやっているうちに、スライドボックスのシェアは70~60%に伸びていった。

このように差別化された商品が1万6,000点も生まれたのも、開発部門、製造部門、そして営業部門の担当者が、それぞれやる気を出して、自分の仕事に取り組んでいるからだろう。12%もの利益率はその当然の結果なのである。

「社員はノルマなんかで縛られたくない」

とはいえ、能力や個性は人それぞれである。結果を出す人と出せない人を、どう評価し、どう処遇するのか。多くの企業では目標管理と称して、社員一人ひとりにノルマを与え、その達成状況で、給与やボーナスを上げ下げする。

日本の会社はノルマがあるのが当たり前になっている。だが、社員はノルマなんかで縛られたくない。それが偽らざる本心だ。
 
実際、私だって、そんなもんに縛られるのはイヤだ。だから未来工業はノルマを課さない。これも差別化だ。
 
「ノルマなしだぞ、だからやる気を起こして精一杯働きなさい」という論理なのだ。

そもそもノルマを与えて、それを達成したらエサをやるぞ、という発想は、会社が社員を信用していないからだ、と山田さんは指摘する。

未来工業はノルマもないから、売上げを伸ばしても、伸ばさなくても、同じ給料を払いますということになっている。そうすると、売上げを伸ばしている社員から不満が出るだろうという話になる。事実、不満も出てくることもある。

「これだけもらっているのだから、これだけやらなけりゃいけない」
この問題に対する山田さんの答えは明快だ。

だが、自主性と自覚のある社員は努力してでも、自分が任せられていることを果たそうとする。そして、そこまでやっていると、やってない社員は非常に気が引けてくる。
 
それに、社員のなかにも新しい価値観が生まれてきて、やってない社員はこう言われるようになる。
 
「おまえはやっているやつの働きから給料もらうんだから、やってるやつのほうに足向けて寝るなよ」
 
つまり、これだけもらっているのだから、これだけやらなけりゃいけないという思いを自然に持てるようにしなければならないということだ。

「こんな処遇をして欲しいなら、これだけ成果を出せ」と言われるよりも、「こんなに処遇されているのだから、これぐらいやらなくては」と思う方が、人間の素直な感謝と報恩の感情に根ざしているだけに、はるかにやる気も出る。

同様に、充分な働きができない社員も、自分なりにできることは頑張ろうとすれば、できる社員の不満も和らぐ。そこからチームワークが生まれ、互いの得手不得手をカバーしながら、会社全体としての業績を達成しようというやる気が生まれる。

社員一人ひとりが「オレがオレが」と競争意識を持ち、足の引っ張り合いをする企業に比べれば、段違いの業績につながってくる。

日本人の美質を生かした経営とは
日本人の美質を最大限に生かした経営

未来工業の経営はどこででも実現できるものではない。社員の一人ひとりが「こんなに処遇されているのだから、これぐらいやらなくては」と感謝と報恩の気持ちを持っている事、そして力のない同僚に対しても、「あいつなりに頑張っているのだから」と思いやりを持っている事を前提として成り立っている。

これに対して「自分はこれだけ成果を出しているのだから、もっと給料を貰って当然」と欲の皮を突っ張らせたり、「あいつは成果を出してないのに、なぜオレと同じ給料を貰っているのか」などと不平不満を抱くような社員が多かったら、うまく行かないだろう。

日本の社会には、感謝、報恩、思いやりの気持ちを持つ人々が多い。未来工業はその日本人の美質を最大限に発揮させる経営によって、従業員の満足と業績を両立させている。

「オレがオレが」と他を押しのけることを当然とするような国民が多い国で、未来工業の経営を真似したら、目も当てられない結果となろう。

未来工業のような経営が可能であるという事は、他国には真似が困難な、我が国独自の強みなのだ。

このような企業がさらに増えていけば、我が国はさらに経済的豊かさと国民の幸福の両立する国になっていくだろう。

そうした日本のあるべき「未来」を未来工業は指し示しているのである。

MAG2

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