「化けの皮」

画像の説明

トランプ政権の迷走でますます存在感を強める習近平・中国だが、その経済が「張り子の虎」である証拠を、本誌は入手した。出るわ出るわ、国有企業のインチキ経理の数々。やはり正常な国ではない。

「中国に経済学などない」

7月14日と15日、北京で全国金融活動会議が開かれた。共産党大会直前に、主な幹部が全員出席して行われた5年に一度の金融分野での重要会議だ。

習近平主席が長い演説を行った初日の会議終了後に、異変は起こった。中国共産党序列14位の孫政才・重慶市党委書記(53歳)が突然、身柄を拘束されたのである。

現役の中央政治局委員(トップ25)であり、今秋の第19回共産党大会で習近平主席の後継者になるとも目されていた幹部が引っ捕らえられたことで、金融問題の会議どころではなくなってしまった。

ある北京の経済官僚が明かす。

「党中央(習主席)に逆らうと恐ろしい報復が待っていることを見せつけたのだ。先日も、共産党の学習会の席で、習主席の最大の経済ブレーンである劉鶴・中央財経指導小グループ主任の最新の訓示が配られ、そこにはこう書かれていた。

『中国に純粋な経済学などない。あるのは政治経済学のみだ。習近平総書記を核心とする党中央が指導する経済学に従うことこそが、国務院(中央官庁)と国有企業に課せられた重大な使命である』

昨年11月には、『お上ではなく市場を見て仕事しろ』と常々言っていた楼継偉財政部長(財務相)が突然、閑職に追いやられた。

国有企業の経営者たちは、党中央に従わないと、たちまち『腐敗分子』のレッテルを貼られて逮捕される。ついこの間も国有企業18社が、見せしめに遭ったばかりだ」

この経済官僚が言う見せしめとは、6月23日に、中国の会計検査院にあたる審計署の胡沢君署長が、全国人民代表大会(国会)常務委員会第28回会議の席上で、驚愕の発言を行ったことを指している。

「全国101社の中央政府管轄の国有企業のうち、20社をピックアップして財務状況をチェックしたところ、18社で不正が発覚した。

18社がここ数年間で水増ししていた売り上げの合計は、2001億6000万元(約3兆3200億円)に上り、水増ししていた利益は、202億9500万元(約3370億円)に上った。

これは18社の同時期の全売上高の0.8%、全利益の1.7%に当たる。われわれは直ちに、計309人を処分した」

本誌は、この時国会で報告された「審計結果公告」の全文を入手した。不正経理が発覚した18社は、エネルギー、自動車、鉄鋼、鉄道など多岐にわたり、いずれも中国を代表する巨大国有企業である。

その詳細は、ページ末の表を参照いただきたいが、たしかに日本企業の常識からは考えられないデタラメな経営ぶりに呆れ返ってしまう。

不正が止まらない

トランプ政権の迷走でますます存在感を強める習近平・中国だが、その経済が「張り子の虎」である証拠を、本誌は入手した。出るわ出るわ、国有企業のインチキ経理の数々。やはり正常な国ではない。

「中国に経済学などない」

7月14日と15日、北京で全国金融活動会議が開かれた。共産党大会直前に、主な幹部が全員出席して行われた5年に一度の金融分野での重要会議だ。

習近平主席が長い演説を行った初日の会議終了後に、異変は起こった。中国共産党序列14位の孫政才・重慶市党委書記(53歳)が突然、身柄を拘束されたのである。

現役の中央政治局委員(トップ25)であり、今秋の第19回共産党大会で習近平主席の後継者になるとも目されていた幹部が引っ捕らえられたことで、金融問題の会議どころではなくなってしまった。

ある北京の経済官僚が明かす。

「党中央(習主席)に逆らうと恐ろしい報復が待っていることを見せつけたのだ。先日も、共産党の学習会の席で、習主席の最大の経済ブレーンである劉鶴・中央財経指導小グループ主任の最新の訓示が配られ、そこにはこう書かれていた。

『中国に純粋な経済学などない。あるのは政治経済学のみだ。習近平総書記を核心とする党中央が指導する経済学に従うことこそが、国務院(中央官庁)と国有企業に課せられた重大な使命である』

昨年11月には、『お上ではなく市場を見て仕事しろ』と常々言っていた楼継偉財政部長(財務相)が突然、閑職に追いやられた。

国有企業の経営者たちは、党中央に従わないと、たちまち『腐敗分子』のレッテルを貼られて逮捕される。ついこの間も国有企業18社が、見せしめに遭ったばかりだ」

この経済官僚が言う見せしめとは、6月23日に、中国の会計検査院にあたる審計署の胡沢君署長が、全国人民代表大会(国会)常務委員会第28回会議の席上で、驚愕の発言を行ったことを指している。

「全国101社の中央政府管轄の国有企業のうち、20社をピックアップして財務状況をチェックしたところ、18社で不正が発覚した。

18社がここ数年間で水増ししていた売り上げの合計は、2001億6000万元(約3兆3200億円)に上り、水増ししていた利益は、202億9500万元(約3370億円)に上った。

これは18社の同時期の全売上高の0.8%、全利益の1.7%に当たる。われわれは直ちに、計309人を処分した」

本誌は、この時国会で報告された「審計結果公告」の全文を入手した。不正経理が発覚した18社は、エネルギー、自動車、鉄鋼、鉄道など多岐にわたり、いずれも中国を代表する巨大国有企業である。

