「GOLD」

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地金はどこへ消えた?「COMEXもNYMEXも金現物を放出している」

スイス金精錬業大手幹部の証言

このインタビューの語り部はスイスの金精錬業大手の幹部。世界各国の金精錬企業の資格審査をする立場でもある権威ある精錬業者。名前は明かされていませんが、経歴は判明しています。

以下、重要なポイントをご紹介しましょう。

この人物の経歴

1978年に大学の学費稼ぎにクレディスイス銀行の貴金属部門に入社(1978年に18歳と仮定すると1960年生まれの55歳?)。1985年にスイスUBS銀行に入社し2001年まで勤務。その後、金融業よりも貴金属の現物を扱うビジネスが重要であると感じ、金精錬企業に転職した。ここで貴金属取引、資金貸し付け、ヘッジ等の業務経験を積んだ。

ここ30年で初めて見たゴールド不足

金精錬業で働くことで世界各地の取引先や人脈等から毎日得られる情報は、一般的な新聞情報ではなく、市場からの非常に正確な情報と言える。
2013年に起きたゴールド不足はここ30年間で初めて見た光景だったと以前コメントした事があるが、2015年の現在も同じ状況であり、金の現物市場には流動性がなく供給はタイトになっている。

現在の金先物市場での直物価格は、金現物市場での供給不足とはまったく関係がない。金先物市場では、紙証文のペーパーゴールドが大量に出回っているからだ。これらの金融派生商品はあまりにも大量なので、先物市場の価格を見るだけでは、市場がどちらの方向に向かうのか分からない状況だ。

Gold先物(COMEX) 月足(SBI証券提供)

このペーパーゴールドの紙証文取引をする投資家たちは全員、現物の地金には関心がない。手仕舞いはいつも現金決済のみ。それゆえ金先物市場での直物相場は、結局のところベンチマーク用でしかなく、この金融派生商品が現物の地金に切り替わることはないのだ。

皆が地金を欲しがったら「劇的に危険な状態に」

しかし、私個人としては、これは大変危険だと見えるのだ。もし皆が「さあ今から、現金決済ではなく地金を引き出そう」と決心すれば、その時には間違いなく現物地金はなくなるからだ。

現在の現金決済による手仕舞いが永遠に続くのか?それともいつの日か現物引き出しになるのか?それは市場参加者の行動如何だ。いまの債務危機はここ何十年間で最悪のものであり、現在の金価格は、現実の現物市場とは何の関係もない低価格と言える。

市場参加者が現金決済で満足するのであれば、この状態は永遠に続くだろう。金価格は単なるベンチマークの数字で、需給関係には無関係のまま。しかし現物引き出しを好むようになるならば、それは劇的に危険な状態となるだろう。

西側から東側へ一方通行で流れる金現物 / とくに重要な証言

ゴールドの現物地金の流れを語るのは簡単で、西側から東側へのほぼ一方通行のみと言える。昨年だけは少しドイツで需要が伸びたが、それを除けば、すべてアジアへと流れている。主に中国へ、インドにも、そして少しだが中東にも流れている。

当社のビジネスで見れば、9割が東へ、残る1割が欧米市場へ流れている。再度言えば現在は投資家はまだまだ金融市場を信用し、安心している。だから金価格は安いのだろう。

公式発表よりも多くの金準備を保有する中国

中国の統計データはどうにも霧に包まれており信じられない。中国は金生産で世界一であり、海外からの輸入実績でも世界一だ。しかしそのゴールドが一体どこに行っているのかがよく見えてこないのだ。

中国人民銀行の金準備に関しては、私個人としては、公表保有量よりも実際はもっと保有していると想像している。

中国の新規格である99.99%純度の1キロ地金はすでに国際的な基準にもなっている。世界各国の中央銀行が保有している金地金は99.95%の400オンスのものだ。金ETF保有の金地金もこの400オンス地金だ。

しかしこれは宝飾品需要には大きすぎる。そこで中国の1kg地金需要に合せて、99.99%の1キロ地金に再精錬するのが現在の我々の仕事だ。

とくに重要な証言

我々金精錬業者のところに、いったいどこからゴールドがやって来るかと言えば、まずはロンドンからだ。金ETFの金地金が出てきている。

さらにCOMEX、NYMEXからも出てきている。そして当然、世界の金鉱山からも新産金として出てくる。

他にリサイクル回収もあるが、これは価格が安いと出てこないものだ。金価格が1900ドルの時は古い金宝飾品が豊富にあったが、1150ドルとなるとリサイクル回収は出てこない。現在はリサイクル回収からの供給はもうない。

スクラップから回収したゴールドは今のところ非常に少ない量である。金鉱山からの新産金は、過去の探査開発、拡張計画がほとんど消えたので、減る方向にあるのは間違いない。現在までは毎年1.5%から2.5%程度は生産量が増えてきたかもしれないが、数年先には生産量が減ると思う。

数年後に金価格が上昇しても、すぐに増産して新産金量が増えるとは思えない。と言うのは巨額の投資費用が必要になるからだ。小さな鉱山でも何十億円規模だからだ。

金価格が高値になり安定したと感じるようにならない限り、投資家は資金を金鉱山向けに提供する気持ちにはならないものだ。また、探査開発するような魅力的な場所は地政学的に問題があるところが多いのも問題なのだ。

ということはこの先、金価格が上がり、現物需要が増加した場合、供給が間に合わない状態になるだろう。今後、スクラップが十分に出てくるかどうかはまったく分からない。

そのため私個人としては金に強気だし、金は供給不足になる可能性が大きく、その結果としての価格に対する衝撃は大きいものになるだろう。だからこそペーパーゴールドではなく現物が必要となるのだ。

もしゴールドと名前の付くものを購入するのであれば注意が必要である。「現金による清算」というような文言がある場合は止めたほうがよい。
古臭いようでも、貴金属に関しては古臭いほうがよく、現物で持つべきなのだ。今後、近いうちに市場は非常に興味深い状況になると私は思っている。

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