「国益」

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安倍総理続投が日本の国益、辞めれば習近平が大喜びする理由

安倍内閣の支持率が急落している。毎日新聞が行った調査によると、支持率はなんと26%。これらの結果を受け、「安倍内閣はもうダメだ」「危険水域に入った」といった声があふれている。しかし筆者は、安倍総理続投が日本の国益であると考えている。

すべてに優先すべき安全保障分野で
安倍総理は成果を出してきた

森友・加計学園問題や、相次ぐ閣僚、自民党議員の失態で支持率が急低下した安倍総理。しかし、外交面での戦略の素晴らしさは、歴代の総理大臣の中でもピカイチであることを忘れてはならない 

雲行きが怪しくなってきた安倍内閣。理由は、詳述するまでもなく「森友、加計問題」「稲田問題」などだ。

産経新聞・FNNが7月22日、23日に実施した世論調査によると、内閣支持率は34.7%。5月の56.1%から21.4ポイントも減少した。

毎日新聞が同日行った調査によると、支持率はなんと26%。これらの結果を受け、「安倍内閣はもうダメだ」「危険水域に入った」といった声があふれている。

しかし、筆者はバッシングされることを覚悟して言おう。「安倍総理続投が、日本の国益である」と。

はじめに断っておくが、筆者は「安倍信者」ではない。現政権の政策に同意できないことは、たくさんある。たとえば、「消費税引き上げ」「3K外国人労働者大量受け入れ」「残業代ゼロ法案」など。

では、なぜ「安倍続投が国益」と思うのか?理由は単純で、「安倍総理が、ちゃんと国を守っている」からだ。

つまり、「安全保障分野」をうまくこなしている。これまでも再三述べてきたように、「安全保障」は「国民の命を守る分野」で、「経済」(金儲け)よりも遥かに大事だ。国にとって「最重要分野」といえる。

日本の「安全保障」といえば、真っ先に思い浮かぶのは自衛隊だろう。外国の侵略を防ぐのは、彼らの役割だ。しかし、その前段階で、そもそも戦争が起こらないように、外国との関係を調整する不断の努力が続けられていることを忘れてはならない。それをするのが、「外交」である。

民主党政権の悲惨な外交、日本は国際的に孤立した

安倍外交について話す前に、「それ以前はどうだったのか」について触れておこう。安倍自民党政権の前、民主党の総理が3人続いた。すなわち、鳩山、菅、野田だ。

2008年9月、リーマンショックが勃発し、世界は「100年に1度の大不況」に突入していく。この危機が「米国発」だったことから、「米国一極世界は崩壊した」と言われた。

一方、中国は浮上した。この国のGDP成長率は、世界経済が最悪だった09年ですら9.2%をマーク。その後も、10年10.61%、11年9.5%と成長を続け、大不況の影響をまったく受けていないように見えた。

世界におけるパワーバランスの変化(=米国は沈み、中国が浮上)は、日本の政治にも大きな影響を与えた。具体的にいうと、親米政党の自民党が沈み、親中政党の民主党が浮上したのだ。

09年9月、鳩山内閣が誕生する。鳩山氏は、普天間飛行場の移転先について、「最低でも県外」とし、日米関係を悪化させた。その一方で、露骨に中国への接近を図った。小沢一郎幹事長(当時)は09年12月、北京で「私は、人民解放軍の野戦軍司令官だ」と宣言している。

つまり、小鳩外交の本質は、「米国との関係を破壊し、中国に乗り換えて従属すること」だった(本人たちは「日本の真の自立を目指す」などと言っているが)。

幸い、鳩山内閣は10年6月で終わった。

しかし、日本国の試練は続く。10年9月、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。どう見ても中国が悪いのだが、この国は「逆ギレ」し、日本に過酷な制裁を課した。12年9月、野田内閣は尖閣諸島を国有化。筆者は、もちろん「国有化」を支持するが、結果として日中関係は「戦後最悪」になってしまった。

そればかりではない。ロシアのメドベージェフ首相は12年7月、北方領土を訪問し、日本国民を激怒させた。さらに韓国の李大統領(当時)は同年8月、竹島に上陸。「日王が韓国に来たければ謝罪せよ!」と天皇を侮辱し、日韓関係は、これも「戦後最悪」になってしまう。

