「ミサイルを打ち落とすこと」

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京都「正論」懇話会の第56回講演会が9月13日、京都市上京区の京都ブライトンホテルで行われ、元海将の伊藤俊幸氏が「安倍首相による加憲論~日本の安全保障の行方」と題し、講演した。講演要旨は次の通り。

攻撃を受けてから一生懸命抵抗する-のが専守防衛ではない

専守防衛が基本姿勢の日本は攻撃を受けてから一生懸命抵抗する、というイメージがあるが、これは違う。2003(平成15)年に成立した武力攻撃事態対処法と国民保護法で、日本政府はミサイル攻撃にどう対処するかすでに決めており、自治体はそれに基づく行動計画がある。

法律に基づいて、首相は武力攻撃を受けたと認定する。また、わが国に対する明確な危険、例えば、中国が尖閣諸島へ軍艦で迫ろうとしているときに、首相は認定することができる。

海上自衛隊の潜水艦、また航空自衛隊の航空機は相手の領海には入らないが、公海上で敵を待ち受ける。敵が公海が入ったとき、われわれの潜水艦は、相手の軍艦を沈めることができるようになっている。

専守防衛は攻撃されてから押し返すのではない。交戦権の否定は、他国の領土、領海では交戦できないという解釈で、日本が向かってる敵を排除することができる法律はすでにできている。

首相が加憲論を考える理由はそこにある。武力攻撃の手前の存立危機事態や朝鮮半島の有事もすでに想定されている。日本政府が法律を積み重ねた結果、一定の条件で日本を守れるという自信があるので、自衛隊の存在を憲法で明確にすればよいというのが首相が言う加憲論だ。

米国に自衛権を発動させるようなばかなことはしない?

戦争を始めるとき、その戦争が正しいかどうか判断する基準は現代社会では国連憲章。安保理で武力制裁決議があり、初めて他国に武力行使していいことになっている。これが国際ルールで、米国が(北朝鮮に)先制攻撃をしないのは、これが原因だ。

米国は、今やろうとする戦いが国際ルールに合うか、どこに根拠があるのか、ものすごく固執する。米国ほど、国際法上の根拠にこだわる組織体はない。このため、北朝鮮が核実験をやっても、(米国が北朝鮮を)空襲するのとは結びつかない。

北朝鮮については、すぐに戦争が起きるんじゃないか、と心配されていると思う。しかし、私はいきなり、北朝鮮が日本にミサイルを撃つことはないと考える。

北にとっての体制維持は半島統一にある。南(韓国)は同胞の彼ら(北朝鮮)と戦争するつもりはない。戦いにならないのは(北朝鮮と韓国が)ひとつの国だから。一方、北朝鮮が日本に(ミサイルを)撃てば、さすがに国際問題になる。

仮に北朝鮮が日本に撃つのならば、第2次朝鮮戦争が始まった後だ。最初に戦争が起こるなら、韓国との戦争になる。平時で北朝鮮が日本に撃ったら、大戦争になる。米国に自衛権を発動させるようなばかなことはさすがにしない。

日本防衛をある程度できるのが「加憲論」

米国は北朝鮮に対し話し合いをしながら、挑発行為はやめるべきという姿勢だ。

しばらくは米国を中心にまずは北朝鮮に圧力をかけながら、核放棄を求める。日本も続くだろう。ただ、最後は本当に戦争しかなくなるが、私は戦争を選択するのではなく、(北朝鮮の)核保有国という立場を認めた上で核抑止という軍備管理の方策もあるのではないかと考えている。

日本がやるべきことは、イージス艦でまずミサイルを撃ち落とす。日本海にイージス艦が2隻あれば、日本全土をカバーできえる。もし撃ち漏らしたら、陸上に配備したPAC3が撃つ。もし大量のミサイルが日本に撃ち込まれるなら、イージス艦がずらりと日本海側に並んで、日本を守ることになる。

首相がまずは、加憲だけを言うのは、日本を守れる体制が整備されたからだ。そうでなければ、もっと踏み込んだ(憲法の)改正をしなければならない。日本防衛をある程度できるのが加憲論という理屈になっている。

主な質疑応答

--北朝鮮は、国際法が頭の中にあるのか

北朝鮮は国際法を分かっている。おそらく米国が手を出さないだろう、自衛権を発動できないぎりぎりで、挑発行為を続けている

--イージス艦の迎撃ミサイルのボタンは首相が押すのか

破壊措置命令によって本来、首相が押すボタンを現場の指揮官に委任している。イージス艦は2分でミサイルの着地点が分かるので、日本に落ちるなら指揮官がボタンを押す。ミサイル攻撃に対しては破壊装置命令で委任されている。

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