その詳細は、ページ末の表を参照いただきたいが、たしかに日本企業の常識からは考えられないデタラメな経営ぶりに呆れ返ってしまう。

不正が止まらない

④党中央の「八項規定」(贅沢禁止令)違反
・'14年、傘下の広東省の販売子会社が、給与の総額規定をオーバーして、中間管理職に133万元(約2200万円)のボーナスを支給していた。

・'13年、内部の会議で31万6800元(約525万円)分の高級酒などを消費した。

・'13年、傘下のタリム油田の支店で、公費3万8600元(約64万円)を使って、社員旅行に行った。

⑤以前からの問題

・傘下の西南油田ガス田公司が、'12年末までに終える予定だった退職者1336人分の未払い金計687万2100元(約1億1400万円)が、いまだに滞っている。

ここに記したのは38項目中、16項目にすぎないが、まさにデタラメの経営を行っていたことが分かる。本誌が北京の中石油本社に電話して聞いたところ、「ノーコメント」の一言だった。

この中石油の不正経理に関して、冒頭の中国の経済官僚に質すと、次のように述べた。

「中央政府が管轄する国有企業は101社もあるのに、なぜ中石油ばかりがヤリ玉に挙げられるのか。それは巨大なエネルギー利権を持っていながら、習近平主席に忠誠を誓わないからだ。

中石油内部には、いまだに習主席の最大の政敵である江沢民元主席とつるんでいる幹部たちがいる。そのため党中央としては、秋に共産党大会を開く前に、中石油を再度叩いたというのが、今回の審計署の調査の真相なのだ」

この経済官僚の証言によれば、話は'13年に遡る。習近平国家主席が誕生したのが、この年3月の全国人民代表大会。この同じ時、江沢民元主席は、子飼いの蒋潔敏・中石油会長を、国有資産監督管理委員会の主任に抜擢させた。

このポストは、中石油はもちろん、中国のすべての基幹産業を握ると言われる全国1000社余りの国有企業を統括する重要ポストで、大臣級である。

ところが、習近平主席はこの年9月初旬、就任してまだ半年も経っていない蒋潔敏主任を、この重要ポストから引きずり下ろしてしまった。そして「腐敗分子」のレッテルを貼り、懲役16年の刑に処したのである。

習近平主席は続いて、中石油の王永春副社長、李華林副社長、子会社の冉新権副社長、王道富総地質師の4幹部を一網打尽にした。そうしてこの巨大なエネルギー企業を、「江沢民の会社」から「習近平の会社」へと換骨奪胎しようとしたのだった。

成長率の大ウソ

だが、巨大国有企業に25年近く根付いてきた「江沢民利権」を引き剥がすのは、容易ではなかった。そこで習主席は昨年6月、再び中石油の王宜林会長を引っ捕らえた。

この時は同時に、国有資産監督管理委員会の徐福順副主任、中石油と並ぶ巨大国有石油会社である中国海洋石油総公司(CNOOC)の楊華会長も引っ捕らえた。

3人で合わせて、公金9億4970万元(約157億円)を横領したという容疑だったが、3人は江沢民元主席との親密な関係で知られた。
つまり、国有企業の経営もデタラメだが、国有企業を利権としか見ない政治指導者もまた、問題なのだ。

「6.9%成長」の大ウソ

中国の国有企業事情に詳しいシグマ・キャピタルの田代秀敏チーフ・エコノミストが解説する。

「この18社は、中国経済の4割を占める国有企業の中核で、IT産業を除く各分野で圧倒的シェアを握っています。この中の東風汽車公司が日産、ホンダと合弁するなど、日本企業にとっても重要です。

党中央に経営を指導される国有企業幹部は、党内での昇進を最優先するので、経済合理性を軽視し、腐敗が横行しています。江沢民も胡錦濤も失敗した民営化抜きの国有企業改革に習近平も失敗したら、中国経済は停滞します」

中国国家統計局は7月17日、「今年上半期のGDP成長率は6.9%に達した」と、自信満々に発表した。だが前出の経済官僚によると、その実態はひどい「ドーピング経済」だという。

「地方自治体は昨年末時点で15兆3200億元(約250兆円)もの債務を抱え、少なからぬ国有企業が〝ゾンビ企業〟と化している。

そのため党中央は、国有企業の傘の下に民営企業を呼び込んで、地方のインフラ投資を進めていくPPP(官民パートナーシップ)を奨励していて、その額は今年3月末時点で、14兆6000億元(約240兆円)に膨れ上がっている。

つまり国有企業のゴタゴタを民営企業が尻拭いさせられているのだ。

秋の共産党大会では、改革派筆頭の李克強首相の解任が発表されると噂されている。国有企業の民営化や小さい政府の実現を訴えていた李首相が解任されれば、中国経済はいよいよ暗黒時代に突入する。

不良債券まみれで経営が不透明な国有企業は焼け太りして、ますます共産党の集金マシンと化し、民営企業は健全に発展していかないからだ」

共産党が支配する中国経済は虚飾に満ちている。

コメント


認証コード5413

コメントは管理者の承認後に表示されます。