「次世代の木質建材」

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「10階建ての木のビル」だって建てられる
木製なのに、引っ張り強度がコンクリートの5倍のCLT

CLT(直交集成板)は、細長い木の板を並べた層を、板の繊維方向が直角に交わるように、互い違いに何層も重ねたもの。ビルを建てられるほどの強度を持つ集成材

轟音を響かせながら木材加工機が休みなく動き、目の前で、長さ12m、幅3m、厚さ30cmの巨大な集成材が次々にできあがっていく──。岡山空港から山間の道を進むこと1時間、中国山地に位置する岡山県真庭市の集成材メーカー、銘建工業の工場が姿を現す。ここで量産しているのが、新たな木質建材として世界的に注目されているCLT(直交集成板)だ。

CLTとは、細長い木の板を並べた層を、繊維が直角に交わるように互い違いに何層も重ねて圧着した集成材。従来の集成材よりもはるかに丈夫で、重量当たりの引っ張り強度はコンクリートの5倍に達する。鉄筋コンクリートの代わりに壁や床といった建物を支える「構造材」として使えるため、「木のビル」を建てることができる。1990年代から欧州で普及し始め、最近ではCLTを使った10階建て程度のオフィスビルや集合住宅が建設されている。

CLTは、製造時に多くのエネルギーを使い大量のCO2(二酸化炭素)を排出する鉄やコンクリートに比べて環境負荷が少なく、森林資源の活用にもつながる。数年前から日本でもCLTの利用が徐々に始まり、環境や社会に配慮した「エシカル(倫理的)消費」の流れも受けて注目されるようになった。

ビルやホテルに採用広がる5階建てのCLTビル

この新しい市場で先頭を走るのが、銘建工業だ。23年に製材所として創業した同社は、70年に当時はまだ目新しかった集成材の製造にいち早く参入。

以来培ってきた木材を素早く正確に加工する技術の粋を集め、2016年に総工費36億円で日本初のCLT専用工場を完成させ、量産を開始した。CLTを製造する企業は国内に数社あるが、年産3万立方メートルという生産能力は群を抜く。

昨年7月に完成した奈良市の障害者福祉施設「ぷろぼの福祉ビル」は5階建てで、2~5階の壁と天井に銘建工業のCLTを採用した。

さらに大規模な建物でも採用が進む。長崎県佐世保市のテーマパーク、ハウステンボスにある“ロボットによる接客”で話題になった「変なホテル」。昨年3月にオープンした第2期棟(2階建て、72室)の壁と床も銘建工業のCLTだ。木の温もりや香りを楽しめる客室が人気を博しているという。

話題のホテルにも採用

昨年3月、ハウステンボスで開業した「変なホテル」第2期棟(2階建て、72室)にもCLTが採用された

銘建工業がCLTに着目したのは、06年のこと。中島浩一郎社長が欧州に出張した際、CLTで作られた数階建てのビルを偶然目にしたのがきっかけだ。「自分たちが長年手掛けてきた集成材に、こんな可能性が秘められていたことに衝撃を受けた。日本でも巨大な市場が開けるという予感がした」

ただし、建材として利用するためには、様々な規制をクリアしなければならない。施主をはじめ、建築士や施工業者などの関係者の理解も不可欠だ。

「あらゆる手段でコストを低減」
 
帰国した中島社長は、同業の製材会社や建設会社などに呼びかけて、CLTの研究や普及活動を担う業界団体、日本CLT協会を設立。国内の森林資源の活用を目指す行政も巻き込んで、耐久性に関する研究や法整備などを後押ししてきた。13年にはCLTの仕様を定めたJAS(日本農林規格)が制定され、昨年は建築基準法のルールも改定された。特別な届け出をせずにCLTを利用できるようになり、ついに本格普及への道が開けたのだ。中島社長は10年越しで地道な普及活動を続け、文字通り「ゼロから市場を立ち上げた」。

中島浩一郎社長は、CLTの普及で日本の林業活性化を目指している

苦労を重ねて事業化にこぎ着けたCLTが今は銘建工業の成長をけん引する。今年、福島県でCLTを使った約170戸の3階建て復興住宅の建設が始まる。この国内最大のCLT建築物にも同社が建材を供給。CLT工場を本格稼働させることで、17年12月期の売上高は前期比15%増の約260億円を見込む。

さらに日本各地の自治体に、地元の木材で作ったCLTを使う公共施設を提案して受注を拡大しようとする。中島社長の視線の先には海外もある。今年から台湾への輸出を開始。「台湾は森林資源が乏しく、木材をほぼ100%輸入している。CLTは付加価値の高い建材として注目されており、現地からの引き合いは非常に強い」(中島社長)。

受注拡大により工場をフル稼働させることで、19年12月期には売上高を300億円の大台に乗せることを目指す。

CLTが成長をけん引する

あらゆる手段でコストを低減

もっとも事業拡大に向けた課題もある。CLTのコスト競争力を高めることだ。量産化が始まったばかりのCLTは、鉄筋コンクリートと比べればまだ割高。そこで銘建工業は、工場で生産したCLTを、建物の設計図面に沿ってあらかじめ加工する。CLTを切断・加工し、窓枠やネジ穴などを作っておく。建設現場ではそれらのパーツを金具で接合して一気に組み上げられる。CLTを“最終製品”にまで仕上げることで工期を短縮し、総工費を圧縮することで、コスト面の不利を補う戦略だ。

さらに工場の自動化で生産性を改善するのと同時に、原料の木材を使い尽くすことで、CLTの価格を引き下げる。製材で発生したおがくずを使うバイオマス発電施設を建設して工場の電力を賄い、売電もしている。おがくずは押し固めて、ボイラー燃料の「木質ペレット」としても販売。今後はペット用品の“猫の砂”など利益率の高い商品にも用途を広げる。

海外の木材に比べて価格が高い国産材の利用を広げるため、あの手この手で知恵を絞る。「CLTで日本の森を復活させる」という目標に向けて、中島社長は新市場の開拓を急ぐ。

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