安倍内閣の前に3人続いた「民主党内閣」の外交を総括すると、以下のような内容になる。

「民主党政権は極めて短期間で、米国、中国、ロシア、韓国との関係をボロボロにした。その結果、日本は国際的に孤立した」

中国の罠にはまった「右翼」の安倍総理

野田内閣による「尖閣国有化」に衝撃を受けた中国は、「日本と戦うこと」を決意する。

ここで、この連載でも過去、再三触れた話を今いちど確認しておこう。12年11月、中国の代表団がモスクワを訪れた。そこで、ロシアと韓国に「反日統一共同戦線」をつくることを提案した。この戦略の骨子は、以下のとおりである。
(1)中国、ロシア、韓国で、「反日統一共同戦線」をつくること。
(2)中ロ韓は一体化して、「日本の領土要求」を断念させる。
(3)日本に断念させるべき領土は、「北方4島」「竹島」、そして「沖縄」である(中国の代表団は「日本に沖縄の領有権はない」と断言している)。
(4)「反日統一共同戦線」には、米国も引き入れなければならない。
はじめて筆者の記事を読まれた方は、「トンデモ系」「陰謀論」と思われたことだろう。そう思われた方は、いますぐ証拠(詳細はこちら)を、熟読してほしい。

中ロ韓は、「領土問題」で結びついている。しかし、日本と領土問題のない米国を、どうやって「反日戦線」に引き入れるというのか?

それは、「プロパガンダ」によってである。当時、中国と韓国は、「日本は右傾化している」「再び軍国主義化している」「歴史修正主義が強まっている」と大々的にプロパガンダしはじめた。韓国は「慰安婦問題」を蒸し返すことで、「反日世論形成」に大きな役割を果たした。

さて、12年12月、総理に返り咲いた安倍氏は、最初から安全保障政策で優れた手腕を発揮していたわけではなかった、むしろ当初は、「日本の右傾化」プロパガンダを繰り返していた中国にとって、「大変都合のいいキャラ」だった。安倍総理は過去、「東京裁判は勝者の断罪」「侵略の定義は定まっていない」などと発言している。つまり、東京裁判史観をつくった米国から見ると、はっきりと「歴史修正主義者」なのだ。

そのため、リベラルなオバマ大統領(当時)は当初、「右翼」の安倍氏を嫌い、習近平を重視した。

オバマを感動させた、安倍総理の「希望の演説」

そして、安倍総理に大きな試練が訪れる。そう、13年12月の「靖国参拝」だ。これについて多くの人は「反対したのは、中国、韓国だけだった」と信じているだろう。

しかし、13年12月の参拝については、それは事実とはいえない。実際は中韓に加え、米国、イギリス、ドイツ、EU、ロシア、オーストラリア、シンガポール、そして親日の台湾までもが「靖国参拝」を非難した。

ここで詳細には触れないが、「ウソだ」と思う方は、本連載バックナンバー「“恐怖の大王”プーチンが日米関係を変えた 日米vs中ロの新パラダイムをどう読むべきか」をご一読いただきたい。

安倍総理は世界的に孤立した。しかし総理は、プーチンに救われる。具体的にいうと、ロシアが14年3月、クリミアを併合したことで結果的に助かったのだ。

オバマは、日本を「対ロシア制裁」に引き入れざるを得なくなった。それで、「靖国のことは忘れよう」となったのだ。しかし、安倍総理は単にラッキーに乗っかっただけではない。「靖国バッシング」から、しっかり教訓を得たようで以後、欧米から警戒されるような言動は減っていった。

そして、もう1つ、大きな転機が訪れる。それが、「AIIB事件」だ。15年3月、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国などが、「中国主導」の「AIIB」に参加することを決めた。

ポイントは、これら親米国家群が、「米国の制止を無視して」AIIBへの参加を決めたこと。これは、「米国の没落」を象徴する歴史的大事件であり、オバマの衝撃は大きかった。しかし、安倍日本は、AIIBに参加しなかった。そして、同年4月29日、安倍総理は訪米。上下両院合同会議で、いわゆる「希望の同盟演説」を行う。

