「自然破壊のツケ」

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人為的な地震は150年間で728件発生、最新報告
四川大地震とネパール大地震も、主な原因は資源採掘とダム

8万人以上の死者・行方不明者を出した2008年の四川大地震(M7.9)、記憶に新しい2015年のネパール大地震(M7.8)も人為的な地震だったという。

地震は予測のできない天災だと考えられているが、最近ではそうとばかりは限らないようだ。

10月4日付けの学術誌「Seismological Research Letters」に発表された研究によると、過去約150年の間に、人間の活動が原因の地震が728カ所で起こったという。人間が地震活動に影響を及ぼす例があることは以前から知られていたものの、マグニチュード7.9という大地震も引き起こしたという発表は、他の研究者らを驚かせている

地震の回数は現在、世界の一部地域で明確な増加を見せている。自然に起こる地震と同じく、人為的な地震も命に関わる危険をはらんでいる。そうした地震が人間や環境に及ぼす影響については、今ようやく解明が始まったばかりだ。

人為的な地震の原因はさまざま

人間が引き起こす地震の影響は、自然地震のそれと似ているが、過去に地震活動がほとんど、あるいはまったくない地域で起こる場合が多い。自然地震の大半は、地殻を構成するプレートが集まる場所に多い断層沿いで発生する。しかし人間の活動が原因の地震は、プレートの境界から遠く離れた場所でも起こることがある

地震を引き起こす人間の活動はさまざまだ。

発表されたデータによると、世界中で最も多い人為的地震の原因は資源の採掘だ(271カ所の採掘現場周辺に多くの地震が集中している)。地中から資源を取り出すことによって安定性が失われ、あるとき突然に崩壊して地震が引き起こされる。

ダムの建設も、167カ所の現場で地震を引き起こしている。しかもその規模は、数ある地震の原因の中でも群を抜いて大きい。

2008年、中国四川省でマグニチュード7.9の地震によっておよそ8万人の死者・行方不明者が出た。研究者らは、この四川大地震は紫坪埔ダムに貯えられた3億2000万トンの水の重量が引き金になったと考えている。紫坪埔ダムの下に断層線が通っているのは広く知られている事実だ

米国の場合、人為的な地震は主に、近年多くの州で導入されつつある石油・天然ガス採掘のための水圧破砕法が原因と言われている。

米地質調査所によると、水圧破砕法が引き起こす地震には、直接的なものと、作業の過程で排出される廃水によるものがある。この廃水は再び地中に高圧で戻されるので、さらに奥深くにある岩盤の断層を滑りやすくしてしまう

人為的な地震は世界中で増加していくでしょう」

今回の研究では、水圧破砕自体による地震が29カ所、水圧破砕後に起こる廃水の注入によるものが36カ所、また何らかの石油・ガス掘削に関わる廃水による小規模な揺れが12カ所で生じていたことがわかった。水圧破砕法による掘削が盛んに行われてきたオクラホマ州の場合、以前は比較的地震が少なかった地域において、年間数百回にのぼる小規模の地震が起こっている。

この他にも、核爆発による地震が22カ所、工事現場での地震も2カ所で確認されている。

「人間が行う事業はすべて、地殻の活動に影響を及ぼします」。データを収集した英ダラム大学の地球物理学者マイルズ・ウィルソン氏はそう語る。

「たとえば、地中に大量の物質を加えたり取り去ったりすれば、地球がその変化に反応するのは当然のことで、その反応が地震になることもあるわけです」

「人為的な地震は世界中で増加していくでしょう」

ウィルソン氏が収集した人為的地震の記録は、古いものでは1868年前まで遡る。この記録をまとめたデータベース「HiQuake(Human-Induced Earthquake)」では、地震の日付、地域、マグニチュード、場所、原因などを確認できる。

HiQuakeでは、ユーザーが加えるべきケースを報告する窓口も用意されている。

データベースによると、過去10年間では人為的地震が108カ所で発生しており、その規模は比較的小さいものからマグニチュード5.8までさまざまだ。こうした地震の大半が発生しているのは米国とカナダで、原因は地中への廃水の注入だという。

「長期的には、人為的な地震は世界中で増加していくでしょう。地球に影響を及ぼす事業の数と規模は増えていますから」とウィルソン氏は言う。

鉱石や石炭の採掘も大規模化が予想される。現在、採掘坑の規模はますます大きくなり、地下深くへと伸びている。こうした活動が地中を不安定にし、さらに多くの大規模な揺れを誘発するだろうとウィルソン氏は警告する。

「人間の活動が、蓄積された力を解き放つ最後の一撃になることもあるのです」

この研究は、自社の事業が環境に与える影響を調べたいというオランダのネーデルランセ・アールドオイリー・マートスカパイ社の委託も受けて行われたものだ。ウィルソン氏は、地震をより深く理解することが、その影響を最小限に抑えることにつながると考えている。

地面を掘り返したり、廃水を地中に注入したりすることをすぐにやめることはできないだろう。それでも、2008年の四川大地震のような大災害に対する備えを充実させることはできるとウィルソン氏は言う。

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