「なるほど」

画像の説明

金利2%に上昇したら不動産価格は半額になる? 学習院大教授・伊藤元重

株価や不動産価格が高すぎる。今後、こうした価格が下落していく可能性に備える必要がある。こうした指摘を内外のいろいろな論考で読むことが多い。確かに、米国でも欧州でも金利上昇の局面にあり、金利上昇が続けば、不動産や株の資産価格下落の原因ともなりうる。

では、仮に金利が1%から2%に上昇したとしたら、不動産価格はどれだけ変化するのだろうか。答えは難しい。税金、人々の予想、不動産への需要など、さまざまな要因が影響を及ぼすからだ。ただ、単純な経済計算によれば、金利が1%から2%に上がれば、不動産価格は半分になってもおかしくないという結論が出てくる。これは少し考えれば難しい話ではない。

例えば、毎月10万、年間で120万円の家賃を生み出すアパートを想定してほしい。1%の金利でこのアパートへの投資が採算に合う金額はいくらだろうか。その答えは1億2千万円になることが分かるはずだ。1億2千万円を債券投資に回せば、1%の金利で毎年120万円の利子収入が入る。同じ金額をアパートに投資すれば、やはり同じだけの家賃収入が入るのだ。

もちろん、この計算では税金も不動産価格の変化も維持費も計算に入れていないので、現実の収益はもっと複雑な計算になるだろう。ただ、重要なポイントは、1%という低い金利だと、その利回りで回る不動産の価格は相当に高いものになるということだ。

さて、金利2%のケースで同様の計算をするとどうなるか。先ほどの半分の6千万円が採算ラインであることが分かるだろう。6千万円を債券に投資すれば、2%の金利で毎年120万円収入が入る。これとアパートの投資が同等の利回りをあげるためには、アパートの価格は6千万円という計
算になる。

数字が続いて申し訳なかったが、言いたいことは明確だ。金利が倍になれば、不動産価格が半分になってもおかしくないということだ。

さらに重要なことは、通常では金利が短期間に倍になるということは考えにくいが、元の金利が非常に低いと倍になることは十分にありうるということだ。3%の金利が6%になるのは難しそうだが、1%の金利が2%になることはもっと簡単に起こりそうだ。

世界的に不動産価格や株価が非常に高い水準であるというのは、世界的に超低金利が続いたということと無縁ではない。その超低金利が修正されるとしたら、不動産や株の価格への影響は非常に大きいだろう。

誤解がないようにしたいが、バブルが弾(はじ)けるということではない。もし今の状況がバブルであれば、価格の下落はもっと大きくなるかもしれない。

欧米と違って、日本ですぐに金利が上がるということではないかもしれない。ただ、超低金利が不動産価格を異常に押し上げていることは気になる。

低金利で資金調達ができることが、高い価格の不動産への投資を促進させているからだ。これはプロの投資家も、相続対策で不動産投資する個人でも同じだ。

コメント


認証コード8538

コメントは管理者の承認後に表示されます。