<米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。
米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。
希望の同盟──。
一緒でなら、きっとできます。>

オバマは、この演説に感動し、「歴史的訪問に感謝する。日米関係がこれほど強固だったことはなかった」とツイートした。AIIB事件で、ほとんどの「親米国家」に裏切られたオバマにとって、安倍総理の訪米と演説は、「救い」だっただろう。彼は以後、「南シナ海埋め立て」を問題視しはじめ、中国との対決姿勢を強めていく。

ロシア、韓国とも関係を改善して、中国の戦略を無力化させた

安倍総理の「希望の同盟演説」について、「属国演説だ」と批判する人もいた。しかし、それは「皮相的な批判」である。

先に述べたように、「反日統一共同戦線」構築を目指す中国の戦略は、「米国、ロシア、韓国と組んで日本を叩きつぶすこと」。そうであるなら、日本の戦略は「米国、ロシア、韓国との関係を強化し、中国の戦略を無力化させること」となるだろう。安倍総理は、まさにそれをやっているのだ。

16年12月、プーチンが訪日し、日ロ関係は劇的に改善された。「北方領土問題で進展なし」と批判する人も多いが、この訪問の「戦略的意義」はなんだろうか?

「尖閣有事」が起こるとすれば、以下の4つのパターンがあり得る。

(1)「日米vs中国」。これは、日米の必勝パターンだ。だから、日本は、常にこのパターンになるよう、日米関係を強固に維持する必要がある。
(2)「日本vs中国」。このパターンでは、日本が勝つのは難しいだろう。通常兵器での戦いには勝てても、向こうは「核で恫喝する」ことができる。
(3)「日米vs中国・ロシア」。このパターンでは五分五分。どちらが勝つかわからない。
(4)「日本vs中国・ロシア」。これは、日本の「必敗パターン」である。
日本は「尖閣有事」の際、ロシアが中国側に立って戦わないよう、ロシアとの関係を強化しておく必要があるのだ。

韓国との「慰安婦合意」(15年12月)についても、総理を批判する人は多い。しかし「中国の戦略を無力化する」ために、「慰安婦合意」は意味があった(大方の予想どおり、文在寅新大統領はゴネているが)。

いずれにしても安倍氏は、日本の総理としては珍しく、「大戦略」を持っている。ちなみに、「世界最高の戦略家」と呼ばれるルトワック氏は、最新刊「戦争にチャンスを与えよ」(文春新書)の中で、安倍氏について、「まれに見る戦略家」と高く評価している(63p)。

「自立外交」を実践できた安倍総理は希有な存在

安倍総理が辞任すれば大喜びするのは習近平

「自立」とは何だろうか?「7つの習慣」のコヴィー博士によると、「自分で決断すること」だという。今まで、日本の総理は「自分」で決断せず、「他人」(米国)の決断に従っていた。だから「属国」だったのだ。

ところが、これまで見てきたように、安倍総理は「自分」で決断し、なおかつ米国と良い関係を維持している。これは、日本が米国への「依存状態」から脱却しつつある証拠だ。

これまでの安倍外交の結果は、どうなのだろうか?まとめてみよう。
(1)中国は、米国、ロシア、韓国と共に「反日統一共同戦線」をつくることで、日本をつぶそうとしている。しかし、安倍総理は、米国、ロシア、韓国との関係を強化することで、中国の戦略を無力化することに成功している。
(2)さらに、日本は、インド、欧州、東南アジア諸国、オーストラリアなどとも良好な関係を維持。国際世論を味方にすることで、中国が侵略に動けない状態を作り出している。
(3)そして、安倍総理は、米国の意向に逆らってロシアとの関係改善に取り組み、なおも米国との関係を悪化させないという奇跡的な「自立外交」を展開している。

いかがだろうか?「森友」「加計」「稲田」問題は、確かに重要である。しかし、今、総理が辞任すれば、喜ぶのは誰なのか?もちろん、「反日統一共同戦線戦略」を無力化され、追いつめられている習近平だろう。

だから、「安倍総理続投が日本の国益」なのだ。

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