「成長するインド」

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豪腕モディ政権が、目覚ましい経済成長をもたらす

インド経済を語るとき、進出企業が必ずこぼすのはインフラ基盤の貧しさだ。

インフラの拡充は歴代政権にとっても最大の課題である。でこぼこの道を大量のトラックが人ごみの中を通っている。実に危なっかしい。

鉄道も英国の植民地時代からさほど進化しておらず、単線でスピードも時速40~50キロが限度と輸送能力は著しく低い。そこを年間70億人の利用客が押し寄せるので天蓋やドアにあふれた人がしがみつく映像が流される。

2014年5月に発足したモディ政権にとってもMake Indiaと製造業の振興を掲げる以上、財政資金をインフラ投資に重点配分する必要があった。アッサム州北東部の河川にインド最長の橋をかけ、ムンバイを始発駅とする全長500㎞に達するインド初の高速鉄道も敷設にとりかかる。モディ改革が徐々に動いてきたといえよう。

一方で、モディ政権は昨年11月に突如として500ルピー、1000ルピーという流通高の7割を占める高額紙幣の流通を停止した。この荒わざを通じて、現金形態の保有が圧倒的な金持ちの脱税資金や役人の汚職資金等の撲滅に効果を発揮した。

切り替えに伴う新札の準備もまともにできていない中で強行するという日本では考えられない暴挙ではあった。しかし、インドの大衆は自分たちの不便よりも、脱税・汚職資金があぶりだされる方に喝采をあげた。

この7月には長年の懸案であった財サービス税(GST)の導入も実施された。インドでは中央政府、地方政府がバラバラに物品税、付加価値税を導入していたのを一本化した画期的な税制改革である。

しかし、税率が標準税率を12、18%としたうえ、その他税率に0%、5%、28%、高級品対象のさらに高額税率(大型乗用車43%など)と6本ある複雑な税制となってしまった。

さらに商店などの納税者はパソコンを導入してIT申告が課されているが、全く準備は整っていないようだ。高額紙幣の切り替えと同じく見切り発車であるが、悠久の時の流れの中で定着していきそうだ。

さらにモディ―政権は今年5月に銀行法を改正して不良資産処理にも切り込む姿勢を見せている。元々、この問題解決に熱心であったラジャン準備銀行(中央銀行)総裁を解任せざるを得なかったほど、政治勢力からの抵抗が強い問題であるが、徐々に適正処理に向かっている。

インド準備銀行が乗り出して電力、造船、繊維産業等における不良債権を査定したうえ、大口債権12社について破産法に基づく手続き開始を命じた。

モディ首相が掲げた製造業の拡充を目指すMake In Indiaもサムスン、シャオミなどの電子部品、携帯電話メーカーがインドでの生産を拡大している。インドにおけるスマートフォーンの急速な伸びと中国市場の労働コスト上昇が背景だ。

インドはITのプログラム開発などの水準の高さで知られている一方で、雇用吸収力が圧倒的に大きい製造業の立ち遅れが指摘されていた。これを一挙に挽回して生産・雇用を伸ばすのがモディの経済政策の要であった。

モディ政権が標榜してきた「構造改革」の動きはこのように、インフラ投資の拡大、脱税・腐敗の防止、GSTの導入、不良債権の処理など各分野で漸く具体化してきている。このため、16年度(16/4~17/3月)の実質成長率は7.1%と6%台の実質成長に止まる中国を抜いて世界ナンバーワンの高成長を達成している。IMF、世銀などの経済予測を見ても中国を抜く成長を続ける見通しである。

こうした中、インド株は大幅な買い越しが続いており、株価も既往最高を更新し続けている。わが国のインド株式投信も好調を続けている。

金融面でさらに景気刺激的な要素はかつて高騰をつづけてきた物価の安定である。6月の消費者物価は前年比1.5%と中銀のインフレ目標(2~6%)を下回っている。中銀は8月2日に政策金利を0.25%引き下げ6%としたが、まだまだ下げ余地は十分にある。

内政面では与党インド人民党(BJP)によるヒンドゥ至上主義の拡大、外交面では「一帯一路」構想でパキスタンとの経済回廊建設を目指す中国との緊張激化など懸念材料も事欠かない。

しかし、2050年には中国を抜く総人口に達するという人口ボーナスもあるだけに、インドの経済成長はインフラ投資、構造改革などに今後も取り組んでいけば、中長期的にも目覚ましいものがあるのではないかと思われる。

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